
「プロだから、これぐらいやって当然」
「プロだから、これぐらいやって当然と、両親や兄に言われるのが嫌でたまりません。どうしたらいいのでしょうか」今回、介護の悩みを打ち明けてくれたのはカズエさん(仮名/50代女性)。実家に暮らす両親と兄からひどい仕打ちを受けていると言います。
カズエさんは介護福祉士の資格を取り施設で介護の仕事をしています。昨年からフロアのリーダーとなり、キャリアの浅いスタッフを指導する機会も増えましたが、仕事自体に不満はありません。
しかし唯一不満に感じているのは実家の両親と実家で同居している兄のこと。介護の資格を持っているカズエさんのことをこき使ってばかりだと言います。
「父が転倒して足の骨を折ってしまい、しばらく不自由な生活になった時は、連日実家に呼び出されて、入浴介助や排泄介助の大半を私1人でしました。『お前はプロだからこれぐらいできて当たり前だろ』と決めつけられ、お礼の一言もありませんでした」
元々長男である兄を溺愛していた両親は、カズエさんに対する愛情は希薄。「お前は出来が悪い」と言われ続けてきて、大学に行きたかったものの、結局行かせてもらえたのは兄だけでした。
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家族そろって介護を押し付けてくる
兄は大学を卒業後、就職先でうまくいかず実家に戻ってきました。両親はそんな兄を見かねて調理師の資格を取るよう促し、今は家業の小料理屋を継がせています。ただ、店は繁盛しておらず、収入の大半は両親の年金頼り。「母からは『お兄ちゃんには店があるから、これから先も介護なんてさせられない。あなたは女だしプロなんだからしっかり面倒を見てね』と、何度も言われています。兄も実家の遺産は自分が全てもらうが、介護はお前に任せると勝手なことばかり。父はだまってうなずくだけです」
カズエさんが「介護は仕事でお金をもらっている。お金をくれない人の介護はできない」と言っても、「金の亡者か」「冷たい女だ」と罵倒されてしまいます。「タダで料理を作れと言われたら嫌でしょ」と聞くと、「それは話が違う」と怒るだけ。
「こんな毒親たちの介護をするとなったら、今後、仕事にも支障が出そうで不安です」
呪いを断って距離を取ろう
まず、筆者からカズエさんに伝えたいのは、今後頑張って介護しても、両親や兄に報いられる可能性はゼロに近い。呪いを断って距離を取ろうということです。介護についての義務は、実子である兄とカズエさんに等しく存在しています。資格の有無は関係ありません。
さらに、両親と同居している兄は責任範囲が広くなるのです。介護をしないままだと「保護責任者遺棄罪」に問われる可能性もあります。
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もちろん親として育ってもらった恩があるわけですから、それに対して一定程度返すのはいいと思われますが、カズエさんの状況を踏まえると、すでに返し終わっているのではないでしょうか。
そして、自分をばかにした態度を取る兄とこれから仲良くしていけますか? 筆者なら絶対に無理です。普通は自分をばかにする人を好きにはなりにくいものです。
たとえ家族でもプロをタダで使っていい道理はない
今後どれだけ実家から要請を受けても、それに応える必要はないと筆者は考えます。必要に応じて地域包括支援センターに連絡して、「キーパーソンは同居している兄。家族関係上、私に介護はできない」旨を伝えて、あとは任せてしまってはいかがでしょうか。実家からの電話は着信拒否。用事がある時はこちらからLINEを送るだけで十分なはずです。なお、地域包括支援センターで「私、介護の仕事をしています」とは絶対に言わないほうがいいでしょう。「そうなのであれば、あなたが頑張ってください」と言われてしまう可能性がとても高いため、自分の職業に関しては詳しく言う必要はありません。
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親子やきょうだいでも、その道で稼ぐ人をタダで使っていい道理はありません。もちろん、どうしても身内だから情があったり、自分が動かなければどうにもならなかったりするなどで、仕方なく頑張ってやっている人がいるのも事実です。その全てを否定する気はありません。何を守り、どう動くかを選択するのは、それぞれの自由です。
ただし、本当は嫌で、とてもつらいけれど……などと、いろいろなことを背負い込み過ぎてしまい、結果として自分の心身を壊してしまうことだけは避けてほしいのです。それは悲劇に他なりません。
横井 孝治プロフィール
両親の介護をする中で得た有益な介護情報を自ら発信・共有するため、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。翌年には介護情報サイト「親ケア.com」をオープン。介護のスペシャリストとして執筆、講演活動多数。また、広告代理店や大手家電メーカーなどでの経験を生かし、販促プロデュース事業も行う。All About 介護・販促プロモーションガイド。(文:横井 孝治(介護アドバイザー))
