
この記事は伊藤羊一(著)、 清水めりぃ(マンガ)の書籍『マンガですぐ読める 1分で話せ』(SBクリエイティブ、2023年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
ロジカルに話す基本ができていれば、相手はあなたが伝えたいストーリーや、その骨子を理解しやすくなります。「主張はこれです」「根拠はこれです」と順を追って説明していれば、当然、相手には分かりやすくなります。
しかし「分かりやすく話せばいいのか」というと、それだけでは足りないこともあります。自分を振り返ってみて、「分かりやすい」「ロジカルである」だけで、動いたことはあるでしょうか?
きっと、そうではないですよね。
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もちろん、ロジカルに考えられたストーリーがないと、聞き手はあなたの言うことを理解できません。しかし、ロジカルに正しいことを聞いて理解するだけでは、人は動きません。
●ロジカルに説明するだけでは、人は動かない
例えば、あなたがマンションを買う時のことを考えてみてください。
販売員から、「都心から近く、さらに駅からも近くて閑静な住宅街にあるんですよ」と言われ、「それは通勤にも便利でいいな」と思ったとします。販売員はさらに続けます。
「間取りは、夫婦で小さな子ども1人という家族にうってつけの造りです」
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「うん、これは住みやすそうだ」
「値段は◎千万円です」
「なるほど、これなら賃貸よりもいいな……」
条件は合いそうです。でも、条件が合うというだけでマンションを購入するかということです。マンションほどでなくとも、ある程度高価なものは、もう一歩、えいやと踏み出す何かが必要でしょう。
●「イメージ」が湧いて、初めて人は動く
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ロジカルに話した後、相手に踏み出してもらうためのもう一歩をどう作っていけばいいでしょうか。
それは、「頭の中に生まれたイメージ」です。
先ほどのマンションの例で言えば、
・自分自身が朝、余裕を持ってゆったりとした気持ちで、駅に向かうイメージ
・奥さんが子どもと、部屋の中で楽しく過ごしているイメージ
・週末は近くのジムや公園で体を動かしたり、子どもとキャッチボールをしていたりするイメージ
・共通の友達を呼んで、みんなで談笑しているイメージ……
こうしたイメージが頭の中に生まれてきて、「ああ、このマンション、買いたいな」と思っていきます。
では、このイメージは、どのように聞き手に生まれてくるのか。まずは、ちゃんとロジカルに事実を認識してもらう必要があります。
聞き手が、「つまり、駅からマンションへの道のりはこんな感じか」「近所にジムや公園があるんだ」「部屋はこんな間取りか」「防音がしっかりしているな」ということを認識したうえで、そこに自分を当てはめて考えるようになるかどうかです。
そこができれば、もう後は、聞き手の頭の中でどんどん想像が膨らんでいきます。伝える側は、その想像が広がるのをサポートすればいいのです。
●聞き手のイメージを広げるために
では、どうしたら自分に当てはめて考えてもらえるか。それには、2つのアプローチがあります。
1つ目は、当たり前ですが、具体的にイメージしてもらうために「ビジュアルを見せる」ということです。写真や絵、動画など、使えるものはどんどん使いましょう。ただし、関係ない写真や絵を入れてしまうと、逆にノイズになって理解を妨げるのでやめましょう。
もう1つ、ビジュアルで説明できるものがない場合は、言葉で、聞き手にイメージを湧かせる必要があります。その時使えるのが「例えば」という言葉です。
マンガのキヨシくんの例で考えてみましょう。
「私は、自分が勤めている会社が大好きです。理由は3つあります。1点目は、社食がおいしいから、2点めは仕事が楽しいから、3点めはチャレンジをさせてくれるからです」
これだけで、理解はできます。聞いている人が、「話し手は、こういうことを言いたいんだな」という枠組みを作ることができるからです。
ただ、これではイメージは湧きません。ですから、聞き手にイメージを湧かせるために「例えば、〜です」と言って補足するのです。
具体例を挙げると、次のような感じです。
「1点目は、社食がおいしいからです。例えば、カツカレーはその場で揚げたてのカツの上に30種のスパイスを混ぜた特製のカレーがたっぷりかけられますし、親子丼は比内地鶏を使ったジューシーな鶏肉と、ふわっとした卵が熱々のご飯の上にのっていて、何杯食べても飽きません」
などと言われると、「確かにそれだけのこだわりのある社食なら、毎日会社に行きたくなるのも分かる」と理解してもらえそうです。
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