
前編:SVリーグ2年目、新天地でスタートを切る注目選手たち
2024年の秋からバレーボールの国内リーグが生まれ変わり、SVリーグとしてスタートを切ってから2回目のシーズン開幕を迎える。
2023年には、2030年までに「世界最高峰のバレーボールリーグ」へと成長するためさまざまな計画が発表されていたが、そのなかのひとつが選手のプロ化だ。来年度より、各クラブに所属する選手の"過半数がプロ契約選手であること"が必須条件となっているのだ。
これまでは各チームの親会社の社員として採用される選手が多かったが、プロ化で単数年契約を交わすことにより、移籍も活発になることが予測される。すでに今シーズンから、多くの有名選手が移籍してファンを驚かせている。前編、後編の2回に分けて、注目の4選手を紹介したい。
まず、サントリーサンバーズ大阪から日本製鉄堺ブレイザーズへ移籍したセッターの大宅真樹である。
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大宅はサントリー時代、Vリーグで最優秀選手賞にも輝いたことがある司令塔だ。今年は日本代表のセッターとして、バレーボールネーションズリーグや世界選手権に出場した。
移籍の理由を尋ねられると、「それに関しては、答えることはやめておきます」と口をつぐんだ。ただし今年6月、日本代表の主戦セッターである関田誠大がジェイテクトSTINGS愛知からサントリーへの移籍を発表。それ以前から、関田のサントリー移籍の噂が国内外のファンの間で広まっていたことを考えると、出場機会を求めての決断と受け止めてもいいだろう。
日鉄堺BZの北島武監督は言う。
「昨シーズンも含めて、セッターのポジションについては非常に苦労してきました。大宅はクイック、パイプなど(コートの)真ん中を使う力のあるセッターです。ペイチャン(蔡沛彰)、渡邉晃瑠など攻撃力の高いミドルブロッカーがいるので、そこの攻撃力をもう一度、チームとして取り戻したいと大宅には話しました。中央の攻撃が武器になれば、さらによい展開で試合を進めることができると期待しています」
下部リーグの富士通から移籍した江藤巧と、今年度から内定選手として加入していた中西健裕という若いセッターのみだったチームにとって、豊富な経験と発想力を持つ大宅の加入は極めて大きい。これまでは蔡や渡邉の高いポテンシャルを生かしきれていない試合が多かったのも事実だ。コート中央を使ったトスワークを得意とする大宅は、持ち味をいかんなく発揮できるチームに移籍したとも言える。
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【「僕は他のセッターを助けたいし、自分が助けてほしいとも思っている」】
大宅は語る。
「移籍後、特にセッターの2名とは、僕のほうからいろいろとコミュニケーションを取るようにしています。同じチームにいるセッターは、ポジションを争うライバルだけど、助けてくれる存在でもあると僕は常々思っています。(ライバル視して)バチバチするのも、それはそれでいいと思うけど、僕は他のセッターを助けたいし、自分が助けてほしいとも思っている。彼らとの会話のなかから、それを感じてもらえれば」
特に中西からは、すでに様々な質問をぶつけられているとうれしそうに明かした。
「僕に教えられることは全部教えたいです。セッター3名のそれぞれがよさを出しながら、堺というチームを強くしたいと思っています」
大宅が気を配る理由はもうひとつある。
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「(自分が)日本代表選手ということで、もし僕が逆の立場だったら、委縮してしまうと思います。以前、代表選手がチームに戻ってきたときに、変に意識して上に見てしまう経験があったし、ブレイザーズの練習に参加したばかりの頃は『気を遣われているな』と思うこともたくさんあった。そこは僕からなくしていって、フラットに、チームメイトだと思ってもらいたいです」
日鉄堺BZは大宅という新司令塔を獲得し、昨シーズンに叶わなかったチャンピオンシップ進出を目指す。
もうひとりの代表セッターである永露元稀も今シーズンから違うチームでアタッカーを操る。5月27日に大阪ブルテオンから広島サンダーズへの移籍を発表した。
永露は語る。
「移籍の決め手の一つは監督さんの存在です。(カルロス・ハビエル・ウェベル)監督が僕についてよく研究し、プレーを見てくれていて、以前からたくさんアドバイスをしてくれました。敵であり、まだ移籍の話などまったく出ていない時期から『とにかく君に上達してほしいから』と DMをくれたり、リーグ中でもちょっとしたプレーのアドバイスをしてくれて、すごく熱意のある監督だなと感じていました」
【現役時代に五輪で銅メダルを手にした監督から情熱的な指導を】
ウェベル監督は現役時代、アルゼンチン代表でセッターとして活躍し、1998年ソウル五輪で銅メダルを獲得。現役引退後は指導者となり、アルゼンチンのプロリーグで6度の優勝を経験している。アルゼンチン代表監督を務めた2012年にはロンドン五輪に出場し、近年はアメリカ男子代表のコーチを務めていた。
諸外国で高身長セッターの育成に手腕を発揮していたウェベル監督が、永露の伸びしろの大きさに目を留めたのだ。
「ファーストテンポのトスの出し方やトスのスピード感、ライトに上げる際のフォームなどを指摘してもらいました。先日も『10分ぐらいミーティングする』とおっしゃっていたんですけど、結局は1時間半、バレーボールのシステムの話をしていました。それぐらいいろいろなことを考えて、バレーボールに情熱を持っている監督です」
ウェベル監督のもと、さらにトスワークに磨きをかける永露のプレーが楽しみだ。
後編>>>"変人速攻"を身上とする村山豪は東京GBへ、44歳のレジェンド・松本慶彦は地元へ帰還



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