【オールカマー予想】実績や近走成績を素直に評価 AIは枠次第で面白い存在になりそうな伏兵を指名

0

2025年09月17日 20:30  netkeiba

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

netkeiba

フェアエールング(撮影:山中博喜)
【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

◆8番人気以下の馬が馬券に絡んだ例はしばらくなかった

AIマスターM(以下、M) 先週はローズSが行われ、単勝オッズ2.9倍(1番人気)のカムニャックが優勝を果たしました。

伊吹 まさに“貫録勝ち”といったところですね。五分のスタートを決めて流れに乗り、道中は馬群の外め、先手を主張した各馬のすぐ後ろを追走。アイサンサン(12着)やコンドゥイア(14着)が1000m通過56秒8のペースで引っ張る中、序盤から積極的にレースを進めています。ゴール前の直線入り口で他馬との接触があり、鞍上の川田将雅騎手がバランスを崩しかけたものの、立て直して追われ始めると力強く伸び、残り200m地点を過ぎたところで単独先頭に。すぐ内で粘っていたテレサ(2着)、外からしぶとく迫ったビップデイジー(4着)、後方から最後の最後に伸びてきたセナスタイル(3着)らを寄せ付けず、セーフティリードを保ったまま入線しました。レースの流れや勝負どころで不利があったことを考えると、着差以上に高く評価できる内容。こんな競馬をされてしまったら、他の馬はなす術がありません。

M カムニャックはこれで重賞3連勝。今回は休養明けでしたが、フローラSとオークスを連勝した勢いはまだ失われていないようです。

伊吹 デビュー2戦目のアルテミスSで6着に、3戦目のエルフィンSで4着に敗れてしまったとはいえ、1600m超のレースはデビュー戦を含め4戦4勝。阪神JFや桜花賞を無理に目指すことなく、早めに中長距離路線へと照準を合わせた陣営の判断が功を奏しましたね。もっとも、ハイペースの1800m戦でこれだけ圧倒的なパフォーマンスを見せたわけですから、敗れた2戦も距離だけが敗因だったわけではなさそう。今春以降の成長によって、現3歳世代の牝馬としては頭ひとつ抜けた能力の持ち主となったのでしょう。

M 当然ながら、3歳牝馬三冠の最終関門となる秋華賞でも主役級の扱いを受けることになると思います。

伊吹 桜花賞馬のエンブロイダリー、阪神JFを制しているアルマヴェローチェは、それぞれオークスからの直行で参戦予定。新興勢力の中にも面白そうな馬はいますが、やはりGIウィナー3頭の力関係をどう見るかが最大のポイントになりそうです。もちろん、前哨戦を使ったことがプラスに働けば、カムニャックにとっては大きなアドバンテージ。そのあたりを判断するべく、本番までの調整過程をしっかりチェックしておきましょう。

M 今週の日曜中山メインレースは、下半期の大舞台を見据えた中長距離路線の強豪が集う名物重賞、オールカマー。昨年は単勝オッズ1.5倍(1番人気)のレーベンスティールが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ49.4倍(10番人気)のアウスヴァールが2着に、単勝オッズ59.8倍(12番人気)のリカンカブールが3着に健闘。3連単8万1650円の決着となっています。

伊吹 過去10年のオールカマーにおける3連単の配当は、平均値が5万386円、中央値が2万3020円。昨年は単勝二桁人気の伏兵が上位に食い込んだものの、堅く収まりがちなレースと見ておいた方が良いかもしれません。

M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝7番人気以下だったにもかかわらず連対を果たした馬は1頭だけ。すなわち、昨年のアウスヴァールのみです。

伊吹 なお、単勝7番人気の馬は2015年以降[0-0-3-7](3着内率30.0%)でしたが、単勝8番人気から単勝12番人気の馬は2015年以降[0-1-1-43](3着内率4.4%)、単勝13番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-19](3着内率0.0%)でした。今年は特別登録を行った馬が11頭しかいませんし、極端な低額配当決着となる可能性もあるのではないでしょうか。

M そんなオールカマーでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、フェアエールングです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。超人気薄ということはないと思いますが、上位人気グループの馬とはある程度の差がつきそう。

M フェアエールングは5歳牝馬。年明け初戦の小倉牝馬Sで重賞初制覇を果たしたうえ、2走前の福島牝馬Sで2着に、前走のクイーンSで3着に食い込んでいます。4走前の福島記念でも2着に好走しており、牡馬相手となる点は問題なさそう。狙っている穴党は案外多いかもしれません。

伊吹 ちなみに、過去10年の3着以内馬30頭中9頭は牝馬で、この期間中における総合成績は[5-3-1-12](3着内率42.9%)。ここ2年は上位に食い込めていないものの、もともと牝馬の活躍が目立っていたレースです。Aiエスケープが有力と見ていることを踏まえたうえで、性別以外の部分に関するレースの傾向と、フェアエールングのプロフィールを見比べていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 まずは実績や近走成績を素直に評価したいところ。2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前年以降にJRAのGI・GIIを勝っているか、年明け以降にJRAのレースを勝っている馬でした。

M どちらの条件もクリアしていなかった馬は、ほとんど上位に食い込めていませんね。

伊吹 一応付け加えておくと、“前年以降の、JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験があった馬は2021年以降[2-2-2-5](3着内率54.5%)。格の高いレースを勝ち切ったことがある馬は、相応に高く評価するべきでしょう。

M 先程も触れた通り、フェアエールングは今年の小倉牝馬Sを制している馬。GII初挑戦ではありますが、勢いに乗っている点は強調材料のひとつと言えそうです。

伊吹 あとは臨戦過程も見逃せないファクター。同じく2021年以降の3着以内馬12頭中6頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.2秒以内でした。

M 該当馬の3着内率は42.9%。優秀な水準に達しています。

伊吹 一方、前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.3秒以上、かつ前走との間隔が中7週以上の馬は2021年以降[1-0-1-32](3着内率5.9%)。前走好走馬でない限り、今年8月以降のレースを使っていない馬は過信禁物と見るべきでしょう。

M フェアエールングの前走は8月3日に施行されたクイーンSで、勝ったアルジーヌとのタイム差は0.1秒。臨戦過程に不安はありません。

伊吹 さらに、同じく2021年以降の3着以内馬12頭中7頭は、馬番が1番から3番でした。

M 圧倒的に内枠有利、と。

伊吹 そして、馬番が4〜17番、かつ父にディープインパクト系以外の種牡馬を持つ馬は2021年以降[1-0-0-33](3着内率2.9%)。3着以内となったのは2023年1着のローシャムパークだけです。

M フェアエールングの父は、ディープインパクト系に属していないゴールドシップ。残念ながら、好枠を引けなかった場合はこの条件に引っ掛かってしまいます。

伊吹 逆に言うと、好枠さえ引ければかなり楽しみな存在。もともと私も「枠順次第では◎候補」と考えていました。Aiエスケープも狙っているのであれば心強い限り。妙味あるオッズがつきそうな雰囲気ですし、極端な外枠でさえなければ、素直に中心視して良いのかもしれません。

    ニュース設定