ふるさと納税訴訟の差し戻し審判決後の記者会見で、「勝訴」と書かれた紙を掲げ、笑顔を見せる原告側代理人の阿部泰隆弁護士=9日午後、大阪市北区 ふるさと納税制度で多額の寄付収入を得ていることを理由に特別交付税の減額を決めたのは違法だとして、大阪府泉佐野市が国に決定の取り消しを求めた訴訟の差し戻し控訴審の判決が9日、大阪高裁であり、牧賢二裁判長は減額決定を違法とした一審判決を支持し、国側の控訴を棄却した。
判決などによると、市は2018年度、ふるさと納税で全国最多の約498億円を集めた。しかし、省令改正により特別交付税の減額が決まり、19年度は災害関連を除き、前年度比89%減の約5300万円が配分されるにとどまった。
牧裁判長は、自治体の標準的な収入などを考慮して特別交付税額を決定すると定めた地方交付税法は、標準的な収入の算定根拠に寄付金収入を含んでいないと指摘。寄付金収入が一定額あることを理由に、省令で特別交付税を減額することは「(法律の)委任範囲を超えており違法だ」と述べた。
その上で、寄付金収入を減額要因とするには「立法者において政治的、政策的観点から判断すべきだ」と結論付けた。
一審は市側の主張を認め、減額決定は違法とした。これに対し、差し戻し前の二審大阪高裁は「行政内部の紛争は裁判の対象にならない」として、減額決定の違法性に判断を示さないまま、市の訴えを却下した。
最高裁は今年2月、「具体的な権利義務に関する紛争で裁判対象になる」と判断し、審理のやり直しを命じていた。
千代松大耕・泉佐野市長の話 交付税行政を正す意義があった。国は上告せずに、速やかに減額決定を取り消し、現在も存在する違法な省令を取り下げることを望む。
村上誠一郎総務相の話 判決内容をよく精査した上で対応を検討する。

大阪高裁=大阪市北区