
NPBのペナントレースが終わり、シーズン記録も確定しましたが、その中で私の目を引いたのがヤクルトの捕手・古賀優太選手の5割ちょうどという盗塁阻止率でした。
先日、NPBがリリースしたプロ野球のデータを満載したアプリ「NPB+(プラス)」によると、古賀選手の最高送球速度は137.8キロでした。盗塁阻止率セ・リーグ2位(.419)の巨人・岸田行倫選手が128.3キロ。パ・リーグトップの楽天・太田光選手(.383)が132.3キロ。盗塁を防ぐのは投手と捕手の共同作業ですから一概には言えませんが、古賀選手の数字はダントツでした。
盗塁阻止率5割という数字がどれだけすごいかというと、これまで達成したのはわずか11人しかいませんでした。最近だと阪神の小宮山慎二さんが記録していますが、2012年の記録ですから13年前になります。
歴代最高記録は1993年の古田敦也さん。なんと.644を記録していて、1/3しか盗塁を許していないことになります。
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記録達成者にはセ・リーグの捕手が多いですが、パ・リーグが指名打者制度を採用していることも影響しているかもしれません。走力に長けた選手が9番に入ることもあるため、そのぶん阻止率が下がることもあるのでしょう。
近年、MLBでは盗塁阻止率が下がっています。ホームランでドーンとランナーを還すことがより評価されるMLBでは、盗塁はそこまで重視されるものではなかったかもしれません。
しかし近年、スモールベースボールが見直され、強力な打線を持たなくとも、足でかき乱して勝利を重ねるチームが上位に名を連ねるようになりました。かつて岩村明憲さんもプレーしていたレイズはスモールベースボールを得意としていて、ヒットも四球も同じように評価されたそうです。
イチローさんがMLB殿堂入りの会見で、「頭を使わなきゃできない、考える野球」をしているブルワーズが今一番強いチーム、と発言しました。野球というスポーツの面白さが、ホームランなど長打だけでなく、足も含めた細かな戦術にもあることを示唆していました。
近年は野手でも、代走を中心に活躍する選手もいるなど分業制がはっきりしてきています。それでも、MLBではロナルド・アクーニャ・ジュニア選手や大谷翔平選手のように、盗塁もあるし長打もあるという選手も増えました。彼らは打席にいても塁上にいても目が離せませんから、人気が高いのもうなずけますね。
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これからは、さらに盗塁の価値が見直されるでしょうし、それと同じくらい、捕手の盗塁阻止率も重視されるはずです。「最高の牽制は投げないこと」とは、ロッテのエースとして活躍した黒木知宏さんの言葉です。投手の牽制のうまさと同じように、捕手も盗塁阻止率が高いことが、そもそもランナーに盗塁をさせないという抑止力になります。
野球は基本、投手と打者との勝負ですが、そこに捕手と走者が加わることでよりエキサイティングになります。盗塁をめぐる熱い戦いは、野球の魅力を高めてくれる。古賀選手の強肩は広く知れわたったはずですから、来季は相手チームの対策も含めて、より盛り上がることでしょう。
あらためて盗塁阻止率5割の達成者を見ると。先ほどの古田さんのほかにも大矢明彦さん、梨田昌孝さん、田淵幸一さん、城島健司さんなど、誰もが名前を知っているレジェンドばかり。そこに古賀選手も名を連ねたことは素晴らしいのひと言です。来季から選手会長を務めるという発表もありましたし、球史に残る偉大な捕手への飛躍の年にしてほしいものですね。
来季もコンマ数秒をめぐる熱い戦いに期待です。それでは、また来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
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