
地球環境問題の解決に向けた取り組みで大きな功績を上げた個人・団体を顕彰する旭硝子財団(東京都千代田区)の「第34回ブループラネット賞(地球環境国際賞)」の受賞者2人が10月28日、東京都内で記者会見し、受賞の喜びとともに、「気候変動などの地球環境問題は解決できる」と若い世代に向け力強いメッセージを語った。
受賞者は米国スタンフォード大のロバート・B・ジャクソン教授と英国の社会起業家ジェレミー・レゲット博士。ジャクソン教授は陸域生態系の炭素循環の専門家で二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの監視、削減に取り組んでいる。レゲット博士は化石燃料資産の経済リスクを明らかにして投資家らに化石燃料関連企業などからの投資撤退を促す運動を推進するとともに、経済活動と環境保全の両立を目指し太陽光発電の会社も設立した。
記者会見でジャクソン教授は、気候変動に関する米国の監視活動がトランプ政権下で縮小される可能性への懸念を示しつつも「気候変動対策は米国だけでなく日本や中国、オーストラリアなどを含む国際的なコンソーシアム(連合体)で取り組んでおり、仮に米国の監視体制が縮小するようなことがあっても他国が補ってくれるだろう」と国際的な取り組みの重要性を指摘した。
また気候変動や生物多様性の問題に取り組むには「楽観的希望を持たなければならない」と述べ、世界で初めてガソリンの完全無鉛化を達成した日本の成功例を紹介しながら「人類には空気や水をきれいにしたり、完全になくなったわけではないが貧困を減らしたりしてきた“成功例”がある。気候変動に関するわれわれの取り組みは成功し、地球環境を保護する戦いにわれわれは勝利する。若い人は悲観論に陥らず、これまでの人類の“成功”を思い出して楽観的な希望をもって今、行動してほしい」を話した。
レゲット博士は、地球温暖化や生物多様性の喪失などの地球環境の問題を信じない人が「多くいる」として、こうした人々に「地球環境の危機を分かってもらう必要がある」と強調。「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って、掘って、掘りまくれ)」と化石燃料の増産を掲げるトランプ米大統領の姿勢に関しては、地球環境保護に熱心なブレーンを抱えていたという英国のサッチャー元首相の例を挙げて「トランプ大統領は地球環境保護に関する話に耳を傾けることはあるのではないか」と一定の期待感を示した。
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また「環境問題に取り組む若い人たちはとても生き生きしている」と自身の周囲で活動する若者の存在に触れ「若者の活躍はわれわれ上の世代にとても良い影響を与えてくれる」と述べ、環境問題への取り組みを広げる上で若者は大きな役割を果たしうる、とした。
ブループラネット賞は1992年創設。賞金は50万ドル。毎年原則2件の受賞業績を選んでいる。2021年にノーベル物理学賞に輝いた真鍋淑郎氏は第1回の受賞者。
