6月12日、東京・新宿の路上を歩く人たち(AFP時事) 連合が2026年春闘で、3年連続で「5%以上」の高水準の賃上げを求めるのは、物価上昇分を差し引いた実質賃金が依然低迷していることが背景にある。25年まで2年連続で5%台の賃上げを実現したものの、実質賃金はマイナスが続き、生活実感は乏しいままだ。21日発足した新政権は企業の賃上げ支援を強化する方針で、中小企業に賃上げの勢いが波及するかが最大の焦点となる。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、名目賃金は増加傾向にあるものの、実質賃金は8月まで8カ月連続で前年同月比マイナス。物価高に賃金上昇が追い付かず、個人消費は低迷が続く。
ポイントになるのが、大手と中小企業の賃金格差の縮小。連合は25年春闘で、中小労働組合の賃上げ目標を「6%以上」としたが、賃上げ率は4.65%と、全体(5.25%)も下回った。原材料費や労務費が高騰する一方、製品やサービスへの価格転嫁が十分進まなかったことが要因だ。
連合は26年春闘でも「6%以上」の目標を維持。コスト上昇に見合った適正な価格交渉を促すため、発注者が一方的に支払代金を決めることを禁止する改正下請法の周知にも力を入れる。
城内実経済財政担当相は22日の就任記者会見で、「賃上げを持続可能な流れとするため、中小企業の価格転嫁支援などが必要だ」と述べ、環境整備に取り組む考えを示した。経営側の理解も進みつつあり、「環境は良い」(産業別労働組合幹部)との声もある。
ただ、トランプ米政権の高関税政策による企業業績の下押しリスクは払拭されていない。物価上昇を上回る賃上げが実現するか、正念場を迎える。