限定公開( 1 )
原作・芥見下々、作画・岩崎優次による新連載(短期集中連載)『呪術廻戦≡(モジュロ)』が、「週刊少年ジャンプ」(集英社)41号(2025年9月22日号)にてスタートした。
新連載開始にあたり、芥見下々が同誌に寄せたメッセージによると、『呪術廻戦』の連載中にも、別の漫画家(作画家)によるスピンオフの企画はもちかけられていたのだが、当初は断っていたのだという。しかし、そのオファーがきっかけとなり、「本編のここを広げたら、ここの設定を突き詰めたら、時代設定を変えたら、いっそパラレルならと様々な企画を考える」ようにもなった。その上で、「発想段階では一番突拍子のなかった『モジュロ』が連載会議を経て実現に至」ったのだそうだ(余談だが、芥見ほどのヒットメーカーの発案でさえ、「即決」ではなく、連載会議でいったん篩にかけられる「週刊少年ジャンプ」の編集方針を、私は素晴らしいと思う)。
※以下、『呪術廻戦≡(モジュロ)』第1話のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)
■呪術師の兄妹と異星人のトリオが結成!?
|
|
『呪術廻戦≡(モジュロ)』の舞台は、2086年の京都。「シムリア星人」を名乗る地球外生命体(約5万人)が、地球に難民として保護を要求してきていたのだが、アメリカおよび日本の政府(ある理由から、日本はこの手の「外交」事案を一任されている)はまだその事実を隠している。
主人公は、乙骨憂花(16)と、その兄の真剣(17)。伝説の呪術師・乙骨憂太と禪院真希の孫たちであり、いまは、呪術高専の生徒として、“実戦”の現場にも投入されている。
そんな2人は、ある時、呪術が絡んでいると思われる子供たちの誘拐事件の捜査を命じられる。さらに、「外国人」(国籍は不明)の呪術師、「マル」こと、マルル・ヴァル・ヴル・イェルヴリ(彼もまた、この物語の主人公の1人である)とも組むようにいわれるのだが、実はこのマル、正体は、地球人と共生できるかどうかを調べるために潜入しているシムリア星人であった(どうやらシムリア星人も、呪術師たちと近い能力を持っているらしい)。
■SF漫画でついていい“大きなウソ”は1つだけ
第1話では、憂花と真剣のそれぞれの葛藤と努力、そして目標が描かれ、最後に、そこまで力を隠していたマルが、呪詛師(悪の呪術師)相手に異能を発動したところで幕を閉じる。“次”が気になる、少年漫画の第1話としては、完璧な作り(完璧な引き)だといっていいだろう。
|
|
なお、原作者自ら「(発想した企画の中で)一番突拍子のなかった」といっている通り、この『呪術廻戦≡(モジュロ)』は、いささかトリッキーというか、漫画のセオリーから外れた型破りの面白さを秘めた作品である。
というのも、漫画業界の暗黙のルールとして、SFやファンタジーの物語の中で、「ついていい“大きなウソ”は1つだけ」という“お約束”があるからだ。つまり、本作では、「地球外生命体」と「呪術」という、種類の異なる「大きなウソ」が2つも出てくるわけで、この両者を違和感なく(あるいはバランスよく)1つの作品世界の中で融合させるのは、熟練の漫画家でもなかなか難しいだろう(が、第1話を読んだ限りでは、自然な形で「地球外生命体が存在する世界」と「呪術が存在する世界」が融合しており、その点はさすが芥見下々という他ない)。
■コンタクト物のSFは何を描いているのか
また、「ウソ」といえば、たしかにSF漫画やファンタジー漫画は、一見“ウソのような物語”である場合が少なくないのだが、よくできた作品には、その「ウソ」の中にも、現実世界を映し出す「真実」が隠されているものだ。
では、『呪術廻戦≡(モジュロ)』のような、いわゆる「コンタクト物」のSFには何が隠されているのかといえば、それは、「自分たちとは違う価値観や文化を持った人々がこの世界には存在する」ということの再認識と、「そんな人々とわかり合えるか」という問題提起である。
|
|
『呪術廻戦≡(モジュロ)』が今後、どういう展開を見せていくのかは予測不能だが(それくらい、トリッキーな漫画である)、「分断の時代」などといわれているいま、呪術師の兄妹と異星人のトリオが共に歩んでいこうとする姿は、我々読者に大切な“何か”を教えてくれることだろう。
(文=島田一志)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
“令和最大のQ(謎)”がスクリーンに――小川哲の小説『君のクイズ』、吉野耕平監督で映画化(写真:オリコンニュース)
小林よしのり氏、高市早苗総裁に私見「国民を騙すその手口が卑怯で信用ならない」(写真:日刊スポーツ)9