
宇都木乃愛(産業能率大)&森愛唯(トヨタ自動車)
ビーチバレー界のホープ「のあめい」インタビュー(前編)
宇都木乃愛と森愛唯――「のあめい」は、久々に現われたビーチバレー界のホープだ。
共栄学園高(東京)時代には高校ビーチの二冠、マドンナカップ(全日本ビーチバレーボール高校女子選手権大会)と国民体育大会(現国民スポーツ大会)を制覇。インドアでも春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)で日本一に輝いた。宇都木は春高の優秀選手賞にも選ばれたが、ふたりは次なる戦いの舞台としてビーチを選択。鳴り物入りでジャパンビーチバレーボールツアーにデビューした。
今年がルーキーシーズンとはいえ、すでに昨年にはU19日本代表に選ばれており、U19世界選手権大会で歴代最高の9位タイ。今年はU21日本代表に選ばれ、U21世界選手権大会を控えている。19歳になったふたりのプレーに期待が膨らむ――。
――高校を卒業して、本格的にビーチバレー選手としてのシーズンが始まりました。すぐに国内のトップツアーであるジャパンビーチバレーボールツアーにも出場。ルーキーとして半年が経ちましたが、ここまでの状況はいかがですか。
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森愛唯(以下、森)ジャパンツアーに出場すると、高校の時とは全然レベルが違って、とてもうまい選手たちのなかでプレーする経験ができ、いい環境に恵まれてよかったな、と思っています。その分、課題もたくさんありますが......。
宇都木乃愛(以下、宇都木)大きな大会に出させてもらって感謝しています。でも、春から環境が大きく変わって、練習時間もなかなか取れず、限られた時間のなかで、(森が言う)その課題を修正していくのが、正直追いついていません。もっと練習しないとツアーでは勝てないなぁと感じています。
――「のあめい」ペアとしては、ここまでジャパンツアー4大会(計5試合)に出場して1勝のみ。具体的にどのあたりが課題になっているのでしょうか。
森 ゲーム中、ここは点を取らなくてはいけないという場面で落としてしまったり、勢いをつけたいところで波に乗れなかったり、気持ちの部分が足りていなかったかなと思います。それに、練習ではできることが、試合ではいつもどおりにプレーができていません。試合日のもっと前、準備の段階からゲームに向かって緊張感、意識を高く持たなくてはいけないな、と思います。ツアー(常連)の選手たちとはレベルが違うので、どんどん食らいついていかないといけないんですけど、スキルや練習量が追いついていません。
宇都木 私も練習でできていることが、試合でできていないのは一緒です。特にスパイクを打つ時に「風を意識しろ」と言われていて、練習ではできるようになっているのですが、試合になるとなかなかできていません。
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――それでも、この半年の経験で得たものもあると思います。
宇都木(森)愛唯とのペアで負けた相手がいたのですが、次の大会では他の選手と組んでそのチームと対戦して勝つことができました。負けてめちゃくちゃ悔しかった気持ちを、うまく力に変えられて、それがよかった。それは、愛唯と一緒にプレーしていたからこそだと思います。高校の時からペアを組んで、今でも愛唯とプレーできているのはとてもうれしいことです。
森 春にトヨタ自動車のビーチバレー部に入って、高校の時よりも本格的にトレーニングができる環境になりました。それによって、体幹が安定してきてプレーの幅が広がり、前は(ディフェンスで)取れなかったボールも取れるようになりましたし、難しい体勢でもボールを上げられたり、打てたりできるようになったと思います。
――今シーズン「のあめい」ではなく、ふたりとも異なる選手と組む機会もありましたが、お互いにそれぞれのプレーを見て「変わったな」と思うところはありますか。
宇都木(他の選手と組んでから)愛唯と会うと、自分は成長できているかな? と思って、愛唯と自分を比べるんですけど、愛唯のほうが成長しているなと感じています。スパイクは高校の時より、すごくよくなっているし、サーブもとてもいいです。
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森 ありがとう(笑)。でも、それは(宇都木)乃愛のパス、トスがすごくよくなっているからです。練習のなかでもパス、トスがよくて、上げやすいし打ちやすいので、気持ちの面もよくなって、ゲームにつなげていけます。それに、乃愛は試合のなかでチームが乗っていけるプレーをしてくれるので、そういうところは「すごいな」と思っています。
――共栄学園高在学時はビーチとインドアを両立してプレー。卒業後はビーチのみに絞りました。インドアではなく、ビーチを選んだ理由を教えてください。
森 ビーチとインドアを両立してみようと考えたこともありました。でも、いろんな人に話を聞くと、ビーチ一本でやったほうが集中できるし、両立するよりも絞ったほうが、最終的に自分が得られるものは多いし、もっと成長できるよ、とアドバイスをもらったので、ビーチ一本でがんばってみようと思いました。
宇都木 私はもともとビーチが好きなのもあるし、自分は身長も低いので、大学へ行ってもインドアでは通用しないだろうと思っていました。高校2年生の時に進路相談があった際にも、「私は、大学ではビーチだけでいきます」と言いました。インドアで大学やSVリーグのクラブから声がかかったらどうする? と先生に聞かれましたが、「いえ、大丈夫です」と答えました(笑)。
――ふたりともビーチのなかでも身長が高いほうではありませんが(宇都木164cm、森171cm)、国内外を含めて背の高いチームと対戦するうえで、重要なポイントはどこにあると考えていますか。
宇都木 一番自信のあるもの、強いものを、自分のなかで持っていることです。私はスパイクの威力には自信がありますし、人に負けたくありません。なので、そこを一番に考えて毎日練習しています。
森 私はサーブを意識しています。サーブはひとりで点数が取れるプレーで、チームにとっても(サーブで点が取れれば)ラクですし、気持ちが乗ってきます。今はそのサーブが試合で通用するようにがんばっています。あと、チームメイトが打ちやすい、やりやすいプレーも意識しています。
――「のあめい」として、すでに昨年から国際大会、世代別の日本代表経験もあります。海外での試合はいかがですか。
宇都木 外国の選手は大きいですし、ハードヒットを常にしてきますが、海外の試合ではとても楽しくプレーできています。日本の選手のようにボールをコートに落としてくるゲームとは違うので、国内とは同じではないなと感じていますし、私は海外のビーチバレーのほうが好きなので、もっと海外で試合をしたいと思っています。ただ今は学校へ行って、もっと単位を取らないといけませんが(笑)。
森 海外の選手はスパイクが高いし強いので、日本の選手と違うのは確かです。それに比べると、日本選手のスパイクはそれほど強さはないかもしれませんが、それでも点数を取られてしまっているので......。もう少しボールの上げ方などを考えたり、工夫したりすれば、海外での経験をジャパンツアーでも生かせるようになるのかな、と思っています。とにかく、国内でも海外でも、私はもっと試合をしたいですね。自分はゲーム中の臨機応変なプレーが課題なので、試合勘を持つ意味でもゲームを重ねていきたいです。
――6月に行なわれた2025ビーチバレーボールU21アジア選手権大会では4位に入り、10月15日から行なわれるビーチバレーボールU21世界選手権大会(メキシコ)に出場します。
宇都木 チームとして難しい状況の時もあったのですが、それを乗り越えてきたので、このまま世界選手権まで上昇していけると思っています。周りから注目されるのも、期待されるのもすごくうれしいですし、自分ががんばれるモチベーションになっています。
森 アジアなど海外の試合では調子がよかったのですが、ジャパンツアーではなかなか勝てなくて......。それで、ちょっと不安になりそうな時期もありましたし、現に課題はたくさんありますから、(世界選手権までに)少しでもスキルや技を増やして臨みたいです。(大会を迎えれば)いい意味で緊張感のある試合ができると思いますし、監督、コーチや関係者、いろいろな方のサポートを受けて、多くの方々に応援してもらっているので、その人たちに少しでも恩返しができればいいなと思っています。
――昨年のU19世界選手権は9位でしたが、今回のU21世界選手権に向けての目標はありますか。
宇都木 自分の100%を試合で出したいと思っていますが、それは簡単にはできません。だから、自分のできることを少しでも増やしていきたい。それで、試合のなかで自分にスイッチを入れて、愛唯とコミュニケーションを取りながら、自分たちのプレーを100%にできるようにしたいなと思っています。
森 私は調子のいい時と悪い時の差があって、プレーに波があるので、それを少しでも一定にして大会まで持っていけたらいいなと思っています。具体的な目標としては、メダルはほしいよねぇ?
宇都木 ほしいねぇ〜。アジア選手権の時は(3位決定戦で敗れて)4位でめちゃくちゃ悔しかったからね。海外でメダルを獲ることは、とても大きいなことだから、その目標はぶらさずにいこうね!
(つづく)◆ビーチバレー界のホープ「のあめい」が振り返る共栄学園時代>>
宇都木乃愛(うつぎ・のあ)
2006年9月11日生まれ。共栄学園高卒業後、産業能率大に進学。高校3年時の春高バレーで優勝。優秀選手賞に選出される。身長164cm。
森愛唯(もり・めい)
2006年5月8日生まれ。共栄学園高卒業後、トヨタ自動車ビーチバレーボール部入り。高校3年時に春高バレー優勝。身長171cm。