画像提供:マイナビニュース「トイレ掃除から楽になりたい!」という切なる願いから出発したこの短期連載、各社の「お手入れが楽」なトイレを取材していく。今回はTOTOの「ネオレスト」シリーズだ。なお、どのメーカーでも特に上位モデルは優れた清潔機能を備えているが、人間による掃除を完全に「ゼロ」にできるわけではない点はご承知いただきたい。
毎日のトイレ掃除で負担に感じるのは、便器底の黒ずみ、便座裏の黄ばみ、そしてフチ裏のこびりつき――などなど。ブラシを差し込んでこすり、強い洗剤を使って落とすのが当たり前だった。TOTOはそんな「後から落とす掃除」を減らし、「そもそも汚れを付きにくくする」設計に力を注いでいる。
住まいで選べる3系統もラインナップ
タンクレスの「ネオレスト」、収納一体型の「レストパル」、床から浮かせた設計で清掃性を高めた「FD」をラインナップ。いずれも、見た目のすっきり感と、掃除のしやすさを両立している。
「FD」シリーズは、「掃除がしやすいのにおしゃれ」とSNSを中心に話題になったという。収納重視の「レストパル」は、いろいろなモノを棚にしまえて見せずに整えられる美しさを求める人に選ばれているそうだ。
これら豊富なラインナップで一番人気なのは、節水性とデザイン性を兼ね備えたタンクレストイレ「ネオレスト」だ。NX・LS・AS・RSの4シリーズがあり、価格は約32万〜72万円(税別)。なかでも2017年にTOTO創立100周年を記念して発売された「NX」は、卵形のやわらかなフォルムが印象的で、上位モデルらしい存在感がある。
NXシリーズはどちらかというとコンセプトモデル。一般家庭向けというと、LS、AS、RSシリーズが中心となる。特にLSは金属調ラインがきらりと光り、デザインと扱いやすさが魅力。2022年にデザインを一新したベーシックなRSシリーズは、清潔性と見た目の軽やかさで選ぶ人が多い。
今回はTOTOのショールームを訪れて、清潔機能とデザインを両立させたLSシリーズをじっくり触れてきた。
汚れの元に先回りする「きれい除菌水」
TOTOの清潔技術/お手入れ技術の中心にあるは「きれい除菌水」。これは、水道水を電気分解して生成した次亜塩素酸を含む水のこと。この「きれい除菌水」が汚れの元となる菌を抑制する。
「きれい除菌水」を使った清潔機能は、多岐にわたる。具体的には、使用後と8時間使用しないときにミストを自動で吹きかける「便器きれい」、ウォシュレットの使用後にノズルを洗浄する「セルフクリーニング」、そしてノズルの内側にも外側にも「きれい除菌水」のミストを吹き付ける機能などだ。ほか、便座裏の先端部分にも、トイレ使用後に「きれい除菌水」を付着させ、汚れが付きにくくする(菌の繁殖を抑える)。
洗剤を使わず、「きれい除菌水」は水から生まれて水に戻るため環境にも配慮。実際に「きれい除菌水」を搭載したトイレを導入したTOTO社員の方に話を聞くと、「汚れを探すように点検するくらいで、以前のようにブラシを使ってこする回数は減った」とのこと。
汚れの付着や黄ばみが“できてから落とす”のではなく、“できる前に抑える”――。それだけで、掃除のハードルがぐっと下がる。これはうれしい! 特に便座裏は、わざわざ便座を上げて、汚れをチェックして、掃除しないといけないところ。「きれい除菌水」によるケア機能があれば、つい忙しくて汚れの確認を怠っても、気付いたときにすごく汚れた便座裏を掃除しなくてすみそうだ。
素材と形状が生む“汚れの付きにくさ”
便器に使われているTOTO独自の素材も、汚れを付きにくくしている。陶器表面にガラス層を一体焼成した「セフィオンテクト」は、表面をナノレベルで滑らかに整えられる技術。汚れの粒が引っかかるすき間をなくし、汚れを流しやすく(付着しにくく)している。コーティングではないため、はがれる心配がなく長持ちするのも大きなポイントだ。
さらに、トイレを使用する前に水の膜を作る「プレミスト」機能と、渦を巻くように流す「トルネード洗浄」も併用する。トルネード洗浄は、汚れが残りやすい便器後方に水の勢いが集中するように水の流れをコントロール。流れ方を工夫することによって、節水しながら汚れを落とす仕組みだ。
便器にも目を向けてみよう。形状や成形において、汚れが残りやすい「すき間」を徹底的に排除している点が特徴的だ。便器自体がフチ裏を完全になくした形状になっていて、ブラシを差し込む必要もない。手でぐるっと拭けるため、汚れの取り残しがなくなりそう。便器のフチの裏側は、汚れが落ちているかどうか分かりづらくて不安になるが、これなら一目瞭然だ。
便座につなぎ目がないため、爪楊枝や綿棒で汚れを掻き出すような手間も不要。すき間にたまった汚れは放置すると落ちにくく、臭いの原因にもなりやすい。さっと拭けるだけで無理なく清潔を保てそうだと思った。便座の後方部分を持ち上げて拭き掃除をしやすくする「お掃除リフト」機能も実用性が高い。
停電時にも使える安心感
TOTOのネオレストシリーズは、2022年のモデルチェンジから電池不要で停電時にも水が流せる設計を採用している。便器後方や横のカバーをはずし、リングを引っ張ると水が流れる仕組みだ(NXシリーズは電池が必要)。
停電はかなりのストレスになり、最近は災害に備えたポータブル電源を常備する家庭も増えたと思うが、なかなかトイレの電源までは手が回らない。災害時のトイレは大きなストレス要因であるため、いざというときでも手動で水を流せるのはありがたい。
掃除する人の実感として……
従来のトイレだと、
・ノズルや便座裏 → 毎回チェックが必要
・便座裏 → 汚れやすいため頻繁な掃除が必要
・便器の縁の裏 → 汚れやすいがチェックしにくくブラシが届かない
といった悩みがつきまとう。
家庭で日々、実際にトイレを掃除している立場からすると、ネオレストの工夫は「掃除の質」を大きく変えてくれる。
つまり掃除をする上で、汚れの見つけやすさは大切なこと。ネオレストの凹凸が少ない便器形状やお掃除リフト機能は、汚れを確認しやすくするとともに、拭き取りやすくしている。掃除道具をいろいろと駆使しなくても、拭き掃除でトイレ全体の清潔を保てるのは、いざ掃除に取りかかる心理的なハードルがぐっと下がるし、ある意味“時短”の一面も。
きれい除菌水と素材の効果で汚れが付きにくく、汚れがこびりついてから掃除をすることが減る。強い洗剤を使わなくても日常的には軽めの掃除でよく、準備や掃除そのものの時間が減る。便座裏やノズルなど見えにくいところもきれい除菌水のおかげで清潔に保てると思えば、「少し拭けば大丈夫」と気持ちの余裕が生まれるだろう。
汚れを寄せつけず、掃除の時間も気持ちも軽くしてくれる――。“今日も掃除しなきゃ”という重荷が減るだけで、暮らしは思った以上に快適になりそうなトイレ。“悪戦苦闘するトイレ掃除”から、“確認するトイレ掃除”を実現しているネオレストは、長年の経験から磨かれた工夫が随所に感じられる。トイレが掃除の負担を自然に助けてくれるなら、それだけで十分ありがたいと思ったのだ。
伊森ちづる 家電・家電量販店ライター。家電量販店の取材や家電メーカーの取材、家電製品のレビューを中心に活動。売り手、メーカー、ユーザーという3つの視点で家電を多角的に見るのが得意。雑誌、ニュースサイト、ラジオ、シンクタンク、自治体での情報提供など、多方面で活躍中。最近は、テクノロジー×ヘルスケア、テクノロジー×教育などにも関心あり。趣味は音楽鑑賞(クラシック)とピクニック。 この著者の記事一覧はこちら(伊森ちづる)