写真 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第60回となる今回は、アンヌさんが「シールブーム」について語ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
◆シール売ってないって、どういうこと?
ボンドロって知ってます?
私は「凡泥」という新手のケイドロかなにかかと当初思いましたが、これは「ボンボンドロップシール」の略なのですね。
昨今、空前絶後のシールブーム。小学生の子どもたちがお友達同士で交換などを楽しんでいるのみならず、「かつての平成女児」である私たちアラフォー女性も含めて、シールの魅力にやられている人が多発しているのです。
私の同世代の仲良しも、最近隙あらばシールを買いに文具店や100円ショップに足を運んでいると言い、シール収集に余念がないのです。
彼女いわく「このブームは本当に本当にすごい。だってシール売ってないんだもん!」とのこと。
え? 売ってないってどういうこと?
◆実家で大量の“ぷくぷくシール”を発見
そもそも今年40になった私が小学生の時分も、シール交換ブームは確かにありました。そのころは「ぷくぷくシール」なるものが人気で透明のシートに立体的な模様がくっついており、そのシートごと紙にはりつけて上から爪でこすってシートをはがすという仕組みのものでした。
シールを購入しても、友達との交換のために絵柄ひとつひとつを丁寧にハサミできりとって、お菓子の空き缶に大量につめこんで持ち歩いていたっけ。買ったそばから細かく切り刻み始める娘を観て親は目をまんまるにしていた記憶。
昨年北海道の実家に生活拠点を戻した際、かつての子ども部屋をかたづけていたところ大量のぷくぷくシールが入った容器を発見。おそるおそるふたを開けた途端、あのプラスチックのような独特の香りが鼻をくすぐり、あまりの懐かしさに走り出したくなったほど。シールとか文房具って、何歳になってもココロが躍る! 最高!
私もシール帳をゲットして、アラフォー同士でシール交換したい! と息巻いておりましたが、聞き捨てならないのは友人が口にしていた「シール買えない」発言。
さすがにそれはよくわからない、と思っていましたが、ありましたよ事件が。
さんざん「買えない」とは聞いていた私でしたが、私の中で頼りにしている書店兼文房具店が一か所ありました。そこはいわゆる住宅街にある店舗。仮にX文具店としましょう。比較的街はずれのX文具店なら思う存分買い物ができるであろうと踏んでいたのです。
◆SNSで流れてきた衝撃情報
さあ週末足を運んでみるかと鼻歌まじりに外出準備をしていたところ、SNSに衝撃情報が。
なんとX文具店にてシールを巡る暴動がおきたというではないですか。
開店と同時にシール売り場に走る人がおり、売り場にあったシール、なかでも今大人気の「ボンドロ」シールめがけて、全速力で突進する人がおり、子どもが派手に転び、泣きわめき、店員さんが「走らないで!」と絶叫し、シール売り場は嵐が去ったあとかのようにあっという間にもぬけの殻になったというのです。怖すぎる……。
ボンドロ、ボンボンドロップシールというのは今大人気のぷっくりした形状のシールのこと。キャラクターの柄が透明の樹脂状のふっくらした立体になっており、背景がキラキラしていたりするもの。
あまりにも人気で、偽物まで出回っている、とのニュースを目にしたこともありましたが、まさかそのボンドロをめぐってそんな騒動が身近に起きていたなんて……私もシール集めたい♪ というかるーい気持ちでX文具店に足を運ぼうとしていましたが、下手したらその争いに巻き込まれていた可能性があったわけで……。
◆「転売ヤー」の存在
X文具店の公式SNSには「立体シールは大人気商品のため、おひとりさま一種類につき、一枚までの購入とさせていただきます」と太字で表示されており、その下には二回りほど大きな文字で「走らないでね」と赤字で注意書きがされていたのでした。
お店としてもよっぽど困ってしまったのでしょう。赤字にすべてが込められているとお見受けしました。
この異常な加熱ぶり、私たちが幼いころにはなかったもの。当時と現在の大きな違いは「転売ヤー」なる存在でしょう。
お友達と楽しく交換したいという小学生、中学生や、日々の疲れをかわいくて小さくてキラキラしたものでいやしたい、というオトナ女性たちのささやかな喜びは、営利目的の嵐のような行為によって妨害されてしまっているのです。
◆大人になった平成女児が再び熱狂する理由
つくづく思いましたが、かわいらしく、時には美しく、そして独特のあのさわりごこち、ボンドロに限らず、数百円であのときめきを与えてくれるシールって本当にすごい。偉大。ボンドロは別に買えずとも、やっぱりシール売り場で小さなキラキラを目で追って居るだけで頬が紅潮する感覚があります。
大人になった平成女児たちが再びワクワクしているのは理由があるのです。みんな仕事や家庭に必死。とにかく疲れているのです。
マッサージなら5000円? 高い化粧品なら8000円? シールならたったの300円。「心のマッサージ代」としてのシール集めは、未来の自分の心の疲れをためさせないためのキラキラ貯金といってもよいかも。さあ買えないとなると逆にボンドロが気になって仕方ない今日この頃。
走りはしないけど、一枚くらいほしいかも。いや、もっとかな。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne