写真株価が上がるでも下がるでもなく、なんとなく横ばいのまま…。「動きが鈍くなってきた」「次はどっちに動くんだろう」と、もみあい相場の中で判断に迷うことはないだろうか。
上昇トレンドが一服し、方向感を失っているときこそ、チャートを冷静に観察することが大切だ。
今回は、『「1問1答」で身につく!株チャートドリル』などの著書を持ち、マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長で投資教育を行う福島理さんに、実際のチャートを例に、「上にも下にも動かない相場」で次の動きを読むためのポイントを教えてもらった。
◆方向感のない相場。この後どうなる?
まず、実際のチャートを見て、この後上昇するか 下落するか(「売り」か「買い」か)、考えてみてください。
2021年後半以降、日経平均株価は方向感のないもみあい相場となっています。また、2013年からの長期上昇トレンド中に起きたもみあい相場です。
このもみあい相場のポイントは、レンジ相場のように株価が一定の値幅の中で推移する状態ではなく、株価が上下しながらも横ばいの動きを続けるなかで、その上下の動きがだんだん小さくなっていき、チャートの形が三角形のようになっています。
これは、投資家間で次の方向性が定まっていない場合などに、しばらくの間売りと買いが均衡して値動きが収束していることを示します。
◆「三角保ち合い」はどちらかに大きく動くサイン
この問題の答えは、「買い」です。
チャートの形が三角形のように、だんだんと株価が動かなくなって、上がりもせず下がりもせず収束している状態を「三角保ち合い(トライアングルフォーメーション)」と言います。
チャートを見ると高値は少しずつ切り下がっており、安値は少しずつ切り上がっています。そして、高値と高値、安値と安値でつないだ線が三角形のように見えるため、「三角保ち合い」と呼ばれています。
これは「買いたい人」と「売りたい人」が拮きっこう抗している状態であり、お互い様子見をしていて、相場にとてつもない“力”が溜まっている状況です。
そして、この状況から解放されると、溜まっている“力”が一気に上か下に放たれます。投資家は、「三角保ち合い」が発生すると、そろそろどちらかに大きく動くのではないかと注目するのです。
上値の抵抗線を明確に上に抜けたときは買いサインで、下値の支持線を下に抜けたときは売りサインとみなします。特に出来高(取引量)が増えていると、より信頼度が高まります。
◆「三角保ち合い」の3つのパターン
「三角保ち合い」には大きく3つのパターンがあります。
(1)強気の三角保ち合い(上昇型)
ラインを引いたとき、だんだんと下値が切り上がっている形の三角保ち合いが「強気の三角保ち合い」です。
株価が上昇・下落を繰り返すなかで、投資家が前回の安値まで株価が下落するのを待てずに買いを入れてくるため安値が切り上がっています。
このチャートが現れるのは、「この先、株価は上がる!」という先高感が強く、投資家が強気になっているときです。つまり、どこかで上値をブレイクして上昇する確率が高くなります。
(2)弱気の三角保ち合い(下降型)
(1)の反対で、ラインを引いたとき、だんだんと上値が切り下がっている形の三角保ち合いが「弱気の三角保ち合い」です。
下値は一定で底堅く維持しているものの、上昇に戻る力が弱いため、「前回の高値まで上昇しないだろうから、早めに売っておこう」と徐々に注意を払う投資家が増えているケースです。
その後、底堅いと思われていた下値の支持線(サポートライン)を割って均衡が破られると投資家は一斉にロスカットを行ったり、新規売りを行う参加者も多くなり、さらに大きく下落していきやすくなったりします。
(3)均衡している三角保ち合い
「均衡している三角保ち合い」は、高値が少しずつ下がり、同時に安値が少しずつ上がることで値動きの幅がだんだん狭くなり、比較的きれいな三角形の形になっている状態を指します。
この状態では、「これから株価が上がる」と考える投資家と、「これから株価が下がる」と考える投資家が拮抗しているため、三角形の先端に近づくまでは、上がるか下がるかはわかりません。
戦略としては、上下どちらかに株価が抜けた(ブレイクした)タイミングが売買のチャンスになります。
株式相場で「三角保ち合い」のように、買いと売りの力が拮抗して動きが止まっている最中では、無理に手を出さずに、様子を見るのが鉄則です。
どちらが優勢になるかがはっきりした瞬間、つまり上に抜けるか、下に抜けるかが明確になったときこそ、その流れに乗って利益を狙うチャンスです!
『「1問1答」で身につく!株チャートドリル』では、株チャートの基礎から応用までを実際のチャートを使ったドリル形式で学べます。ローソク足や移動平均線などの基本的な見方に加え、MACDやRSIといった主要なテクニカル指標の活用法、複数指標の組み合わせ方まで網羅。問題を解きながら理解が定着し、売買の判断力を高めることができます。
【福島 理】
(ふくしま・ただし)マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長。日本テクニカルアナリスト協会国際認定テクニカルアナリスト。金融リテラシー向上のための教育活動に従事。テレビ、ラジオのほか、雑誌やWebでコラムを執筆。著書に『1時間でマスター!マンガと図解でわかる 新NISAの教科書』(扶桑社)、『勝ってる投資家はみんな知っている チャート分析』シリーズ(扶桑社)がある。