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安倍晋三元首相銃撃事件の審理が28日、奈良地裁で始まった。戦後初めて首相経験者が殺害された「テロ」はどう裁かれるのか。
日本では近代国家として歩み始めた明治期以降、しばしばテロが繰り返されている。多くの場合、国家体制や社会の矛盾に対する不満や怒り、不安が背景にあり、社会の「病巣」が可視化された現象とみることもできる。
明治〜昭和初期
明治期のテロは、西欧化推進に対する不満という形で現れた。士族同士の争いという特徴があり、不平士族に暗殺された大久保利通が典型だ。
大正末期から昭和初期にかけては政治家を狙ったテロが相次いでいる。1921年、政党政治の基礎を確立した原敬首相が東京駅で青年に刺殺された。昭和恐慌という経済危機の中で30年に浜口雄幸暗殺未遂があり、2年後には右翼の農村青年らによる「血盟団事件」が続いた。海軍青年将校らが犬養毅首相を射殺する「5・15事件」(32年)、陸軍青年将校らがクーデターで高橋是清蔵相らを暗殺する「2・26事件」(36年)は軍国主義の台頭を予感させた。
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戦後は東西冷戦、バブルの影響も
戦後のテロは、世界を二分した東西冷戦の影響を受けた。浅沼稲次郎・社会党委員長は第1次安保闘争の直後、右翼少年の凶刃に倒れた。学生運動が激化して社会が騒然とする中、70年代には「よど号ハイジャック事件」(70年)、「連続企業爆破事件」(74〜75年)が起きている。
高度経済成長とオイルショックを経て、日本経済はバブルの狂乱と崩壊を経験する。迷い、悩む若者たちをからめ捕ったオウム真理教が起こした95年の地下鉄サリン事件は、戦後最大の無差別テロだった。近年は、組織に属さず単独でテロを実行する「ローンオフェンダー」が主流になっており、安倍元首相銃撃事件はその典型と言える。
帝京大の筒井清忠・学術顧問(近現代史)は「近代以降のテロをつぶさに分析すると、社会が都市化・大衆化していく中、個人が地域の共同体から分離・孤立して行き詰まり、ため込んだ不満をテロで解消しようとする点で共通している。こうした傾向は、孤立化を進行させやすいインターネット社会によってさらに強まる可能性がある」と指摘する。【岩崎歩】
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