「誰も成し遂げていないことをやりたい」ロバンペラ、ラリーからフォーミュラ転向を決めた経緯と目標

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2025年10月10日 15:10  AUTOSPORT web

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2026年全日本スーパーフォーミュラ選手権への参戦を発表したカッレ・ロバンペラ
 10月9日(木)、WRC世界ラリー選手権に参戦しているカッレ・ロバンペラ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)が、2025年限りのWRC引退と2026年の全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)参戦を発表した。この日ロバンペラは囲み取材に応じ、SF参戦を決めた経緯やサーキットレースに挑戦するうえでの目標を語った。


■「自分の限界に挑戦する必要がある」

 WRC史上最年少のワールドチャンピオンであり、現在25歳のロバンペラ。同じWRC選手の父ハリ・ロバンペラの影響で幼少期からクルマに乗り、19歳でWRCにデビューしてからは破竹の勢いで勝利を重ねてきた。2022には史上最年少で初タイトルを手にし、2023年にはシリーズを連覇した。現時点でセバスチャン・ローブが築いている9度のタイトル獲得記録を塗り替える可能性を見せており、2025年も3度目のタイトル獲得の可能性を残している。しかし3戦を残すタイミングで、2025年限りでラリー参戦を終えて2026年からはサーキットレースへ転向することを明らかに。SFに挑むことを発表し、世界中のモータースポーツファンに驚きをもたらした。

 WRCを2連覇したロバンペラは、2024年はシリーズ参戦をパートタイムに切り替えてサーキットレースへの挑戦を開始。サーキットデビューはポルシェ・カレラカップ・ベネルクスで、これまでに計3勝を飾っている。彼はSF挑戦の計画について「初めてサーキットレースに参戦したとき」から考え始めたと話した。

「初めてサーキットでレースに出場した時に、新しいフォーマットや新しいスキル、さらに学ぶべきことがあると知り、新しい興奮を感じたんだ。レースに出るたびに、自分のスキルをさらに伸ばすことが本当に面白くて、『これは自分の限界に挑戦する必要がある』と感じた。そこからは、モータースポーツにおいて他に何ができるのか、自分がどこまでやれるのかを考え始めたんだ」

「今後の計画についてトヨタと真剣に話し合い始めたのは、今年に入ってからで、サーキットで大きな目標に挑戦できるチャンスがあるという話が持ち上がった。その時、35歳や40歳になってからでは遅いと思ったから、今が決断の時だと思ったんだ」

 ロバンペラにとって初のフォーミュラ・シリーズが、F1の次に速いと言われるSFというのは驚異的なチャレンジのように思われるが、どのような考えを持っているのか。そして、最終的なターゲットはどこを見据えているのだろうか。ロバンペラは「今後2年間はスーパーフォーミュラに乗り、トヨタとともに可能なかぎり最高のレベルを目指す」と目標を話す。

「これからスーパーフォーミュラに進出し、その後はフォーミュラ2(FIA F2)など次のカテゴリーに向けて取り組んでいくつもりだ。ただ、今のところは最終的なターゲットがどのレースになるのかは言えない。最高のレベルを目指すことは確かであり、F1はモータースポーツのなかでもっとも高いレベルに位置しているが、サーキットレースにはほかにも素晴らしいイベントがたくさんあるし、『ル・マンに出場したいか』と聞かれたら、もちろん出たいと答えるだろう。まだ可能性は無限にあるよ」

 最初のフォーミュラとして、いきなりのSF参戦については「突然深いところに飛び込むようなものだ。スーパーフォーミュラはF1にそれほど遅れをとっているわけではないし、F2よりもはるかに速い」とハードルの高さは承知の上。それでも、「まずはマシンをどうコントロールするかを学ぶ。レースでは接近戦を強いられるし、Gフォースやコーナリングスピードはこれまで運転してきたどのマシンともまったく違うので、体力面の課題もある。この冬は、あらゆる面でスーパーフォーミュラに備えるための準備期間になるだろう」と話し、これまでのロバンペラらしく冷静に向き合っている様子だ。


■「夜に寝るときにたくさん考えた」ラリーへの再復帰も視野に

 2025年はWRCフル参戦を再開しながらも、サーキットレ−スデビューへ向けた計画を練ってきた様子のロバンペラ。ラリーとフォーミュラというふたつのターゲットを見据えることは、モチベーションにどのように影響しているのか。『集中力を維持するのは大変ではなかったか?』との問いに、「ラリーではとくに影響はなかった」といい、カテゴリーをシフトする心境を明かす。

「それでも、家族と話し合ったり最初に計画を立てはじめたころは、確かにそうだった。僕は夜に寝るとき、人生の大きな選択について考えるのだけれど、ラリーは僕にとって物心がついた頃からずっと人生の一部だったから、たくさん考えたよ」

「そこで僕は、おそらく論理的ではないような、他人から見て明白ではないかもしれないような決断や行動をしたいと思ったんだ。つねに、自分にとって正しいと感じ、ワクワクすることに挑戦したいと思った。誰も成し遂げていないことをやりたいんだ」

「キャリアを含む人生全体にとって大きな選択、大きな決断であることは確かだ。そして、ようやくすべての計画が明確になった今は、自分の選択に満足できているし、未来にとてもワクワクしているよ」

 カテゴリー転向が完全に決まった今、目前のターゲットはWRCの自身3度目の王座であろう。現在ロバンペラは、第11戦ラリー・チリ・ビオビオを終えた時点でトップと21点差の3位につけている。残るはロバンペラが今季すでに勝利を挙げているターマック(舗装路)のセントラル・ヨーロピアン・ラリーとラリージャパン、そして初開催となる最終戦ラリー・サウジアラビア(グラベル/未舗装路)だ。

「今シーズンは不運もあったし、もっとポイントを獲得できたはずの出来事もたくさんあったので、最高のシーズンではなかった。それでもまだトップ3争いをしているので、最悪というわけでもないと思っている。まだ3つのラリーが残っているし、少なくともしばらくの間は僕にとって最後のラリーになるだろうから、タイトル獲得に向けて全力を尽くすよ」

 残り3戦でラリーとはいったんの別れとなるが、「キャリアのどこかの時点でまた出場するかもしれない。これからはフォーミュラに集中するために全力を尽くす必要があるが、ふたたびWRCのスタートラインに立つ可能性も残されていると思う。ただ、今のところは計画にはないよ」と、フォーミュラ挑戦後のWRC復帰の可能性についても触れた。

 WRCを制したからこそ湧いた、ロバンペラのサーキットレース挑戦への思い。F1というターゲットをむやみに明言しなかったのは、冷静な走りを武器にWRCを戦ってきたロバンペラゆえの心意気か。「論理的ではないような決断や行動」に燃えてSFに挑むその決意は、決して無謀には見えない。最年少でWRCを制した稀代の天才は、日本一速いドライバーを決めるSFでどんな走りを見せるだろうか。

[オートスポーツweb 2025年10月10日]

このニュースに関するつぶやき

  • WRCのワンメイクタイヤであるハンコックの性能がショボすぎて嫌気がさした、というのが本音なのではないだろうか?
    • イイネ!7
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