赤字続きの出前館と「2期連続増収、黒字」ウーバーイーツ、どこで差が付いたのか ウーバーだけが一人勝ちを続けられる理由

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2025年10月25日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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競合と比較して苦戦している出前館(出所:同社公式Webサイト)

 出前館が苦戦している。2025年8月期は売上高397億円と、前年の504億円から約2割の減収となった。営業損失は49.2億円で前年と同じく赤字。最終損失は前年から10億円以上膨らみ、49.7億円である。


【画像】苦戦する出前館の業績


 売上高は2年連続の減収であり、同社は苦戦の背景にフードデリバリー市場の成長が一服したことを挙げている。一因としては、実店舗よりも価格が高い点があるという。一方で競合のUber Eats Japanは2024年度に2ケタ成長を達成し、黒字化を達成している。なぜ出前館は著しく苦戦しているのか、その背景を探っていく。


●すでに成長のピークを過ぎてしまったのか?


 コロナ禍では中食需要の拡大や外出自粛によりフードデリバリー市場の規模が伸長。それに伴って出前館の売上高も急激に伸びた。ピーク時の2023年8月期はコロナ禍前の7倍超まで拡大している。


 赤字が続いているが、そのこと自体は必ずしも悪いわけではない。ECやフードデリバリーのように競合間でのサービスが画一的で、対応店舗数などの規模がモノをいう業界では「勝者総取り」になりがちだ。そのため、ある程度のシェアを広げるまでは、採算を度外視して広告や設備投資に資金を投入し続けるのが一般的である。


 だが、出前館の成長は2024年8月期には止まり、2025年8月期に大きく落ち込んだ。2024年8月期末時点で、2025年8月期の売上高を530億円と同社は予想していたが、期中で下方修正している。


 業績に対応するように、出前館のアクティブユーザー数も減少し続けている。2022年8月期末には873万人まで伸びたものの、翌年度は657万人に減少。2025年8月期は四半期ごとに減少し、期末時点で455万人となった。客離れに歯止めがきかない状況だ。


●停滞市場でウーバーだけが一人勝ち?


 調査会社のサカーナ・ジャパンによると、2024年の国内デリバリー市場は前年比7.6%減の7967億円だという。近年ではファストフードから和食に至るまで業態問わずフードデリバリーへの対応が進み、需要拡大が一巡したほか、インフレで節約志向が高まり、市場規模は縮小傾向にある。


 だが前述の通り、ウーバーイーツは比較的堅調だ。2023年〜24年度は2ケタ成長を達成。赤字続きの出前館をよそに、2年連続で黒字も達成した。加盟店数はウーバーが12万店以上であるのに対し、出前館は2022年時点で11万店突破を発表している。店舗数に著しい差があるわけではない。


 フードデリバリー各社のサービス内容は、基本的に同じだ。価格では出前館が商品代金のほか、配達料がかかるのに対し、ウーバーは配達料に加えてサービス料を加算している。手数料は変動価格制であるものの、両者とも1回の注文に最大500円程度かかるのが一般的だ。


 商品代金がそもそも店頭価格より高く設定されていることも多い。なお、出前館、ウーバーのどちらかが高いという意見はあまり聞かれず、料金差が業績に影響を与えたとは考えにくい。


●ウーバーと出前館、明暗が分かれた理由


 では、何故両者の明暗が分かれたのか。一因として、参入時期に差があったことが挙げられる。


 ウーバーイーツは2016年に日本に上陸した一方、出前館の運営会社は1999年設立となっている。しかし、当初の出前館は出前情報を載せるポータルサイトを運営しており、配達機能は有していなかった。ウーバーと同じようにアプリで注文、決済、配達までを完結できるサービスを開始したのは2017年で、ウーバーより1年遅い。「フードデリバリーといえばウーバー」という認識が定着し、知名度の差が後の状況に影響したと考えられる。


 また、フードデリバリー市場では配達員が背負うリュックの「Uber Eats」というロゴが宣伝効果を発揮したといわれている。一方、出前館のリュックは「Demaecan」と印字してある。日本語をアルファベットで表記しており、読みにくく感じる。Ifの話にはなるが、「出前館」のロゴを使用している方が宣伝効果は大きかったかもしれない。


 さらに、各社ともサービス内容が同じなので、利用者は最初に使ったサービスを継続して使いがちだ。ウーバーは認知度を武器に客を先取りした結果、好調を維持していると思われる。出前館のアクティブユーザー数減少は、前述の物価高による利用控えに加え、複数のアプリの利用者がウーバーのみを使うようになった動きを反映している可能性がある。


●起死回生のカギはあるのか


 出前館の業績は赤字続きだが、LINEや傘下のファンドがたびたび出資しており、自己資本比率は7割超で財務は健全だ。とはいえ、ウーバーが市場を押さえ、黒字化も達成したことから、勝者総取り合戦の勝者が決まりつつあるといえるかもしれない。


 ECではAmazonと楽天が拮抗している。両者とも似たようなサービスではあるものの、後者は「楽天経済圏」を築き上げている。楽天カードの利用者がポイント目当てに楽天を使用するため、Amazonに対する優位性を維持している。


 対する出前館にはそのような優位性がほとんどない。LINEとの連携はできるが、効果は低い。9月から一部店舗で宅配商品を店頭価格と同額で提供するサービスを開始したが、同サービスはウーバーの方が5カ月も早く実施している。


 「デリバリーといえばウーバー」という認識が広がっている以上、新規ユーザーに出前館のアプリをインストールさせるのも難しい状況だ。「LINEアプリ上で出前館を利用できる」といった革新的な取り組みがない限り、出前館の復活は難しいと筆者は考えている。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 



このニュースに関するつぶやき

  • まず対応店舗や範囲の狭さ Uberでは配達可能な同じ店が出前館では配達範囲外だったりする 面倒くさくていちいち見ることもなくなった
    • イイネ!30
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