長岡一也さん(フリーアナウンサー)【長岡一也=コラム「競馬白書」】
◆前哨戦のセントウルS組にも注目
いずれ劣らぬ快速揃い、秋のスプリントチャンピオンをと準備を続けてきた成果が問われるときがやってきた。
中山芝1200米は、ゴール前の高低差2.2米の急坂でブレーキがかかるものが多い。タメを利かせて一気に駆け上がる余力が無いと勝ち切れない。それに直線は長くないので、4角までどう走っていたかも勝敗を分ける要素になっている。
スタートして直ぐ3角にさしかかるから、外枠勢が好位を取りに行くことが多く、内枠がごちゃつくというシーンも見られ、こういうケースでは中間枠の成績が良くなっている。
さらに言えば、混沌としているときには斤量も決め手になることがある。このケースに牝馬があてはまるが、事実この10年で馬券圏内に牝馬が4割もからんでいるのだから、やはり考えに入れておくべきだろう。
いくつかのテーマがある中で、何と言っても、春秋スプリント同一年度GI制覇という史上6頭目の記録に挑むサトノレーヴの短距離界天下統一成るかが一番大きい。昨年は重賞2連勝で1番人気に支持されていたが、スタートで遅れ自分の位置が取れず、前が止まらない速いペースに戸惑って7着に敗れていた。その後、香港のスプリントG1で3着と強豪にもまれて自信を深め、今年の高松宮記念の優勝につながった。前後半差のないラップで中団につけ、外をまっすぐ伸びてモレイラ騎手で勝っていた。このコンビで5戦2勝2着2回3着1回で、今回も引き続いて乗ることで完全にスプリント界を背負う存在になったと言えるだろう。
史上4頭目の連覇がかかるルガルは、昨年は高松宮記念10着から半年ぶりの実戦で9番人気と評価が低かった。しかしスタートが決まったのが大きく、ロードカナロアのコースレコードに0秒3まで迫る1分7秒0の好タイムで勝っていた。前半3ハロンが32秒1という驚異的ハイペースを3番手でついていったのだから、この1年の成績が良くないが、時計勝負になれば浮上できる。
過去10年で8連対と最も重要な前哨戦と言われているセントウルS組からは、1、2、3着馬がそっくり出走してくる。この中ではママコチャが一昨年のスプリンターズSを勝っていて昨年が4着、今年は返り咲きを狙っている。前走ひと叩きされ、実績のある中山で上位には来そうだ。
ただ、これよりも今年は、前哨戦を快勝したカンチェンジュンガの方が新鮮味がある。特にペースが速くなった時にチャンスが広がるタイプで新世代のスプリント王誕生かという魅力がある。
悲願達成をと言えば、これまでスプリントGI2着3回、3着2回と好走を続けているナムラクレアだ。スプリンターズSには4年連続参戦してきて、これまでよりレース間隔を空けてきた今回には、かける思いが伝わってくる。スタートが決まれば、この枠は有利に働く。
「主役へと いずれ劣らぬ スプリンター」