“1円パチンコ”を打つ高齢者を狙う闇金の卑劣な手口。「年金手帳と銀行通帳を担保として預かる」と話す業者も

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2025年10月26日 16:20  日刊SPA!

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1円パチンコ店はどこも高齢者でいっぱいだ(写真はイメージです)
 4円台は打つ余裕もないが1円台ならば――高齢者たちのささやかな娯楽の裏で、闇金業者が“年金暮らしの財布”を狙っていた。「5000円渡して、1週間後に1万円返せ」。老後の現実を食い物にする彼らの手口とは。
◆5000円を渡され、1週間後に1万円返済

 パチンコ店を覗くと、1円パチンコにずらりと並ぶのは白髪頭の高齢者ばかり。

「ほぼ毎日来るね。ここに来れば友達もいるから。タバコ吸って、おしゃべりしてると、6時間くらいすぐたっちゃう」

「年金生活だから、一日2000円だけね。嫁さんに朝、おにぎり作ってもらって来るの。パチンコ店に行って、家庭菜園で採れた野菜や果物を友達と物々交換するんだけど、それがすごく助かってるよ」

 埼玉県某所のパチンコ店で高齢者に話を聞くと、こう返ってきた。パチンコが脳の活性化になる――そんな健康的な遊びであれば問題ない。

 だが昨今、気になる動きがある。それは1円パチンコを打つ高齢者専門にカネを貸す闇金が存在するというのだ。

 このパチンコ店にやってきたのは、証言者が待ち合わせ場所に指定してきたからだ。

「最近、物価が高くなっちゃったのに、年金受給額は上がらないから生活が厳しくなった。パチンコ友達にボヤいてたら、金融屋を紹介してくれたんだ。電話したら店まで来てくれて、1万円希望したら『1週間後に返済』って言われ、5000円だけ渡されたよ。年金支給日まで一日500円でなんとか食いつないで、ちゃんと返したよ」

 そう話してくれたのは1円パチンコにほぼ毎日通うAさん(72歳)だ。闇金の場合、ほとんどが利息は先に引かれるとAさんは言う。

◆1万8000円を10日で3万円として返済

 もう一人、千葉県内で取材に応じてくれたのは、76歳のBさんだ。

「ほぼ毎日、『即日融資』とか『簡単審査で月1回返済』なんていうショートメールがスマホに届くんだよ。ある日、年金支給日の直前で手持ちが全くないときに全部スっちゃって、その日の飯も食えない。インフレで生活ができなくなっちゃったから、その携帯番号にかけてみたのよ」

 電話先の男からは個人情報や収入と年金支給日、なぜお金を借りたいのか、希望融資金額などを聞かれたという。

「3万円貸してほしいって答えたら、折り返し『審査が通ったので振込先を教えて』と連絡があったんだけど、ATMに行ったら入金額が1万8000円だったの。事務手数料が4000円で、先に利息の8000円が引かれてた。10日後に3万円を返すという約束で、ちゃんと返したよ。緊急連絡先として兄の連絡先を教えたんだけど、返さなかったら兄に迷惑がかかるんだろうなと思った」

 融通も利いて気軽に借りられてありがたいとAさん、Bさんは話す。だが、相手はれっきとした闇金だ。

 詐欺や消費者問題の被害者救済サイト「リーチアウト」編集長の成田雅光氏は言う。

「昨今、無差別DMから返信してきた高齢者をLINEに誘導して貸し付けるケースも増えています。闇金は、保証人を立てる場合でも、名前と連絡先を教えるだけで、事前に連絡することもなく、賃借契約書を紙で締結するわけでもないので、借りる側は気軽なのでしょう」

 連絡する高齢者の多くは1円パチンコユーザーだ。しかし、返済後もしつこく営業電話をかけてきたり、返せなかったら本人や保証人は追い込まれてしまうという。

「悪徳なところでは、お金を返しても『個人情報を晒すぞ』と脅し、追加で金銭を要求するケースもあります。高齢者はつけ込まれやすいので、絶対、利用すべきではない」

◆3人に貸して1人が飛んでも儲かる仕組み

 被害者の声を追ううちに、貸し手側の実態にも辿り着いた。今回、記者は北関東の1パチ闇金業者・X氏に接触することができた。本業はリース業を営んでいるという。

「最近は高齢者のリストを入手してショートメールにメッセージを送りつけたり、X上で勧誘するのが主流だね。昔ながらの方法で、1円パチンコ屋で負けてそうな人、ハローワーク付近で困っていそうな人、炊き出しに並ぶ人とかに声をかけることもあるよ。あとはブローカーみたいな顔の広いおばちゃんから枝を広げていくやり方もある」

 X氏は現在、年金手帳と銀行通帳を担保として預かっているという。その数20以上で、ほぼ全員、1円パチンコに通う高齢者だ。年金の入金日になると、借りた人とATMに行き、引き出したらその場で返済する。

「最近じゃ、ユーチューバーのいたずらも多いから、電話でのやりとりが重要。噓をついていないか確認し、借りて飛ぼうとしていないかなど雰囲気を読む。その後、個人情報を調査して、利息や貸付額を決める。金利はだいたい1週間〜10日で3〜4割くらい。初回は5割のこともある」

◆親身な他人か、それとも悪魔のささやきか

 さらにもう一人、闇金業者に接触することができた。神奈川県を拠点に活動するY氏だ。本業は投資家だという。

「昔は不動産業で働いてたんだけど、今は副業感覚でカネを貸してる。相手は1円パチンコにハマってる老人。例えば3人に5万円ずつ貸したとして、渡すのは3万円ずつ。1人飛んでも、2人から5万円ずつ戻ってくれば1万円儲かる。この商売はこういう仕組みで、取れるところから取っていくんだよ。型にはまって長く付き合えるヤツが狙いで、次は金利を下げるからと言いながら、何度も金利をもらって儲けていくのよ」

 最初は小さな額の借金でも、回数を重ね、長期間にわたり金利を搾り取られればチリツモで膨れ上がっていくのだ。

 高齢者のパチンコ遊技状況に詳しい関西大学教授の亀谷義浩氏はこう警鐘を鳴らす。

「ほとんどの高齢者は、家族からパチンコにのめりこみすぎないよう注意されていることもあり、行く回数や予算を決めて律しています。一方で、独居の高齢者等は周りに止める人がいないため、依存症になる可能性は十分に考えられます。高齢者はコミュニケーションを求めて店に足を運ぶ方も多く、親身に相談に乗ってくれた人が闇金業者だったということもあるでしょう」

 周囲に1円パチンコ店に足を運ぶシニアの知人や親族がいたら、危険に巻き込まれていないか注視しておきたい。

【「リーチアウト」編集長・成田 雅光氏】
被害者救済メディア「リーチアウト」編集長。投資詐欺などの犯罪や未払いトラブル、消費者問題等の被害者の救済や事実解明を行う

【関西大学教授・亀谷義浩氏】
関西大学環境都市工学部建築学科教授。主な研究テーマは高齢者・障害者等の福祉。高齢者の娯楽としてパチンコに関する研究がある

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/PIXTA Shutterstock

―[[1円パチンコ闇金]の卑劣な手口]―

このニュースに関するつぶやき

  • だーかーらー、パチンコは犯罪と貧困の温床なんだよ。違法賭博として全面禁止にしろ。
    • イイネ!8
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