
【写真】内山昂輝&津田健次郎、インタビュー撮りおろしカットが満載!
■津田健次郎、松坂桃李の“生っぽい”掛け合い 内山昂輝は染谷将太と“業界情報交換”
――最初に物語に触れた際の印象を聞かせてください。
内山:これまでにも何度かスポーツを扱った作品に出演してきましたが、こういった「人生とは何か」という哲学的な問いが前面に出るものは、なかなかありませんでした。そういった意味でも“異色”と言っていいだろうし、また主人公2人の幼少期から物語がスタートし、高校生、そして社会人へとなっていくのですが、必ずしも順風満帆ではないという(笑)。そこもまた個性的な作品だと思いました。
津田:本当に独特な作品だと思います。しっかりスポ根しているし、ちゃんとエンタメの要素も押さえてくれているのだけど、各キャラクターの置かれている状況や発言が奥深い。情緒的……というのでしょうか。スッと自分の中に入って来ないのだけど、意図をよく考えてみると、すごく深いことを言っているんですよね。非常に独自性のある作品だという印象を持ちました。
――演じる財津、海棠というキャラクターの印象も伺えますか。
内山:財津は、ずっと陸上界のトップを走っているキャラクター。彼ならではの世界、独特な考え方があって、誰も彼の気持ちはわからない。この『ひゃくえむ。』という物語の雰囲気を作る、独特な立ち位置のキャラクターだったと感じます。まだ若いのに、重厚感があるというか。
津田:確かに。その財津とは別の意味で、海棠は見た目から重厚感があった(笑)。
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津田:海棠は、財津とは違うベクトルの哲学者。ずっと財津の背中を追い続け、1度も抜かせなかった故に到達している領域があって、その考え方が面白いなと思いました。
――内山さんの事前のコメントに「岩井澤健治監督から丁寧に演出していただいた」とありました。具体的にどんなディレクションが入ったのでしょうか?
内山:脚本を読んだ際、「雰囲気のあるキャラクターにしたい」と思いました。セリフがトリッキーで風変わりな人物に捉えられるのですが、その方向性を「人と違う変な人」ではないようにしたかったんです。特殊な立ち位置を維持し続けてきた“王者の風格”をセリフで表現できればいいと思い、アフレコ現場では岩井澤監督からセリフのニュアンス、スピード感を微調整いただいた感じです。
津田:僕も、細かい調整が入ったくらいで、最初に作り上げていったものでスムーズにアフレコすることができました。しかし、先ほど言ったように、見た目に引っ張られないキャラクター作りは意識しなければいけないなと。
内山:言っていることがだいぶ悟っていましたが(笑)。
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――津田さんは松坂さんと、内山さんは染谷さんとアフレコでご一緒できたと伺いました。お2人の声のお芝居の印象、また掛け合ってみていかがでしたか?
内山:僕は声優で染谷さんは俳優だから、みたいな壁はまったくなく。沼野役の榎木淳弥くんと3人で一緒にアフレコしたのですが、良い雰囲気で『ひゃくえむ。』の世界観を表現できたような気がします。
――良い雰囲気を作るきっかけとなった会話などはあったのでしょうか?
内山:空き時間に、お互いの業界状況や業界事情などの情報交換みたいなことをしていましたね(笑)。
――アフレコのレクチャーなども?
内山:いやいや。染谷さんはもう何度もアニメ声優の経験がありますから。レクチャーなどではなく、ただの雑談ばっかりしていました(笑)。
――津田さんはいかがでしょうか?
津田:松坂さんとは本当にフラットな、すごく生っぽいお芝居を掛け合うことができました。松坂さんはとても抑制されたお芝居をされていて、掛け合って楽しかったですね。とはいえ、海棠は話し出すと止まらないので、掛け合いらしい掛け合いはできなかったのですが(笑)。他のシーンのお芝居も聞いていたのですが、とても心地よいものでした。
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――そんなアフレコを経て、映像が完成しました。出来上がった作品を見ての感想もお願いします。
内山:圧倒されました。アニメ表現の良さを活かしたシーンもあれば、ロトスコープ(※実写映像をフレームごとにトレースして、アニメーションを作成する技法)を用いて実写っぽさを狙って作成されたシーンもあります。その見せ方はもちろん、カメラワークも。一度見ただけでは咀嚼しきれない、本当にすごい作品が生まれたと思いました。
エンドロールを見て驚いたのですが、パートごとに作画スタッフさんが分かれていて、きっといろんな手法が導入されていたんでしょうね。それぞれのシーンがどうやって作られているのかなど、メイキングが気になってしまいました。
津田:見せ方などの作画クオリティはもちろん、ストーリー自体もすごく面白かったです。アーティスティックな表現方法の中で、しっかりとエンタメがあり、さらにスポーツ作品らしい感動もある。1つのカラーで括れない面白さを持った作品になっていると思いました。
――走るシーンには、迫力と共に「100m」というたった10秒の一瞬の輝きの儚さも感じられました。それを表現できるのは、本当にすごいと。
津田:100m、たった10秒だからこそ感動が生まれるという部分は、この企画を立ち上げた時点で「絶対に(観客に)感じさせなきゃいけない」とテーマの1つにあったと思います。それを表現するために、実写で一度撮ってからアニメに起こすという。ある種オーソドックスな作り方ですよね。それぞれの走りへのスポットの当て方がドラマ的なのは、ロトスコープ手法で作成されたからこそだったのかなと思います。
内山:アフレコの時も、実写の俳優さんの顔がうつった静止画を見ながら声を当てたりしていました。
――「100mを誰よりも速く走れば、全部解決する」という本作においての名言があります。お2人が「これをすれば全部解決する」と思っている行動はありますか?
内山:部屋の片付けです。
津田:散らかってるの?
内山:そうなんです。汚くはないのですが、物が乱雑に散らかっている状態で。なかなか片付かないんですよね。これを仕舞ってキレイに片付けば、家をもっと有効に使えるのにと思ってはいるのですが……いかんせん片付かない(笑)。今ダイニングテーブルで仕事のことをやっているので、ご飯を食べる時にいちいちパソコンをどかして食べているんですよ。
津田:それは面倒くさいね(笑)。
内山:仕事机を置きたいんです。ちゃんとした椅子も欲しいし、やっぱり部屋を片付けるとすべてが解決する(笑)!
津田:僕はなんだろうなぁ。すべてが解決するわけではないですが、しっかり芝居に集中できたら、雑念が飛ぶような気がします。
内山:芝居をすると忘れられる?
津田:忘れたいから芝居をするんでしょうね。本当は芝居だけやっていられたらいいのですが……そうもいかないので。
内山:忘れたいものが芝居にまつわる悩みだったらどうするんですか?
津田:芝居で悩むこともありますが、やっていると楽しいんですよね。悩みも楽しんで解決できるので、やっぱり芝居がすべてを解決してくれます。
(取材・文:米田果織 写真:吉野庫之介)
劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』は、9月19日より全国公開。