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台風の本格シーズンを迎えた日本列島。その影響で、9月下旬から“台風頭痛”に悩まされている人が急増している。
「台風が住んでいる場所の近くにあるときはもちろん、日本列島に接近していない場合にも、影響を受けて頭痛を訴える人がいます。なかには、南の海上に台風が発生した時点で、痛みを感じてしまう人もいるんですよ」
こう説明するのは、気象が原因の頭痛に詳しい、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生だ。
「台風が近づくと気圧が低下します。耳の奥にはセンサーのような役割をしている『内耳』と呼ばれる部分があり、この気圧の低下を感じ取って自律神経の中枢に伝えます。すると、交感神経と副交感神経のバランスが乱れてさまざまな不調をきたし、台風頭痛につながるのです」(久手堅先生、以下同)
この台風頭痛が起きやすいのは、日ごろから自律神経が乱れている人だという。
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「自律神経は気象の変化に敏感なので、乱れていると台風頭痛を引き起こしやすくなります。また内耳が敏感で繊細な人は、遠くの海上に台風が発生した、といったほんの少しの気圧の変化も感じ取りやすい傾向にありますね」
なかでも女性は要注意。
「気圧の低下が要因の気象病の症状を訴える人は、当院を受診されている患者さんでも、女性が7〜8割を占めています。月経周期に合わせて女性ホルモンのバランスが大きく変動すると、自律神経が乱れやすくなります。更年期症状が出やすい40〜60代も、急激な女性ホルモンの減少により、同様の理由で台風頭痛が悪化してしまう場合があります」
台風頭痛は、大きく分けて2種類あり、痛み方と対処がやや異なる。
一つ目は、頭痛の大半を占める“緊張性頭痛”と呼ばれるもの。
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「頭を全体的に締め付けられているような鈍い痛みが特徴で、左右差がないことが多いです。心的ストレスを抱えて体が緊張したり、交感神経が優位になることで起こる『首肩こり』が頭に派及して頭痛を起こします」
もう一つは、働き盛りの10〜40代に多く見られるという片頭痛。
「気圧変動などの刺激によって脳の血管が拡張し、それが神経を刺激して、痛みとして発生します。目がチカチカした後に激しい頭痛が出るなど、予兆があります。匂いや音、光に過敏になる、吐き気といった症状が出ることも。痛みが目から首にかけて強い人は片頭痛の可能性が高いです。こちらは女性に多く、男性の約3倍はいるといわれています」
対処を間違うと痛みが増してしまうこともあるので、まずは自分の症状がどちらの頭痛に該当するのかを見極めたい。
そして、この台風頭痛は今まで感じたことがない人も油断は禁物。特に更年期など“揺らぎ”の時期は、台風シーズンに入ると、突然頭痛が始まることもあるという。
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「一度頭痛を感じてからリセットできずにいると、気圧の変化に敏感になって、その後も継続的に感じるようになってしまうんです」
そこで大切になってくるのが、台風頭痛が起きてしまった後、次に気圧が下がるタイミングで症状が出ないように対策すること。今回は久手堅先生に、台風頭痛に効く8つの対処法を教えてもらった。
・寝る90〜120分前にお風呂につかる ※片頭痛の痛みがあるときは避ける
・アマニ油をとる
・緑茶やコーヒーを飲む ※片頭痛の場合はアイスで
・お湯入りペットボトルを耳にあてる ※片頭痛の痛みがあるときは避ける
・五苓散を飲む
・耳回しをする
・側頭筋ほぐし
・首回りタオル体操
台風頭痛が起きる前や台風が発生したときに行って効果が出るものや、実際に頭痛が起こっているときに行って、症状を緩和するものなどさまざま。
「自律神経の乱れ以外にも、水分代謝や運動習慣など、頭痛のトリガーとなるものは人によって違います。いろいろな対処法のなかから自分に合うものを見つけておき、台風シーズンの間だけでも習慣化しておくとよいと思います」
緊張性頭痛と片頭痛、どちらの対策でもとくにポイントとなる場所が“耳周り”だという。
「耳は気圧の変化を受けやすいので、耳周りの血流を改善することで症状が緩和されることが多いです。温める、耳回しをするなど、試してみてください」
日本気象協会によれば、今年は記録的な猛暑が長く続いた影響で海面水温の高い状態が続き、台風シーズンが平年より長引くおそれもあるという。万全の体調で過ごすために、頭痛のもとをリセットして、台風シーズンを乗り切ろう。
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