放射性物質残った除染土が省庁の花壇や官邸で再利用…今後は全国に普及する可能性も

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2025年10月24日 06:10  web女性自身

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9月14日、環境省は、福島第一原発事故で放射能汚染された土を除染して出た“除染土”の一部を霞が関に運び込んだ。中央省庁計9カ所の花壇や盛り土に使うほか、今後、霞が関以外の中央官庁の庁舎などでも使用するという。



さらに、浅尾慶一郎環境大臣(61)は、除染土の名称を“復興再生土”に変更すると発表。今後、全国の公共工事で再利用を進めることへの理解を国民に求めた。



「いくら名称を変更しても、放射能汚染された土であることに変わりはありません」



そう警鐘を鳴らすのは、原子力市民委員会の座長の大島堅一さん(龍谷大学・政策学部教授)。



政府が名称を変えてまで、再利用を進める意図を、こう解説する。



「これまで除染で出た土は、東京ドーム約11個分(約1千400万立方メートル)もあり、現在は中間貯蔵施設(福島県大熊町・双葉町)で保管されています。これらの除染土は2045年までに福島県外で最終処分すると法で定められていますが、処分地の選定や運搬には困難が伴うため、政府としては今のうちに少しでも量を減らしておきたい。そこで考えたのが、公共事業などでの“再利用”なんです」



場所の選定にも理由がある。



「環境省はこれまで、福島県内をはじめ、新宿御苑や所沢市(埼玉県)など数カ所で、除染土を盛り土に用いる実証事業を計画しました。しかし、いずれも近隣住民の反対で頓挫しています。反対を避けるために省庁から再利用を始めたのでしょう」(大島さん)





■“再利用”の名のもとに市中で“最終処分”を



今後、全国にこの流れが波及していく可能性が高い。本誌が環境省に取材するとこんな回答が。



「中央官庁等で再利用を進めたのち、国民の理解醸成を踏まえて、公共利用での先例を作っていく」



また、公共事業に使われる場合、事前に近隣住民に知らせるのか、という問いに対しては、「それぞれの場所に応じて適切に考えていく」と回答。つまり、あなたの街にある官公庁の関連施設や、市役所などの公共施設で、除染土が知らぬ間に使用される可能性がある。



現在、中間貯蔵施設で保管されている約1千400万立方mのうち、約4分の3が8000ベクレル以下だという。



「環境省の新基準では、そのほとんどが再利用可能となります。本来は最終処分場で保管されるべき除染土のほとんどを“再利用”という名のもと市中で“最終処分”するつもりでは」(大島さん)



問題は、土に含まれる放射性物質だが、再利用を可能にするための“まやかし”があるという。



「環境省は原発事故のあと、特措法に基づく省令で、1キログラムあたり8000ベクレル以下の土は再利用できるという新基準を作りました。しかし一方で、原子炉の設置や運転に関する規制を定めた原子炉等規制法では、安全に再利用できる基準は1キログラムあたり“100ベクレル以下”と定めています。あきらかに矛盾があるのです」(大島さん)



つまり、80倍も基準を緩めたわけだが、環境省は「100ベクレルは制約のない自由な流通を認める基準。8000ベクレルは、法の下で管理しながら再利用する基準。前提が異なるので問題ない」と回答。



これに疑問を呈すのは、原子力市民委員会の委員で環境計画が専門の後藤忍さん(福島大学教授)。



「過去に環境省は、1キログラムあたり8000ベクレルの除染土が、制限なく再利用できる基準の“100ベクレル”以下になるまでには約190年かかる、と試算しています。土木工事等の資材として再利用した場合、190年間も安全に管理・モニタリングできる可能性は低いでしょう」





■セシウムボールは体内にとどまりやすい



こうした点に加えて、さらに懸念されるのが、除染土に含まれる 不溶性放射性微粒子、別名“セシウムボール”の存在だ。



セシウムボールとは、原子炉の水素爆発によって放出された、セシウムをはじめとするさまざまな放射性物質が、コンクリートと結合してできたガラス状の微粒子だ。呼吸で肺に入る数ミクロンのものや、1微粒子で何百万ベクレルの高い放射線を発しているセシウムボールも見つかっている。



「放射性セシウムは水に溶けやすいため、体内に取り込んでも、血液や体液に溶けて体外に排出されるので、体内で半分になる時間が大人で90日、幼児で9日と試算されていました。



しかし、セシウムボールは水に溶けにくく、吸い込んだ微粒子が肺に吸着すると、体内で半分になるまでの時間は数十年になる、と九州大学大学院准教授の宇都宮聡さんらが指摘しています」



そう懸念を示すのは、数々の原発関連訴訟に関わり、被ばく問題に詳しい弁護士の井戸謙一さん。



「セシウムボールは、従来の放射性セシウムに比べて大人で約70倍、幼児で約180倍も被ばく量は大きくなる、と述べている専門家もいます。つまり、それだけがんになりやすいということです」(井戸さん)



除染土の多くに、セシウムボールが含まれている可能性がある。



「原発事故後、県内の土壌に含まれる放射性セシウムのうち、水に溶けにくいセシウムボールが占める割合は約5割であることが、数々の専門家の調査によって明らかになっています」(井戸さん)



埋め立て現場への運搬中や作業中に舞い上がったほこりを住民が吸い込む恐れは十分にある。



環境省に懸念を示すと、「国際的な最新の知見に基づいて内部被ばくを評価しており、吸い込んだ場合でも基準以下に収まる」と回答。



しかし、前出の大島さんと記者が根拠となる環境省の資料を確認したところ、セシウムボールのような局所的高線量微粒子については評価されていなかった。



「そもそも、再利用を進める環境省みずからが新基準を作って『この数値で安全です』と言って事業を進める構造に問題があります。日本の原子力規制委員会のような独立した規制当局による最終的な評価と承認が必要です」(大島さん)



まずは、こうしたリスクを国民にしっかり説明したうえで議論をしなおすべきだろう。

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