高知県香南市の住吉漁港にある「震洋隊殉国慰霊塔」と、慰霊祭を主催する横田栄介さん=6月26日、高知県香南市 玉音放送翌日の1945年8月16日、高知県夜須町(現在の香南市)にあった旧海軍手結基地で特攻舟艇「震洋」の爆発事故が起き、特攻隊員111人が亡くなった。隊員は高知沖で敵艦が出現したとして出撃準備中だった。「他者のために生きた隊員の姿から命の大切さを考えてほしい」。住民らは慰霊祭を長年続けている。
旧夜須町の町史などによると、手結基地は45年4月、旧夜須町の住吉漁港周辺に設置され、旧海軍第128震洋隊の160人が所属した。「震洋」は敵艦への体当たり戦法を想定し、船首に250キロ爆弾を搭載。全長約6.5メートルのベニヤ板製舟艇だった。手結には、2人乗りのタイプが25隻配備されていた。
事故は8月16日午後6時すぎに発生。高知沖で敵艦隊を発見したとの通報が入り、出撃準備が命じられた。終戦は発表されていたが、大本営からの停戦命令はまだ出ていなかったためだ。
隊員が震洋を格納壕(ごう)から出して海上に並べる作業にかかる中、1隻が突然爆発。次々と誘爆し、計23隻が吹き飛んだ。爆風で周囲の民家20戸以上が被害を受け、亡くなった111人の遺体の多くはばらばらで、身元が分からないほど損傷が激しかった。住民は翌17日、遺体を集め、近くの寺で永代供養したという。
111人は20歳前後で高知県外出身だった。多くは妻子がいなかったため、住民が親族の代わりに慰霊祭を行ってきた。慰霊祭を主催する香南市の横田栄介さん(71)は「若い人には他人のために生きた隊員の姿を伝えたい。大切な命を何のために使うのか考えてもらいたい」と語り、他者を思いやる心が戦争を防ぐことにつながると訴えている。