ブルペンで投球練習するロッテ・唐川侑己[撮影=岩下雄太]※撮影2024年 ロッテの唐川侑己は今季、一軍の登板は2試合だったが、9月23日の西武戦で7回・80球を投げ、3被安打、5奪三振、無失点に抑え勝利投手となり、1勝1敗、防御率4.00だった。
唐川は昨季7月27日の楽天戦、6回・90球を投げ、3被安打、4奪三振、1与四球、1失点で先発投手としては18年7月5日のオリックス戦以来の白星を手にするなど、8試合・38回を投げ、3勝2敗、防御率2.37の成績を残した。
今季に向けてオフの自主トレでは「去年の反省として肩を怪我したところが最初の反省なので、パフォーマンスが良くなったことに対する対応できる体をしっかり作るということですね」ということをテーマに自主トレを行った。
春季キャンプは都城で過ごし、3月9日のソフトバンクとのオープン戦に登板し3回・46球を投げ、3被安打、3奪三振、無失点の投球を見せたが、オープン戦はこの1試合の登板で、開幕はファームスタート。
ファームでは3月18日のオイシックス戦に先発し、3回1/3を投げ1失点。この日は「実戦に入ってきた中で、そこの感覚だけは実戦の中でしかできないと思っているので、積極的に投げるようにしています」と、左打者と右打者のインコースにカットボール、ストレートを多投した。0−1の3回一死一塁で右打者の大川を1ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めた7球目のインコース143キロカットボールが良かった。「ラインは多少ずれて入るんですけど、メリハリの中で投げられたかなという感じがします」と振り返った。
また、この日は速いカーブと遅いカーブを投げ分けていた。その意図について訊くと、「カウントを取りにいく時と、低めに制球したい時で感じは違うかなというのはありますけど、自分の中では基本的に一緒です。緩急はちょっとつきますけど」と説明。
続く3月27日の楽天二軍戦では、6回を投げ1失点にまとめたが、同日は昨年から取材のたびに“練習中”と話すことが多かったスライダーを多投。自信を持ってスライダーが投げられるようになったからだろうかーー。
「自信が出てきたというほどではないですけど、それも組み合わせの中で楽天戦は長打も打たれていたし、バッターに気持ちよく振られていたので、目先を変える意味でもスライダーが増えたかなという感じですね」。
4月終了時点で、ファームで5試合・23回1/3を投げ、2勝1敗、20奪三振、防御率2.31と安定した成績を残し、5月6日の楽天戦で今季初先発のチャンスが巡ってきたが、雨天中止のため登板が叶わず。翌7日の西武二軍戦に先発登板した。5月まで先発で調整していたが、6月1日の日本ハム二軍戦リリーフで1イニングを投げると、6月4日に一軍昇格。6月11日の広島戦2−2の11回に登板し1イニング目は無失点に抑えたが、2イニング目に4点を失い降板。6月13日に一軍登録を抹消された。
8月6日の日本ハム二軍戦で、6月11日の広島戦以来の登板を果たすと、8月23日DeNA二軍戦では、左足を上げた際、グローブをパンパンとタイミングをとるような形で投げていたが、「フォームの中でトップをしっかり決めて投げたいというのがあったので、そのタイミングを探って、いろんな形になっているのかなと思います」と教えてくれた。
その後、ファームで3試合登板した後、9月23日の西武戦で、ようやく一軍で今季初先発の機会が巡ってきた。
先発で調整しながら雨天中止、リリーフでの一軍登板など、チーム事情とはいえ、不運な状況が続いていたが、「せっかくもらったチャンスだったので、舞台を楽しんで思う存分味わって投げられたらというのが一番でしたね」と久しぶりの一軍の先発、楽しもうという思いでマウンドに上がった。
「西川選手の時は初球外を狙ったんですけど、他は内を狙っていて中に入っちゃったかなと。コントロールミスではあったんですけど」と反省するも、先頭の西川愛也を外角148キロのカットボールで3球三振、続く滝澤夏央も外角の145キロカットボールで空振り三振、3番・渡部聖弥をインコース145キロカットボールで遊飛、わずか13球で初回を終える。
「初回と2回と投げ分けがうまく行っていなかったのですが、良い球がいっていたので、ちょっとずつ投げ分けができていたかなと思います」と、先制点をもらった直後の3回以降は伝家の宝刀・カットボールをコースにしっかり投げ分けた。
ストレートは山村崇嘉に投じた1球のみ、カットボール、スライダー中心に、時折チェンジアップを織り交ぜる投球で、西武打線を7回無失点に抑え、今季初勝利を飾った。シーズン序盤、先発で結果を残しながらも、春先は一軍の先発陣が充実したことに加え、6連戦が少なく、せっかくの先発のチャンスも雨で流れるなど不運もあったが、先発の登板機会で一発回答した。チームは最下位に沈み、唐川とともに長年チームを支えてきた選手たちの多くが今季限りで退団した。サブロー新監督の来季、唐川侑己の存在感を高める1年にして欲しい。
取材・文=岩下雄太