有機農産物の価格は「割高」だが「地球にやさしい」…農林水産省が推進する「有機農業」のメリット・課題点を解説

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2025年11月10日 21:10  TOKYO FM +

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有機農産物の価格は「割高」だが「地球にやさしい」…農林水産省が推進する「有機農業」のメリット・課題点を解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30〜7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

11月9日(日)に放送した番組テーマは、「身近に広がる、未来を育む有機農業」。農林水産省 農業環境対策課の渡邉智文(わたなべ・ともふみ)さんをゲストにお迎えして、有機農業の効果や2016年に制定された12月8日「有機農業の日」について伺いました。


(左から)杉浦太陽、渡邉智文さん、村上佳菜子



◆“オーガニック”を使った給食メニューが増加中

最近の給食では“地産地消”を意識したメニューやオーガニックの野菜、お米を使ったメニューが登場しています。昨年の例を一部紹介すると、北海道せたな町内の全小中学校で、有機米のご飯や有機農業栽培の大豆を原料とした「味噌」を使ったお味噌汁が提供されたり、栃木県市貝(いちかい)町の全小中学校では、有機農業で栽培された「レモン」を使ったハニーレモントーストが出たそうです。

この事例を聞いた村上は「私が子どもの頃は、有機農業で栽培されたものが学校給食に出ることなんてなかったと思うんですけど、今はこんなにも給食に取り入れられているんですね!」と驚きます。

その一方で、農林水産省が公表している「有機農業・有機食品に関する消費者意識調査」によると、多くの人が“有機”や“オーガニック”という言葉は知っているものの、“有機農業の効果”については、約7割の人が「あまり知らなかった」「全く知らなかった」と回答しています。そこで今回は、渡邉さんに「有機農業」について詳しく解説していただきます。

◆「有機農業」とは?

まず有機農業の定義について、渡邉さんは「化学肥料や化学農薬を原則使わず、可能な限り環境に配慮した農業のことです」と説明します。化学農薬を使わずに農業をおこなうと、虫や植物が生息しやすくなり、それをエサにするカエルや鳥も増えます。いろんな生き物がともに生きられる環境を守ることを「生物多様性の保全」と言い、有機農業は農産物を作るだけではなく、自然界のつながり全体を守ることにも役立ちます。

また、有機農業では化学肥料の代わりに家畜のふんや稲わら、もみ殻、落ち葉など自然由来のものを肥料にします。これらを発酵させた堆肥を土に混ぜると、ミミズや微生物が元気に活動するようになります。それによって、土が水分や養分をしっかり蓄えるようになり、その結果、作物が育ちやすくなったり、病気に強くなる効果が得られます。

さらに、自然由来の肥料には炭素がたくさん含まれています。それを土のなかで微生物が分解すると、一部は二酸化炭素として放出されますが、一部は土のなかに長く留まります。結果的に大気中の二酸化炭素を減らして土のなかに貯めることになるため、地球温暖化防止につながると考えられています。

つまり、有機農業は「生物多様性の保全」「良質な土壌づくり」「地球温暖化防止」という3つの効果が期待できる“地球にやさしい農業”なのです。

◆「有機農業」の課題

有機農産物は、一般的な農産物に比べて割高な価格で販売されていることが多くあります。その理由として、渡邉さんは「化学農薬を使用しないため、雑草対策や病害虫対策などにとても手間がかかります。例えば、防虫ネットや粘着トラップを使って害虫が畑に入らないようにしたり、自然由来の素材を利用した資材で虫を寄せにくくしたり、害虫にとっての天敵を防除に使ったり、人力で草取りをおこなう場合もあります」と解説します。

しかも、農産物に「有機」と表示するには、有機JAS認証を取得する必要があります。ただし、これには「田んぼや畑が2年以上有機的に管理されていること」が条件となっています。ですから、一般的な農業から切り替えるにも時間と手間がかかり、有機農業を始めてからも、一般的な農業と比べると収穫量が減ってしまう傾向があります。

また、流通コストも、有機農産物は小口に宅配便などを使って店舗に納品することが多いので、一度に大量輸送することが多い一般的な農産物に比べて輸送費もかさんでしまいます。

加えて、「小売店の立場からすると、有機農産物は『価格が高い』『大量に仕入れられない』『安定して供給されない』といった理由で、取り扱いを増やしにくい状況です。その結果、有機農業に取り組む農家さんは、コストがかかり収穫量は減るだけではなく、販売面でも不利になりやすい……という課題を抱えています」と現状を語ります。

そんな現状を打破すべく、農林水産省では生産者の利益を確保しつつ、消費者の手に届きやすい価格で販売できるように流通を効率化するなどの取り組みを進めています。

渡邉さんは「農林水産省では『2050年までに日本の耕地面積の4分の1を有機農業にしていく』という目標を掲げています。そこで、地域ぐるみで有機農業の生産から加工、消費までを一貫しておこなっている市町村を『オーガニックビレッジ』として応援しており、2030年までに200市町村創出することを目標に、全国各地での産地づくりを進めています」と力を込めます。

ちなみに、オーガニックビレッジに取り組んでいる市町村は、なんと150市町村(※令和7年8月29日時点)! 有機農産物を使った学校給食の取組事例が増えているのも、地域の生産者や事業者、自治体の職員など、さまざまな関係者が、有機農業について学んだり、有機食品の消費拡大のために力を合わせて取り組んできた結果とも言えるのです。

◆12月8日は「有機農業の日」!

最後に12月8日に制定されている「有機農業の日(オーガニックデイ)」を紹介します。「『有機農業の日』は、有機農業への理解を広めるために作られた記念日です。2016年に有機農業推進法が成立してから10年を迎えたことを記念して、民間団体によって制定されました。農林水産省でも、昨年度からこの日を中心に、有機農業や有機食品に親しんでもらう特別な期間を設けて、全国の自治体や企業・団体の方々にご協力いただき、有機農業や有機食品の普及を進めています」と渡邉さん。

今年度は、11月14日(金)〜12月14日(日)の1ヵ月間を特別期間として設け、期間中は有機農業や有機食品に慣れ親しむことができるイベントを開催します。なお、これらの情報は農林水産省の「有機農業の日」特設サイトで確認できます。改めて、渡邉さんは「この機会にぜひ、お近くで開催しているイベントなどに参加して、有機農業や有機農産物の理解を深めてください!」とコメントしました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「有機農業」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。まず、村上は“12月8日は「有機農業の日」”とスケッチブックに書き、これには杉浦も「覚えておきましょう!」と共感します。そんな杉浦は“地球に優しい有機農業”を注目ポイントに挙げていました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm

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