【プリンセス駅伝展望】前回1区区間賞の伊澤菜々花、復帰2年目のベテランの走りでスターツが前半トップに立つか

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2025年10月15日 06:08  TBS NEWS DIG

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女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝(11月23日・宮城県開催)の予選会であるプリンセス駅伝が、19日福岡県宗像市を発着点とする6区間42.195kmのコースに31チームが参加して行われる。上位16チームにクイーンズ駅伝出場権が与えられる。
昨年の1区区間賞の伊澤菜々花(34、スターツ)が、一回り大きくなって帰ってくる。伊澤は高校・大学時代に大活躍し、将来を嘱望されていた選手。しかし実業団入り後は低迷し、21年12月に一度は引退した。だが母校の順大でコーチをしている間に再度走りたい気持ちが強くなり、昨年スターツで現役に復帰。3レース目のプリンセス駅伝1区で区間賞を獲得して関係者を驚かせた。復帰2年目でさらに強くなっている理由と、2度目のプリンセス駅伝への思いを紹介する。

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復帰2年目が充実している理由は?

1月の大阪国際女子マラソンこそ2時間29分28秒で8位(日本人6位)といまひとつだったが、入社2年目に入った伊澤は順調だ。5月の東日本実業団5000mで15分23秒00と、昨年11月に12年ぶりに出した自己記録の15分25秒90を、ピークを合わせなかった試合で更新した。

5000mでは6月のホクレンDistance Challenge深川大会でも15分16秒70の自己新、7月の日本選手権は15分24秒76で6位に入賞した。10000mは自己新こそ出していないが6月のホクレンDistance Challenge士別大会に32分01秒87で優勝、9月の全日本実業団陸上も32分32秒82で5位(日本人1位)と好成績を続けた。

伊澤は好調の理由を2つ挙げた。1つは大阪国際女子マラソンで失敗した教訓で、練習の設定タイムより速く走りすぎることを控えていること。もう1つは「復帰して3カ月はふくらはぎの肉離れで走れませんでしたが、その後は1年以上ケガをしないで、練習スケジュールの変更もなくできている」こと。

週に2〜3回行う負荷の高いポイント練習は弘山勉監督が立案するが、伊澤は「充実感、満足感がある」と言う。「昨年より設定タイムも速かったり、ボリュームも増えたりしていますが、絶対無理とは思えないギリギリのところで出してもらっています。それを続けることが自信になっています」。


ポイント練習以外の日のジョグは伊澤が自身の判断で行うが、「昨年は10月にマラソンに出ることを決めましたが、今年は年間を通してマラソンを意識している」という。必然的にジョグで走る距離が多くなっているが、それをトラックレースで結果を出すことと両立させている。「春夏にトラックでスピードを研いたことも、ジョグで距離を走っていることもマラソンにつながります」。

復帰当初は2年目のマラソン出場を考えていた。それを早めた理由の1つとなったプリンセス駅伝で、伊澤は今年もロードシーズンのスタートを切る。

東日本実業団陸上がターニングポイントに

しかし伊澤が自信を持つまでには、2つの失敗があった。1つは前述の大阪国際女子マラソン、もう1つは4月の日本選手権10000mである。大阪は東京2025世界陸上代表が確実になる「2時間19分台で優勝」を狙っていた。日本選手権は2位以内に入れば、5月末のアジア選手権代表に選ばれた。アジア選手権でも上位に入れば、やはり東京世界陸上代表入りの可能性があったが、日本選手権で32分38秒12の7位と敗れ代表への道は途切れた。

弘山監督が次のように説明した。「10000mでもチャンスはあったと思うんですが、大阪の失敗を引きずっていました。頑張ってもまた失敗するんじゃないか、ということを口にしたこともありましたね。大阪を走ってマラソンへの気持ちが大きくなったことで、トラックの代表を狙う気持ちが中途半端になった可能性もあります。しかし東日本実業団がターニングポイントになりました。練習したことが結果につながること、練習を続けていけばマラソンにもつながることを感じられたのだと思います」。

クイーンズ駅伝最下位のチームがプリンセス駅伝優勝を目標に

プリンセス駅伝で伊澤が走るのは1区(7.0km)か3区(10.7km)。1区であれば「最初から自分でペースを刻んで、速いペースを怖れず押していきます」(伊澤)という走り方をする。3区なら「前に選手がいたら全員を抜いてトップに出ること」が求められていると自覚している。

弘山監督が就任して2年目。昨年は15位でクイーンズ駅伝出場を決めたが、今年は優勝を目標としている。関西外語大から入社1年目の三輪南菜子(23)と、順大から入社7年目の西川真由(28)が主要区間の1、3、5区候補だ。

伊澤は「新人も3人入ってチームの雰囲気が良くなって、昨年とは比べものにならないところを目指すチームになっている」と言う。復帰1年目の昨年も、キャプテンとしてチームをまとめようとしたが、「まずは自分が結果を出す」気持ちが強かった。今年は自身の昨年のレース経験、引退する前に苦しんでいた頃の気持ちなどを、積極的にメンバーに話すようになった。

「4月からプリンセス駅伝の優勝を目標にやってきました」と弘山監督。「三輪はフォームとスピードに課題はありますが、力を付けてきました。西川はケガで昨年は駅伝に出られませんでしたが、能力はすごく高い選手です。全日本実業団陸上5000mでは、自分で引っ張って15分台(15分56秒04)で走りました。チーム力は昨年より何段階もアップしています。伊澤という大砲がいて、1区か3区でトップに立つことができる。インターナショナル区間の4区でも、(ワングイ・エスター・)ワンブイ(22)が期待できます。西川たちがエースをどう生かすかを意識して、何をするか。そこができたとき優勝も手が届く目標になりますし、優勝できなかったときは自分たちが何をすべきかが明確になります」。

昨年はクイーンズ駅伝で最下位の24位だったスターツが、伊澤効果が浸透した今季は、プリンセス駅伝のトップ通過を目指すチームに変貌した。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は今年1月の大阪国際女子マラソンを走る伊澤選手

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