女性の尊厳を踏みにじる“触れない痴漢”が多発…卑劣すぎる実態と被害者の叫び。「触れていないからセーフ」では済まされない

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2025年10月07日 16:20  日刊SPA!

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※画像はイメージです
 触れない痴漢――。それは、言葉や視線、雰囲気で女性を傷つける、新手の性加害。身体的な接触がないからと軽視されがちだが、その手口は悪質だ。今回取材班は被害女性たちの悲痛な叫びに迫った。
◆不快度MAXなのに声を上げにくいジレンマ

 埼玉県在住のOL・西田京子さん(仮名・33歳)も被害者の一人だ。それは満員電車での出来事だった。

「毎日なぜか近くに立つ20代の男性がいました。イケメンですが、必ず私の真後ろを陣取り、束ねた髪に鼻先が触れるほど顔を寄せてくる。電車が揺れるたびに、わざと体を合わせながら鼻を埋めてくるような動きで……。最初は偶然かと思いましたが、繰り返されるうちに『これは匂いを嗅いでいる』と確信しました。気持ち悪くて距離を取ろうとすると、今度は正面に回り込んできて、私の顔のすぐ近くで堂々と嗅いでくる。嫌がれば嫌がるほど仕掛けてくる執念深さがありました」

 西田さんのケースのように、女性の髪や体臭を狙って「嗅ぐ」行為は、触れない痴漢の典型だ。しかし、被害はそれだけにとどまらない。

「ぼーっと立っていたら、後ろから耳元にフーッと息を吹きかけられました。振り返ると、40代のサラリーマン。臭い息を浴びせられたと気づいた瞬間、背筋が凍りました」(デパート勤務・大島京さん・仮名・29歳)

◆視線×エア揉みの恐怖

 さらに、“視線”という形での加害もある。

「この前、仕事帰りの電車で、ふっと“嫌な視線”を感じたんです。無精ひげの30代ぐらいの男性で、手のひらに大きめのマシュマロ、指先にピンク色の飴玉サイズのグミ……。たぶん“疑似おっぱい”なんです。私の乳房付近を凝視してニヤニヤしながら、グミを指先で転がしていて……。気持ち悪さに吐き気がして、隣の車両に行ったのに、後をつけて追ってきたんですよ」(パティシエ・飯島美佐江さん・仮名・33歳)

 嗅ぐ、息、視線――いずれも体には触れていない。だが、女性にとっては明確な加害であり、心に深い傷を残す。

 勇気を出して「NO!」の意思を示しても、加害者は「触っていない」と居直り、しらを切り続ける。こうして日常の空間がじわじわと恐怖に塗りつぶされていくのだ。

◆デジタル痴漢はなおも多い

 さらに露骨なのが、公共空間で女性に性的な画像や映像を「見せつける」痴漢だ。なかでも近年増えているのが、iPhoneのAirDrop機能を悪用した“エアドロ痴漢”である。

「電車で座っていると、突然スマホに“AirDropで受信しますか?”と通知が出てきたんです。送り主の名前は“犬好きペコちゃん”みたいなニックネーム。開いてみたら、男性器のドアップ画像で……。周りの誰が送ってきたのかは特定できず、電車を降りるまでずっと背筋が凍っていました」(販売員・香田ゆかりさん・仮名・27歳)

 不特定多数に一斉送信できるため、誰が加害者なのか突き止めにくく、被害者は泣き寝入りを強いられやすい。公共空間で強制的に卑猥画像を見せつける、まさに“デジタル痴漢”だ。

◆アナログの「見せつけ行為」もまだまだ多発

 だがアナログな「見せる痴漢」も依然として後を絶たない。

「席に座れてラッキーだと思ったら、隣の50代の男がすっとエロ本を広げて『見てくれ』とでも言うような角度で私に開いてきたんです。内容はギャルが男性器を咥えている過激なもので、駅に着くまでの数分間ずっと見せつけられました。私は痴漢被害に慣れていたので逃げずに証拠として状況を撮影したんですが、反対側の隣の席に座っていたサラリーマンはドン引きして離れていきました」

 もはや、痴漢どころかわいせつ行為ではあるが、自慰行為を直接見せつけるという事案も少なくない。パート勤務の田中百合さん(仮名・30歳)はカフェでおぞましい体験をした。

「ほんの1mしか離れていない席に、50代半ばのどこにでもいそうな男性が、新聞を片手に座ってたんです。友達との話に夢中でしたが、ふとねっとりした視線を感じ男のほうに目をやると、テーブルの下でズボンのファスナーから取り出した男性器を熱心にこすりまくってました」

◆卑猥な言動が子どもに影響ないか心配

 言葉を武器にする“触れない痴漢”も横行している。主婦・岡田美知枝さん(仮名・35歳)は、その餌食となった一人だ。

「すれ違いざまに『おっぱいデケェな』『ヤりてぇ……』などと鼻息を荒らげながら言い捨てられるんです。睨みつけようにも、周りはサラリーマンやおじいさんでごった返しているわけなので、犯人を特定して捕まえることなんてできない。たまに『コイツだ』とわかっても、改札で私が出たときに相手が入っていたり、エスカレーターで逆方向に進んでいたりと、自分とは反対方向に進む場所で言われると追いかけられない。犯人もそういう追いかけられないポイントを狙ってるんだと思いました。自分の逃げ道を常に確保するという用意周到さには呆れます」

 岡田さんはさらに、「自分一人のときならまだしも……」と不安を吐露する。

「男たちは、私が5歳の息子といるときでも構わずに卑猥な言葉を吐き捨てていく。そのうち息子が成長すれば、彼らがボソっとつぶやくデリカシーのない言葉の意味を知ってしまうかもしれない。そう思うと、本当に腹立たしくて絶対に許せません」

 嗅ぐ、息、視線、デジタル、アナログ、言葉……形を変えながら触れない痴漢は、社会のあらゆる場所に潜んでいる。接触がないことを口実に見逃されやすいが、その被害の深刻さは「触れる痴漢」と何ら変わらない。

 グレーな行為であるが故に女性が咄嗟に判断できず、声を上げにくい触れない痴漢は、現在進行形で泣き寝入りを余儀なくされるケースが後を絶たないとも言われる。

 女性の尊厳を踏みにじるこの卑劣な行為を、これ以上けっして野放しにしてはならない。

◆触れない悪意も迷惑防止条例違反に

 非接触でも、女性に恐怖と屈辱、そして尊厳を踏みにじる深刻な被害、触れない痴漢。にもかかわらず、「証拠が残らない」「触っていない」ことで言い逃れられてきた。

 性犯罪に詳しい弁護士・奥村徹氏が解説する。

「痴漢とは、迷惑防止条例における“人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動”として処罰される行為。社会通念上、著しく性的羞恥心を抱かせたり、不安を覚えさせたりする行為です。“匂いを嗅がれた”“息を吹きかけられた”なども状況によっては処罰される可能性があります」

 痴漢と同様に声を上げることが重要とも奥村氏は強調する。

「深呼吸をしただけ、息が上がったなどと言い逃れされる可能性はありますが、被害に遭った場合は、違反の疑いがあるとして、通報を躊躇しないでください。立証が必要ですが、『痴漢なのか?』と迷った場合も、一旦判断は警察に委ねるべきです」

【弁護士・奥村 徹氏】
大阪弁護士会所属。奥村&田中法律事務所。不同意性交や公然わいせつなどの性犯罪のほかに、ネット犯罪や児童性犯罪にも詳しい

取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/板垣雅也

―[急増![触れない痴漢]の卑劣な手口]―

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