※AI生成画像を使用しています 聞いたことはあるけれど、自分には関係ない。「あおり運転」による被害について、そう感じている人もいるのではないでしょうか?
今回は、子どもを乗せた運転中にあおられ、地獄のような思いをしたという女性から話を聞きました。
◆いよいよ夏休み!5歳の娘と実家へ
都内在住の加賀亜美さん(仮名・33歳)は5歳の女の子の母。夏休みは仕事で忙しい夫を残して、少し離れた実家に顔を出す日も多いそうです。
「夫の休みは、お盆時期だけなんですよ。娘の幼稚園は夏休みの預かりがないので、正直、毎日がとても長くて。私の実家は高速を使って45分ですが、2人で家にいるよりも楽しく過ごせるかなと、夏休みは週に2回ほど帰っていました」
高速代金は往復で4000円ほど。それでも実家に帰って、両親と孫の会話を聞くのが亜美さんの癒しの時間でもあるんだとか。
◆暗い中での初めての高速運転
普段は明るいうちに帰宅する亜美さん。たまたま、暗い時間に帰る日がありました。
「あの日は、実家の近くでお祭りがあって、いつもより帰宅が遅くなりました。久しぶりに会う地元の友達も何人かいて、早く帰らなきゃと思いながらも話が盛り上がってしまって」
お祭りが終わって、実家を出発したのが21時。普段、明るい時間にしか運転しない亜美さんにとって夜道の運転は、かなり怖かったのだそう。
「夜の運転は相当苦手ですね。暗いと、周りが見えにくいし、間違えてどこかにぶつかっちゃうんじゃないかって、緊張で手汗をかいてしまって」
◆高速の運転中にあおられる
高速道路は車が流れていて、亜美さんは左車線に入ってゆっくりと運転していました。「時速80キロくらいですかね。急ぐよりも安全が一番だと思って」と話す亜美さん。
しかし、亜美さんが実家を出て30分ほど運転し、徐々に家に近づいてきたとき、事件は起こります。
「バックミラーに、やけに車間距離を詰めてくる黒のワンボックスカーが見えました。最初は気のせいかと思ったんですけど。すぐ後ろについたかと思ったら、ピカピカとヘッドライトを当ててきて」
助手席では、遊び疲れた娘がすやすやと寝息を立てていたそうです。
「あおるような感じで、車間距離はどんどん短くなるし、高速運転中だし本当に怖かったです」
亜美さんは、助手席の娘を起こさないよう、慎重に、でも急いでスピードを上げたんだそう。しかし、後ろの車も同じように加速してきます。
◆高速をおりてからもつけてくる黒のワンボックスカー
高速を降りた亜美さんは、いつもの帰り道ではない裏道を選び、細い路地へ入っていきます。どうにか、後ろの車との距離を取りたいと判断した亜美さん。
「それでも、黒のワンボックスカーは私の後ろにピッタリとついたままでした。もう、手汗もびっしょりで、とにかく逃げなくちゃと必死に運転しましたね」
しかし、どんなに逃げても、黒のワンボックスカーはついてきます。亜美さんは、恐怖を感じながら、震える手でハンドルを握っていたそう。
「怖くて夫に電話しようと思っても、運転中だし、子どもを守らなきゃと泣きそうでしたね」
◆ついに!信号が赤になって出てきたのは
そして、ついに赤信号につかまります。
ピッタリとついてきた後ろの車のドアが開いたかと思うと、いかつい体格の男性が降りてきたんだとか。
「生まれて初めて、血の気が引くという感覚がわかりましたね。心臓が喉まで飛び出してきそうでしたよ」
運転席から降りてきた男性は、ゆっくりと歩いてきて、亜美さんの車へと向かってきます。
そして、運転席の窓の隣に立ち、こちらを覗き込んだそう。
◆いかつい男の言葉に涙
亜美さんは、震える手でほんの少しだけ窓を開けると、いかつい男はこう言ったそう。
「お姉さん、後ろのライト、一つ切れてるよ」
「え…?」思わず亜美さんは声を出してしまったそう。
あおり運転をしてきたその男性は、まるで親しい隣人のように、にっこりと笑っていました。
「男性の笑顔を見た瞬間、身体中の力が抜けました。ものすごい勢いで追いかけてくるから、怖い人に何かされると思っていたので」
感情の渦に巻き込まれた亜美さん。助手席で眠った娘の顔を見て、涙が溢れたそうです。
男性にとっては注意喚起のつもりでも、追いかけられる側には恐怖と危険しかありません。せっかくの善意も、相手への想像力が欠けていたら加害と紙一重になってしまうことがわかるエピソードでした。
<取材・文/maki>