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2015年7月29日(米国太平洋夏時間:以下同)に一般リリースされた「Windows 10」が、10月14日にサポート終了を迎え、その歴史に幕を閉じる(延長セキュリティ更新プログラムは個人向けで最長1年、法人向けで最長3年続く)。
Windows 10のサポート終了に寄せて、この記事では同OSの「機能更新プログラム(Feature Update)」を振り返っていこうと思う。
●そもそも、どんな「機能更新プログラム」があった?
Windows 10がリリースされる直前、最新のWindowsは「Windows 8.1」だった。しかし、その前身である「Windows 8」でユーザーインタフェース(UI)が大胆に変更されたこともあり、旧バージョンであるはずの「Windows 7」が大きなシェアを占めていた。
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UIの改善などを行ったWindows 10には当初、大きな期待が寄せられていた。しかし、リリース当初は互換性の問題や不具合が影響して安定動作せず、ユーザーの頭を悩ませていた。
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そんなWindows 10も、度重なるアップデートを経て、2025年6月までデスクトップ向けOSのシェアトップをキープするまでに成長した。当初のことを考えると、非常に感慨深いものがある。
Windows 10は、半年〜1年に1回の頻度で「機能更新プログラム」という大型アップデートを重ねて、今の頼りがいのある姿へと変化してきた。機能更新プログラムでは毎回、多くの新機能も盛り込まれてきた。その一般リリース日の履歴は以下の通りだ。
・Windows 10(バージョン1507):2015年7月29日
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・Windows 10 November Update(バージョン1511):2015年11月10日
・Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607):2016年8月2日
・Windows 10 Creators Update(バージョン1703):2017年4月11日
・Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709):2017年10月17日
・Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803):2018年4月30日
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・Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809):2018年10月2日
・Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903):2019年5月21日
・Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909):2019年11月12日
・Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004):2020年5月27日
・Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2):2020年10月20日
・Windows 10 May 2021 Update(バージョン21H1):2021年5月18日
・Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2):2021年11月15日
・Windows 10 2022 Update(バージョン22H2):2022年10月18日
全ての新機能について振り返ると、膨大な量となってしまうため、特に筆者の記憶に残っている新機能について、簡単に振り返ってみたいと思う。
●Windows 10(バージョン1507)
オリジナルのWindows 10(バージョン1507)は、Windows 8/8.1で導入されたタッチ操作前提の「Modern UI」の評判があまり良くなかったこともあって、Windows 7までのデスクトップUIのみのスタイルとなった。今では当たり前となった「OneDrive」のOS(エクスプローラー)への統合は、このバージョンから実装されている。
余談だが、最新の2022 Updateと比べると、このバージョンの当時はUIを使ったユーザーへのアピールはほとんどなかった。今では懐かしい。
●Windows 10 November Update(バージョン1511)
Windows 10としては初めての機能更新プログラム「November Update(バージョン1511)」では、見た目上は大きな変化がなかった、しかし、パーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」が日本語対応したことが大きな目玉だった。
Cortanaは2023年秋、AIベースの「Windows Copilot」に置き換えられる形でサービスを終了した。約8年間もの間、サービスを継続したことになる。
法人ユーザーの視点では、このバージョンからWindows Updateを大規模組織向けに拡張した「Windows Update for Business」に対応している。これが登場するまで、企業がWindows Updateの適用可否をコントロールするには「Microsoft System Center Configuration Manager」が必要で、ハードルが非常に高かった。それが簡単になったことは、情報システム担当者にとっては福音だったはずだ。
●Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)
Windows 10のリリースから1年を“記念”した「Anniversary Update(バージョン1607)」では、スタートメニューのUIデザインが簡略化されたことが特徴だ。以後、スタートメニューのUIはこのバージョンから大きな変化をせずに遷移することになる。
●Windows 10 Creators Update(バージョン1703)
2017年4月11日にリリースされた「Creators Update(バージョン1703)」は、その名の通りクリエイター向けの新機能が複数追加された。例えば、3Dでお絵描きできる「ペイント3D」は、誰でも簡単に3Dオブジェクトを描画できる点は面白かった。ただし、ペイント3Dは3Dデータを作成する“きっかけ作り”という入門的なアプリだ。
法人ユーザーの視点では、モバイルデバイス管理(MDM)のサポート範囲が拡張されたことが大きなポイントだ。Microsoft Officeのクライアントアプリを展開ツールを介してインストールできる「Office CSP(構成サービスプロバイダー)」や、クライアントデバイスの起動ドライブの暗号化を必須化できる「BitLocker CSP」と組み合わせることで、組織内のPCのMDM管理が現実的なレベルに近づいた。
●Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)
2017年10月17日にリリースされた「Fall Creators Update(バージョン1709)」では、OneDriveのファイル同期で「オンデマンド」機能が追加された。
その名の通り、オンデマンド機能はファイルが必要になった時にダウンロードするというものだ。従来はクラウド(サーバ)にある全てのファイルと同期する必要があり、これがPCのストレージを圧迫するという問題があった。
オンデマンド機能によって、OneDriveをより効率的に使えるようになった。今では当たり前の機能だが、当時は画期的だったのである。
●Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)
2018年4月30日にリリースされた「April 2018 Update(バージョン1803)」だが、筆者としては正直なところ実装された新機能の記憶があまりなかった。「古いバージョンのサポートが終了される前にインストールしておこう」といった感じだった印象だ。
ただ、実際は複数の新機能があった。例えば、タスク切り替えビューが拡張され、過去に操作したアクティビティー(表示していたウィンドウやドキュメントなど)をカード形式で表示できる「タイムライン」はその代表格だ。近くのWindows 10 PCとファイルやURLをやりとりできる「近くで共有」も、本バージョンから実装されている。
また、Bluetooth接続した近くにあるほかのPCとファイルやURLを共有できる「近くの共有」機能もあわせてリリースされた。
●Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)
2019年5月21日にリリースされた「May 2019 Update(バージョン1903)」では、先のApril 2018 Updateと比べると記憶に残る新機能が幾つか導入された。ある意味で機能更新プログラムにおける“当たり年”だったといえる。
筆者的に一番重宝したのが、Windows Updateの「更新を7日間一時停止する」機能だ。以前のバージョンではWindows Updateの“一時停止”はHomeエディションでは利用できなかったところ、本バージョンからはHomeエディションを含む全エディションで1回当たり7日間(最長で5セット=35日間)一時停止できるようになった。
毎月1回行われる「品質更新プログラム」では、時折重大な不具合が発生することがある。そのため「Windows Updateの適用を遅らせて様子を見たい」というニーズもある。とはいえ、Windows Updateを完全に停止するのはセキュリティ面で良くない。そういう意味で、Windows Updateの一時停止機能は地味に助かるのだ。
他にも、「タスクマネージャー」の機能改善、マウスポインタの高解像度対応なども行われている。Proエディションでは、仮想マシンを使ってアプリの隔離して実行する「Windows サンドボックス」もサポートしている。
●Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909)
2019年11月12日に公開された「November 2019 Update(バージョン1909)」は、Windows 10のリリースから5年目、そしてWindows 7のサポート終了を約3カ月後に控えたタイミングでのリリースとなったことから強く印象に残っている。
特に注目すべき新機能として「Windows Search」の強化が挙げられる。オンラインであることが前提となるが、OneDriveに保存されたオンラインのファイルをエクスプローラーから検索できるようになったのだ。バージョン1709のオンデマンド対応によって生じた「オフラインのファイルしか検索できない」という新たな課題に対処した格好だ。
あくまで筆者の感覚ではあるが、このNovember 2019 UpdateでようやくWindows 10がこなれてきたように思える。
●Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)
2020年5月27日にリリースされた「May 2020 Update(バージョン2004)」では、「このPCを初期状態に戻す」機能が改善された。
この機能は、動作が不安定でOSを再インストールしたいニーズに応えるべくWindows 10で新たに実装された。本バージョンでは、新たにオンラインでダウンロードした“最新”ビルドのWindows 10を再インストールする機能が実装された。ローカル再インストールと比べると少し時間は掛かるが、これにより常に最新のWindows 10を再インストールできるようになった。
他にはCortanaのアプリ化(≒OSからの分離)なども行われている。
●Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)
2020年10月20日にリリースされた「October 2020 Update(バージョン20H2)」では、Chromiumベースの新生「Microsoft Edge」がOSに含まれるようになった。
Microsoft EdgeはMicrosoft独自のWebブラウザで、レンダリング(ブラウザ)エンジンも自社開発の「EdgeHTML」を使っていた。しかし、他のブラウザエンジンと比べると機能不足やパフォーマンスの課題を指摘されることもあったため、同社は2020年1月にレンダリングエンジンをGoogleが主導するChromiumに変更した。
October 2020 UpdateでChromium版Microsoft Edgeが標準化されたことで、わざわざダウンロードしてインストールし直す手間が省けるようになった。
Chromium版Microsoft Edgeは、Google自身が開発する「Google Chrome」とほぼ変わらないパフォーマンスの高さに加え、Microsoft独自のカスタマイズが行われていることもあり、愛用する人も少なくないはずだ。
●Windows 10 May 2021 Update(バージョン21H1)
2021年5月18日にリリースされた「May 2021 Update(バージョン21H1)」は、ある意味で“いにしえの”インターネットコンテンツとの決別を象徴する、個人的に印象深いバージョンだ。というのも、本バージョンではAdobe(旧Macromedia)のマルチメディアプラットフォーム「Adobe Flash」のランタイム(Flash Player)を削除したからだ。
Flashは1996年に旧Macromediaが開発したもので、2000年代にはインターネットゲームやインターネット動画の実現に大きく貢献した。 当時の日本では「Flash動画」が数多く生み出された。
しかしセキュリティ上の問題を解消しきれなかったことから、Adobeは2020年12月をもって中国を除く全世界でFlash Playerの開発と配布を終了した。本バージョンにおける削除も、その流れにのっとった取り組みとなる。
●Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2)
2021年11月15日にリリースされた「November 2021 Update(バージョン21H2)」は、「Windows 11」が登場した後に初めて登場した機能更新プログラムだ。
本バージョンでは、Wi-Fi(無線LAN)のWPA3セキュリティにおける「H2E(SAE Hash-to-Element)」のサポート、生体認証「Windows Hello」の大規模組織向け機能(Windows Hello for Business)の強化、「Windows Subsystem for Linux(WSL)」のGPUコンピューティング機能のサポートといった新機能が追加された。
WSLのGPUコンピューティング機能のサポート追加は、ヘビーユーザーにとっては嬉しい新機能だった……のだが、一般ユーザーに広く利用される機能ではなかった。
一方で、Windows 11と比べると新機能の追加は少なかった。いよいよ「Windows 10の終わり」が見えてきたと、筆者なりに実感したバージョンでもある。
●Windows 10 2022 Update(バージョン22H2)
2022年10月18日にリリースされた「Windows 10 2022 Update(バージョン22H2)」は、Windows 10向けとしては“最後”の機能更新プログラムだ。本バージョンは“最後”ということでOSの安定性向上に重点が置かれており、大きな新機能は搭載されていない。
ただし細かい新機能は追加されており、AIエージェント「Windows Copilot(現在のMicrosoft Copilot)」がプレビュー実装されている(後にアップデートで正式版に)。ただし、Windows 11における「Copilot in Windows」の機能は利用できないため、Webブラウザーから「ChatGPT」のような生成AIサービスを利用していることと体感上は変わりない。
Windows 10がリリースされた当初は「これがWindows最後のメジャーアップデートだ」とされており、筆者もそう信じていた。しかし、残念ながら時代の流れもありそうはならなかった。長い時間を掛けて“頼りがいのある背中”に成長したWindows 10は、その歴史の幕を閉じる。
ただし、以前の記事でも紹介した通り、個人ユーザーでも1年間は「延長セキュリティアップデート(ESU)」によってセキュリティ更新は引き続き受けられる。この期間を使って、感傷に浸らず、確実に「Windows 11」へアップグレードする方法を検討してほしい。
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