ジャクソンホール会議に出席した植田和男日銀総裁(右から2人目)と米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長(右端)ら=22日、米ワイオミング州ジャクソンホール 【ジャクソンホール(米ワイオミング州)時事】米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は22日、西部ワイオミング州で開催している年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。雇用の下振れリスクが増大しているとした上で「政策スタンスの調整が必要になる可能性がある」と語り、景気を下支えするために利下げの検討を進める考えを示唆した。トランプ政権の高関税政策に強い警戒感も示した。
FRBは来月16、17日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、今後発表される経済指標を考慮し、金融緩和再開の是非を判断する見通しだ。利下げが決まれば、昨年12月以来6会合ぶりとなる。
FRBに利下げを再三求めてきたトランプ大統領はこの日、記者団に対し、パウエル氏の発言について「遅過ぎる」と改めて批判した。ただ、ニューヨーク市場では想定よりも利下げに前向きな姿勢を示したと受け止められ、ダウ平均株価の終値が昨年12月以来8カ月半ぶりに史上最高値を更新した。
パウエル氏は、物価安定と雇用最大化というFRBの二つの責務について「インフレが上振れ、雇用は下振れするリスクがあり、困難な状況だ」と指摘。今月発表された雇用統計で5、6月の非農業部門就業者数が大幅に下方修正されたことを念頭に「雇用の下振れリスクが高まっている」として、雇用指標を一段と注視していく姿勢を見せた。
「トランプ関税」によるインフレ再燃も懸念されている。パウエル氏は関税による物価への影響は「今や明らかだ」と断言。関税引き上げの影響は一時的とみられるものの、「持続的なインフレの問題となる可能性もあり、それは管理すべきリスクだ」と付け加えた。
利下げは景気を刺激するが、物価上昇に拍車が掛かる恐れもあるため、パウエル氏は「慎重に進める」と説明した。「金融政策はあらかじめ決められたコースに沿うものではない」とも述べ、今後得られるデータや経済見通しの分析に基づき、利下げを注意深く判断していく従来の認識を示した。

ジャクソンホール会議に出席した米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長(左端)と植田和男日銀総裁(左から2人目)ら=22日、米ワイオミング州ジャクソンホール