【愛子さま初海外公務】ラオスってどんな国?知られざる不発弾のこと 熱心にメモをとり…

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2025年11月13日 06:01  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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11月17日〜22日、天皇皇后両陛下の長女・愛子さまがラオスを公式訪問される。日本との外交関係樹立70年にあたりラオス政府から招待があったもので、愛子さまにとって初の海外公務となる。現地では国家主席への表敬訪問や晩さん会も予定されている。ラオスとはどんな国だろうか。取材をする中で、愛子さまの事前学習の様子も明らかになった。

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ラオスってどんな国?日本初のJICA派遣国

日本から約4100km(東京⇔ビエンチャン)離れた東南アジアの国。面積は日本の本州と同程度で、ASEAN加盟国で唯一海に面していない。日本からの直行便はなく、タイやベトナムを経由して最短半日かけて入る。

また、世界で数少ない社会主義を自称する国家だ(他はキューバ、中国、ベトナム、北朝鮮のみ)。もともとフランスの植民地で、一時日本軍が進駐していたこともある。農村部はまだインフラが整っておらず、国連が指定する「後発開発途上国」44か国のうちの1つだ(2024年末時点)。また、日本で最初に青年海外協力隊が派遣された国であり、今も多くの日本人が医療・教育などさまざまな分野で活動している。

愛子さまは首都ビエンチャンだけでなく「中国ラオス鉄道」に乗って古都・ルアンパバーンも訪問される。市内では「ラオ・フレンズ小児病院」の視察も。日本のNPOが立ち上げたこの病院では、年間およそ3万人の子どもたちに無償で医療を提供している。俳優・三浦春馬さんが生前に支援を行っていたことでも知られるなど、両国が築いてきた医療協力を象徴する場所だ。日本赤十字社で勤務し、公私で医療・ボランティアに心を寄せられる愛子さまにとって、重要な視察となることは間違いない。

世界一の量「日常の中に不発弾」

ラオスは世界一激しい空爆に曝された国でもある。かつてベトナム戦争で、アメリカ軍が北ベトナム軍の補給路遮断などのため、隣国ラオスに対して上空から爆弾を投下。人口1人あたり1トン以上が落とされた。現在も約8000万個の爆弾が国内に残っており、その量は世界一とされている。政府は独自に18個目のSDGsとして「不発弾のない暮らし」を掲げるなど、国をあげて取り組んでいるが、解決への道のりは遠い。

今回、愛子さまの日程の中にも、不発弾の資料館「COPEビジターセンター」への訪問が決まっている。側近によると、愛子さまは現在ラオスの歴史や不発弾について熱心に勉強されているという。訪問当日、義足などを出展する日本の支援団体に話を聞いた。

認定NPO法人テラ・ルネッサンス 吉田真衣 理事長
「不発弾があるのは、人里離れた山奥だけではないんです。自宅の庭、学校の校庭…日常の中にあって、ラオスの人は脅威にさらされながら生活しています」

記者
「実際に起きた事故としてはどんなケースがありますか」

吉田理事長
「たとえば、農作業で畑を耕しているときに、クワが不発弾に当たって爆発。その方は失明してしまいました。また、運良く見つけたとしても、弾のサイズ・形が球技のボール(東南アジアで盛んなペタンク)に似ていて、子どもたちが認識せず触ってしまうこともあります。不発弾によるラオスでの死傷者は、戦争終結後から現在に至るまでで2万人を超えているんです」

こうした中、団体は現地に渡り、子どもたちに周知する活動を続けている。

吉田理事長
「歌やダンスで覚えるというのをやってもらっています。また、ラオスは多民族国家でみんなラオ語を話せるわけではないので、紙芝居やパズルなどの言葉を使わない学習も。フルーツと爆弾の絵をそれぞれ並べて、どっちが危ないか選んでもらうとかですね」

記者
「子どもにとって身体でそうしたことを覚えるのは大事ですね。一方、先ほどの例だと、農作業で爆発してしまうような、大人や労働者へのリスクもありそうです」

吉田理事長
「大人には、農作業以外ができる環境を整える活動もしています。畑を耕すという作業をしなくても収入が得られるように、たとえば、養鶏・養蜂といった方法を皆さんに教えるとか。働く選択肢を増やすことが、リスクを減らすことにも繋がるという考えです。私たちが現地で愛子さまにお見せする展示には、養蜂で作ったハチミツなども並べる予定です」

吉田理事長
「戦争って、和平合意が結ばれたらそれで終わりじゃなく、まさに現代に残る負の遺産。愛子さまの訪問で、現状に光が当たってほしい。報道を通して、日本中が心を寄せられたら大きな変化だと思っています」

先生が明かす愛子さまの姿勢 天皇陛下からレクチャーも

愛子さまは10月末、ラオスの歴史について説明(進講)を受けられた。その場はおひとりだけではなく、両陛下も出席されている。JNNは説明にあたった教授のもとを訪ねた。

東京外国語大学・菊池陽子教授(ラオス近現代史専門)
「私がご説明差し上げました。最初に皇居・御所のお部屋に入ったら、お三方が立って出迎えてくださいまして。主に近現代のラオスの歴史について、事前に宮内庁さんにお渡しした紙資料をもとに説明するんです」

元々は愛子さまだけで受けられる予定だったが、直前に「天皇皇后両陛下も一緒に」と決まったという。時間は1時間ほど。菊池教授は「緊張しました」としつつも、目の前で見る愛子さまの姿勢が印象的だったという。

菊池教授
「説明する間、愛子さまはノートにメモを熱心に取られていました。結構な量を書き留めてくださいまして。集中してメモをとる一方で、ときおり私の目を見てうなずかれるなど、気配りも忘れない方でした。両陛下も一緒にメモを取られていましたね」

菊池教授
「陛下が以前訪問した時のことに触れて『ラオスは食事がとてもおいしかったです』とおっしゃいまして。横で聞いた愛子さまは笑顔で『楽しみ』と話されていましたね。皇后さまも微笑んでいらして。テレビで見るのと変わらない仲睦まじさでした」

側近によると、家庭内では、陛下が訪問した時の資料やアルバムを一緒にご覧になっているそうだ。当時視察した施設・食に関することなどを陛下から直接愛子さまにレクチャーされているという。また、母・皇后さまも、海外経験豊富であることはもちろん、子どもの貧困問題に長く心を寄せられてきた。進講の場に、予定を変更して両陛下が帯同されたのも、強い”親心”がうかがえる。初めての海外公務にのぞむ愛子さまにとって、心強いこと間違いないだろう。

菊池教授は、「不発弾問題」だけでなく、ラオスの「明るい面」にも触れてほしいと話す。

菊池教授
「不発弾について知るのは本当に大切なこと。一方、ラオスには明るい面もたくさんあります。豊かな自然、穏やかな心。時間がゆったり流れているんです。日本人は経済合理性を大事にしていて、そのこと自体は大事なことですが、ラオスの文化や人々に触れると、私たちが忘れかけていたものを思い出せるような、そんな感覚があります。愛子さまにはこの訪問を通して、素敵な思い出を持ち帰っていただけると嬉しいです。陛下がおっしゃるようにご飯も美味しいですし」

複雑な歴史と共生しながら、発展を遂げているラオス。今回、愛子さまの初めての海外公務とあって注目度が高く、さまざまな歴史・文化にも光が当たるはずだ。両国のこれまでの様々な交流を大切に、愛子さまは17日、日本を出発される。

(TBSテレビ 報道局社会部・宮内庁担当 岩永優樹)

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