既報の通り、Intelは10月9日(米国太平洋夏時間)、新型CPU「Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)」「Xeon 6+プロセッサ(Eコアモデル)」の概要を発表した。
この発表に先立って、同社は9月下旬に米アリゾナ州フェニックスにおいて報道関係者向けイベント「Intel Techology Tour 2025」を開催した。イベントでは基調講演の他、両CPUの技術面での詳細説明セッションなどが行われ、新しいプロセスノード「Intel 18A」が量産実動にこぎ着けたことをアピールした。
本記事ではまず、基調講演の模様をお伝えする。“メインディッシュ”である新CPUや、Intel 18Aプロセスに関する深掘り記事は別途お伝えしたい。
なお、本イベントでは全てが撮影禁止だったため、画像はIntelから提供を受けたものを利用する。Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)「Xeon 6+プロセッサ(Eコアモデル)」
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●AIサービスの拡大で指数関数的に負荷が増える Intelの対策は?
最初に登壇したサチン・カッティ氏(シニアバイスプレジデント兼最高技術/AI責任者兼ネットワーク&エッジグループ ジェネラルマネージャー)は、昨今と今後の半導体業界における業界動向について触れた。
同氏は確度の高い予想として、「2028年までにAI関連処理の80%は推論(ベースの演算)になるだろう」と語る。この傾向が強まると意識せざるを得ないのが、「1ドル当たり」あるいは「1W当たり」のパフォーマンス、いわゆる「コスパ」と「ワッパ」だ。
カッティ氏は、2024年から2025年にかけての1カ月当たりのトークンの処理数は約10兆から約1400兆トークンと、約140倍に増加する見通しを示す。
現在のAIサーバは、単一のシステムで複数のAIを動作させている。そのため、連結型の推論処理を実行すると、求められる生成トークンの数は指数関数的に増加することが避けられない。無尽蔵に増えるトークンの生成に対応しつつ、高効率なAIサービス運用を実現するに当たっては、「AIサーバの構造」に対する根本的な改良やチューニングが不可欠になると、カッティ氏は主張する。
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●「Agentic AI」とは何か?
カッティ氏の基調講演のスライドでは、たびたび「Agentic AI」という言葉が出てくる。これは一体何なのだろうか?
これと似たキーワードとして「AGI(Artificial General Intelligence)」がある。日本語でいえば「汎用(はんよう)人工知能」という意味で、人間並みに広範囲な課題に取り組める“究極の汎用性”を備えたAIと定義されている。
もう1つ、似たようなキーワードに「AI Agent(AIエージェント)」というものがある。こちらは与えられた特定の課題に対して、「調査」と「意志決定」のループを回すタイプのAIだ。AI Agentは、その種類に応じてつかさどる知性空間が異なることが多く、例えば大規模言語モデル(LLM)なら言語空間によって構築された知性空間において推論を走らせる。一方、膨大な写真や映像を学習したAIは、コンピュータビジョン的な視覚空間の知性空間で推論を走らせる。
そしてAgentic AIは、特に最近増えてきた先進AIスタイルだ。AGIほどではないものの高い自律性を持ち、与えられた課題を要素分解して、分解した課題を解決するために適切なAI Agentを複数起動(起用)して必要な調査を行い、そこから最終推論を導出することが特徴だ。
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Agentic AIを高効率に実現するために、IntelではAI Agent群をそれぞれコンテナ化した上で仮想化し、仮想化されたAI Agent群を必要に応じて「Orchestrator Agent」を通して起用/活用する仕組みを提唱している。Orchestrator Agentは、その名の通りある意味で「AI Agentの“指揮者”」ともいえる。
取り扱う知性空間が視覚に関わるAI Agentなら、GPUを動員して処理するのが最適だろう。一方、一桁層程度の軽量ニューラルネットワークベースのAIなら、推論に特化したNPUを引っ張り出すよりも、CPUでAVX系のSIMD命令を使って推論を直接実行した方が低遅延かつ速いケースも多い。
Intelは、Agentic AIにおけるそれぞれのAI Agentの実務処理に適した、多様な種別のハードウェアが適材適所で動員される仕組みとして「Open AI Software Stack」を提唱している。
Intelは、CPUやGPUも多様な性能/消費電力レンジの製品を取りそろえている。AIアクセラレーターには強力なパフォーマンスを発揮する「Gaudi」シリーズもある。
Intelが持つ多様なハードウェア製品を適材適所に活用した、有機的な次世代AIシステムの登場にご期待下さい――これがカッティ氏のメッセージであった。
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