映画『鬼滅の刃』無限城編が世界で大ヒットした理由は? 圧巻の戦闘シーンと“覚醒”描写を原作と比較

1

2025年09月23日 11:00  リアルサウンド

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

※本稿は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のネタバレを含みます。


 アニメ『鬼滅の刃』の最新作『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下、猗窩座再来)が、海外でも大ヒットを記録している。北米では公開初週だけで興行収入100億円を突破し、歴代アニメ映画でトップの記録を打ち立てることに。また全世界累計では、総興行収入680億という数字に達したという。


 なぜ同作はここまで世界的なムーブメントを巻き起こすことができたのか。その理由を探っていきたい。


 同作がヒットした背景としては、まずマーケティング的な要因が考えられる。アメリカでの配給を担当したソニー傘下のアニメ配信サービス大手Crunchyroll(クランチロール)は、シリーズ初期から『鬼滅の刃』の海外展開を手がけ、北米におけるファンダムを育ててきた。今回はその総決算として、「無限列車編」のほぼ2倍となる3,315館もの上映館を確保することで、大きな盛り上がりを演出している。


 また、もっと広い視点で見れば、配信プラットフォームの世界的な普及が追い風となったことも指摘できる。そもそも日本のアニメに親しむ人の数が、ひと昔前と比べて格段に増えているため、潜在的に大ヒットの芽が育ちつつあったと言えるからだ。


 その一方で、興行的成功の根底にあるのはやはり作品そのものの力だろう。「無限城編」は竈門炭治郎をはじめとする鬼殺隊と、鬼舞辻無惨率いる上弦の鬼たちが最終決戦を繰り広げるストーリーで、作品最大の山場となっている。


 そしてufotableは日本のアニメーション技術の粋を尽くして、そんな原作を見事に映像化してみせた。なにより特筆したいのが、バトル描写の素晴らしさだ。


 原作の「無限城編」は戦闘シーンと人間ドラマのバランスがよく、どちらかといえばテンポを重視した描き方となっていた。しかしアニメ版は三部作構成にした上、第一章に155分を費やすほど、徹底的な“肉付け”を行っている。それによって各戦闘シーンの密度が大幅に増しているのだ。


 無限城という広大なフィールド、ド派手なエフェクトと共に描かれる剣技や血鬼術、そして躍動感あふれるアクション……。劇場で観ることに価値を見出せるリッチな映像に仕上がっている。


 たとえば水柱・冨岡義勇と上弦の参・猗窩座が高速で無限城を駆け回りながら戦う場面は、迫力たっぷり。さらに猗窩座が「終式・青銀乱残光」を放つシーンでは、青白い花火のような光が煌めくエフェクトが展開し、美しさすら感じるほどだった。


我妻善逸がたどり着いた境地……胸が熱くなる“覚醒”の連続

 またストーリー面で注目したいのは、各キャラクターの“覚醒”だ。今回圧倒的な力をもつ上弦の鬼と戦うにあたって、鬼殺隊の面々はそれぞれのやり方で限界を突破していく。「痣」の発現は、それを象徴する描写だろう。


 また炭治郎は猗窩座との戦闘で窮地に追い込まれると、父が巨大な熊を手斧で仕留めていた光景を思い出す。それによって“透き通る世界”への扉が開き、防御力に秀でた義勇ですらいなせなかった「終式・青銀乱残光」を無傷で回避するのだった。


 そしてSNSなどで海外ファンの反応を集めているのが、我妻善逸の覚醒シーンだ。善逸は上弦の陸となったかつての兄弟子・獪岳と対峙するのだが、その姿はこれまでのシリーズとは別人に近い。


 善逸は基本的に臆病で弱気な性格だが、獪岳が師を裏切ったことを知り、怒り心頭といった様子で戦いに臨む。そこで披露する「雷の呼吸」漆ノ型・火雷神という新技は、あまりにもスタイリッシュな映像で表現されている。


 そもそも善逸は「雷の呼吸」の壱ノ型・霹靂一閃しか使えない剣士だったが、ここにきて“自分オリジナルの型”を生み出すという飛躍を果たした。そうした善逸の覚悟や成長も込みで、同作屈指の名シーンとなっている。


 もちろん「無限城編」の盛り上がりはまだまだ終わらず、今後公開される第二章や第三章でもさまざまな見せ場が描かれるはず。上弦の弐・童磨との決着はまだ付いておらず、上弦の壱・黒死牟に至ってはまだ戦闘シーンが描かれてすらいない。そして柱で最強格とされる岩柱・悲鳴嶼行冥や風柱・不死川実弥が本格的に参戦するのも、次作以降となる。


 ボルテージがさらに高まっていく上弦の鬼との戦闘は、間違いなく世界中のファンたちを熱狂させるだろう。ufotableによるアニメーション技術の“限界突破”にも注目しつつ、伝説の続きを見守っていきたい。


■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、上田麗奈(栗花落カナヲ役)、岡本信彦(不死川玄弥役)、櫻井孝宏(冨岡義勇役)、小西克幸(宇髄天元役)、河西健吾(時透無一郎役)、早見沙織(胡蝶しのぶ役)、花澤香菜(甘露寺蜜璃役)、鈴村健一(伊黒小芭内役)、関智一(不死川実弥役)、杉田智和(悲鳴嶼行冥役)、石田彰(猗窩座役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:矢中勝、樺澤侑里
美術監修:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:Aimer「太陽が昇らない世界」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)・LiSA「残酷な夜に輝け」 (SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
総監督:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/mugenjyohen_movie/
公式X(旧Twitter):@kimetsu_off



    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定