ネットオークションやフリマサイトに出品される、漫画家の原画やサイン色紙の贋作が増加している。贋作といえば、「開運!なんでも鑑定団」に登場するような焼き物、掛け軸などの骨董品に多いイメージが強い。しかし、実は漫画家の原画やサイン色紙の贋作は以前から見られ、関係者も警戒を呼び掛けているが、一向になくなる気配はない。
【画像】萩尾望都、浦沢直樹、諫山創、村田雄介ら人気作家がチャリティ企画で描き下ろしたサイン色紙
それは、一目見ただけで贋作とわかるものもあれば、素人では真贋の判定が難しいものまである。SNS上でも最近、ある漫画の原画をオークションで落札したという人が画像を載せていたが、明らかな贋作であった。他にも、YouTube上ではコレクターが本物だと思って買い求めたであろうサイン色紙や原画、セル画の贋作を自慢している例がいくつもある。
■贋作はなぜ作られるのか
なぜ、こうした贋作が作られるのだろうか。それは日本の漫画やアニメの人気が世界中で高まっているためだ。特に、2020年のコロナ騒動はコレクターが急増した出来事であった。世界的な巣ごもり需要が生まれ、動画配信サイトの加入者が増加し、日本のアニメが世界中に広まった。また、株高によって投資家の間では巨万の富を得るものが続出した。
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このように、純粋なアニメファンの増加と、資産家の投機熱の高まりが人気に拍車をかけたといえる。ロレックスなどの高級腕時計やポケモンカード、現代アートなどが現物資産として注目され、市場価格が高騰したのは記憶に新しい。漫画家の原画やサイン色紙は一部の熱心な愛好家の間では人気があったが、投資の一環で購入される例が増えたのは間違いない。
また、漫画家の原画展などが頻繁に開催されるようになり、原画や色紙に美術的価値を見出す人が増えたこと。生成AIの登場やデジタルの進化で、アナログの魅力が注目されるようになったこと。外国人コレクターが増加したこと。これらの要因も人気につながっている。日本人にとって漫画家のサインはあくまでもサインという認識だが、外国人は「絵が入った美術品」と考えているようだ。
なぜ贋作を掴んでしまうのだろうか。贋作の多くはネットオークションやフリマサイトで購入されたものである。購入者は、まさか原画やサイン色紙にまで贋作があるなどと想像していなかった例が多いはずだ。そのうえ、アナログ原稿自体を見たことがない人は、騙されやすいといえる。
では、贋作を掴まないためにはどうすればいいのか。そもそも、疑わしいと思うものは購入しないようにすべきだが、ネットオークションやフリマサイトで個人から買うことは上級編と考えてほしい。初心者こそ、信頼ある業者から買うことを徹底すべきだろう。これは、ブランド品やマニアックな品物など全般に言えることである。
筆者は贋作を掴まされた人を何人か取材してきたが、全員に共通していたのが、自分の審美眼や鑑定眼を過信していた点である。また、初心者よりもベテランほど気が緩んでしまうのか、贋作に引っかかりやすい傾向にある。安いからといって軽い気持ちで手を出すのは危険であると思ってほしい。そして、掘り出し物には滅多に出会えないと心得るべきだろう。
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(文=山内貴範)
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