詩人・大崎清夏のエッセイ集『いいことばかりは続かないとしても』が2025年10月22日に河出書房新社より発売された。
【画像】大崎清夏のエッセイ『いいことばかりは続かないとしても』詳細
大崎清夏は、詩集『暗闇に手をひらく』(リトルモア)で第33回萩原朔太郎賞を受賞したばかり。今回の作品は、受賞後初の書籍となる。
本作は、詩人としてだけでなく、旅や映画、美術など幅広い分野で言葉を紡いできた著者の、10年以上にわたる思索と日常を記録した一冊。熊のいる山奥、湘南の海辺、震災後の能登半島、ヴェネチアなど、現実と想像の間を行き来しながら綴られるエッセイには、「詩人が世界をどう見つめ、どう希望を見出していくのか」という視点が貫かれている。
タイトルにもなっている「いいことばかりは続かないとしても」という言葉には、現実を受け止めながらも前を向く姿勢が表れている。本文では「どんなに事態が悪化したように見えるときでも、そこに新しく面白いことを見つけることはできる」と語られ、困難の中でも生きる希望を見出す、大崎ならではの軽やかな哲学がにじむ。
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本書には、詩や旅、動物、文学、映画など、多彩なテーマの文章が収録されている。ミヒャエル・エンデ『モモ』やウェス・アンダーソン作品への言及、『燃ゆる女の肖像』『パターソン』など、映画を通して“生きる詩”を描き出すエッセイも多い。
湘南から奥会津へと拠点を移した著者が、日々の暮らしの中で見つけた“言葉の手触り”を記した本書は、詩の読者のみならず、言葉や表現の在り方に関心をもつ人にとっても興味深い一冊となっている。
■本作に登場する場所
熊のいる山奥・湘南の海辺・震災後の能登半島・ハンセン病資料館・豊田市美術館・ヴェネチア、そして古今の文学と映画と芸術の中etc.
「いいことばかりは続かないとしても、あくまでも軽妙に、明るく、希望をもって。(…)どんなに事態が悪化したように見えるときでも、そこに新しく面白いことを見つけることはできる。その先に待ち受ける大仕事にとりかかることはできる。無限の可能性を持った子どもにもう戻れない私たちは、大人として世界を拓けばいい。英語が話せなければ、日本語で語りかければいい。崇高な野生動物になれないなら、人間という変な動物として、生き延びる道を探ればいいのだ。」(本文より)
■『いいことばかりは続かないとしても』もくじ
熊に会ったら歌うこと。
遠くにトナカイがいます
ちゃんと知りながら、へんなことをやる ムーミンの世界のこと
何かをほんとうに聞くときには…… ミヒャエル・エンデ『モモ』のこと
いいことばかりは続かないとしても ウェス・アンダーソンの動物たち
動物と知り合うヒト 岩合光昭さんの写真のこと
港はありません
その家に、住んでいた
どうぞゆっくり見てください もうひとつの地震日記
快楽主義者の詩学 谷川俊太郎さんのこと
いつか眼差しが再び会うまで 『燃ゆる女の肖像』のこと
詩人の副業、詩の日常 『パターソン』のこと
存在しない故郷への旅 『ミリオンダラー・ベイビー』のこと
説明できない理想のために…… 『木のぼり男爵』のこと
それはあなたの自由 『さらば、愛の言葉よ』のこと
雪と踊る方法、あるいは訪れの合図 映画『Shari』のこと
大志の歌の祭りに寄せて 安野みつまさ先生へ
池上上々日記
その心は優しかった。 『いのちの芽』の詩人たちと出会った日のこと
中也はポエムか 大衆との合作について
風の展示を見にいく
自然を浴びに、ヴェネチアへ行く
■著者 大崎清夏(おおさき・さやか)
1982年神奈川県生まれ。2011年、第一詩集『地面』刊行。詩集『指差すことができない』で中原中也賞、『暗闇に手をひらく』で萩原朔太郎賞受賞。ほか著書に『踊る自由』『目をあけてごらん、離陸するから』『私運転日記』『湖まで』など。2025年春より、拠点を神奈川・湘南の海辺から福島・奥会津の山あいに移し、執筆活動を続けている。
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(文=リアルサウンド ブック編集部)
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