北九州のソウルフード「資さんうどん」 なぜ関東で行列ができるのか

55

2025年09月21日 10:10  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

北九州の味が関東で大人気!

 「北九州のソウルフード」と呼ばれる、うどんチェーン「資さんうどん」(運営:資さん)が関東で勢いを増している。資さんうどんは1976年、福岡県北九州市で創業。特徴は、うどんだけでなく、丼もの、カレー、ぼた餅など、メニュー数は100品を超え、客単価は800〜900円ほど。北九州の人にとっては「日常のインフラ」として根付いているチェーンだ。


【その他の画像】


 2024年10月にすかいらーくホールディングス(HD)の子会社になって、9月5日時点で全国に84店舗(うち関東8店舗)を展開している。2024年12月に千葉県八千代市に出店し、数時間待ちの行列ができるなど、話題を呼んだ。地元に愛されてきた“ご当地チェーン”が、なぜ関東の人にもウケているのか。その背景について、資さんの崎田晴義会長に話を聞いた。


●クチコミが広がる


――2024年12月、関東1号店が千葉の八千代市にオープンしました。連日のように行列ができたわけですが、翌月の数字を見ると、平均日商は200万円を超え、1日当たりの客数は2000人以上を記録しました。


 その後、東京の両国に2号店を出店し、オープン初日には長蛇の列ができました。関東での認知度はまだまだ低いと思うのですが、なぜ多くの人が詰めかけたのでしょうか。


崎田: すかいらーくで新しいブランドを立ち上げる際、認知度を上げるのはものすごく時間がかかるんですよね。「〇月〇日にオープンします」と告知しても、お客さまからすれば「どういったお店なのか」「どういった料理が出てくるのか」「どういったサービスを提供するのか」がよく分かりません。


 新しいお店に足を運ばれて「おいしい。また来たい」と感じていただければ、次につながる。ただ、別の街で出店すると、またゼロからのスタートになる。このようにブランドの認知度を上げるには、時間がものすごくかかるんですよね。


 ですが、資さんうどんの場合、関東や関西といった初出店のエリアでも多くの人に来ていただいている。なぜか。資さんうどんは来年50周年を迎えることもあって、既に食べたことがある人が多いんですよね。


 北九州で生まれ育った、学生時代に暮らしていた、あるいは転勤で住んでいた――。そうした人が「千葉の八千代市に出店する」と聞いたとき、どのような行動をとったのか。同僚や友人に「一緒に食べにいこうよ」といった会話が交わされ、クチコミがどんどん広がっていったのではないでしょうか。


 新店がオープンする際、私は必ず立ち会うようにしているのですが、関東のどの店に行っても、お客さまからこのようなことを言われました。「子どものころに食べていました」「今日は友だちを連れてきました」と。


●チラシを配る必要はない


――関東には「資さん」のことを「しさん」と呼ぶ人がまだまだ多いように感じますが、それでもお店に行列ができる。その背景に、「クチコミの力が大きかった」と分析されていますが、クチコミを拡散させるために何か手を打ってきたのでしょうか。


崎田: 他のブランドで新しいお店を出店する場合、チラシを配るんですよね。しかし、資さんうどんの場合、配りませんでした。繰り返しになりますが、クチコミによる影響が大きいので、会社として「チラシを配る必要はない」と判断しました。


 ただ、他のブランドと同じように、事前にSNSで告知をしました。また、店の近所に看板も掲げました。「〇月〇日にオープン」などと書かれた看板を掲げると、街でうわさがあっという間に広がりました。なぜクチコミでそれほどの盛り上がりを見せるのか。個人的には、「日常食であることが大きい」と思っています。


 物価高などの影響で、外食の単価が上がり続けています。すかいらーくのブランドでいえば、ガストも客単価の平均が1000円を超えました。そうした状況の中で、資さんうどんは800〜900円ほど。家族4人で訪れても、4000円以内で収まります。


 また、基本は24時間営業なので、朝・昼・晩・深夜に食べられる。特別な資さんではなく、“日常の資さん”といった存在なので、「ちょっと行ってみない?」といった具合に、同僚や友人を誘いやすいのではないでしょうか。


――北九州と関東のうどんの味に、違いはあるのでしょうか。水質が違うので、同じ味にするのは難しいのでは?


崎田: ご指摘のとおり、水質の違いによって、うどんの味は変わってきます。北九州と関東の水質は違いますが、九州の中でも違いはあるんですよね。そうした状況の中で、これまで北九州で生まれたうどんの味を守ってきました。


 関東でも同じ味を守り続けるために、さまざまな検証を繰り返してきました。いろいろな工夫を重ねて、「これならやっていける」という結論に至りました。ただ、今後、新しいエリアに出店した際、水質が違いすぎて、改良を加える必要が生じるかもしれません。


●競合に追いつけるのか


――店舗数の計画を見ると、2025年末には94店、2026年末には124店と書かれています。競合の丸亀製麺は800店ほど、はなまるうどんは500店ほどあるので、出店スピードを早める必要があるのでは?


崎田: ゆっくりなペースに感じられるかもしれませんが、徐々に出店数は増やしていく予定です。なぜ、増やせるのか。まっさらな土地に建物を建てて、新しく人を採用して……といった形ではなく、すかいらーくの既存ブランドからの業態転換を中心に考えているからです。


 既存の建物を利用するので、投資コストはかなり抑えられる。もともとレストランを営業していた店舗なので、オペレーションに精通したマネージャーがいる。マニュアル教育を受けてきたスタッフもいる。そうしたベースがあって、資さんうどんのオペレーションに切り替えれば、オープン当初から高いレベルでサービスを提供できるはず。


 新しいブランドの出店であれば、まず人を採用し、その後に教育を行わなければなりません。難易度がどんどん高くなりますが、業態転換であれば、お店を改装して、あとはオペレーションを教えるだけ。結果、スピーディーに出店できると思っています。


 現状、関東で新しい店を出店すると、行列ができます。クルマに乗って、電車やバスを乗り継いで、来店されるお客さまもたくさんいる。わざわざ足を運んでもらっていることを考えると、いまは特別な資さんですが、店舗数を増やして、できるだけ早く“日常の資さん”にならなければいけません。


(土肥義則)



このニュースに関するつぶやき

  • 話題性があったからねケンミンショー様様だよ^⁠_⁠^
    • イイネ!4
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(39件)

ランキングトレンド

アクセス数ランキング

一覧へ

話題数ランキング

一覧へ

前日のランキングへ

ニュース設定