高市氏「馬車馬のように働く」発言に共感する中高年も…ワークライフバランス重視の若手とどう向き合う

6

2025年11月17日 21:20  All About

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

高市早苗氏の「ワークライフバランスを捨てる」発言は、賛否両論を巻き起こした。この発言に共感した中高年と、違和感を覚えた若手。なぜ世代間で反応が分かれたのか、その背景にある意識の違いと、職場での世代間ギャップの克服方法を探る。※画像:PIXTA
「馬車馬のように働いていただきます。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」

これは2025年10月4日、高市早苗氏(現首相)が、自民党の新総裁に選ばれた直後の演説で“国会議員”に語った言葉だ。「全世代総力結集で全員参加で頑張らなきゃ立て直せませんよ」自民党を立て直すために必要なことという文脈で語られた。

この発言はその後、いろいろな文脈を飛び越えて「一国の首相が国民に過度な労働を強いるなんて、けしからん」と批判を集めたわけだが、実は、ワークライフバランスを捨てて働きまくりたいという発言に、なぜか腹落ちしてしまった中高年世代もいたのではないだろうか。

一方、若手世代には違和感を覚えた人も多いだろう。

なぜこのように反応が分かれるのか。その背景にある、世代間のワークライフバランス意識の違いと、職場での向き合い方を探る。

思わず膝を叩いてしまった人も

ワークライフバランスという言葉を耳にしてから随分久しい。誰しも日常生活の中に自分なりのワークライフバランスを見いだそうとしているだろうが、満足いく結果が出ているかどうかは個人差があるはずだ。

これまで各社は“働き方改革”に取り組んできたが、残業が劇的に削減できた、社員のゆとりある働き方を確立できたという会社は限定的かもしれない。

多くの業界、会社で人的リソースが足りていない中、それでもなんとか仕事が続いているとしたら、誰かがワークライフバランスを崩し、業務負担に偏りが生じている可能性は高い。

基本的に働き方改革は、ワークライフバランスを達成できないことは悪いことだ、という前提に立っているわけだが、そこに新首相の発言が飛び込んできた。

「ワークライフバランスを捨てて、働いて働きまくりたい」という発言だ。時代錯誤とも捉えられかねない発言に驚いた人も多かっただろうが、思わず共感して膝を叩いてしまった中高年世代もいたのではないだろうか。

発言の真意はやる気の裏返し

ワークライフバランスという言葉を使わずに、あらためて本人の仕事への意気込みを別の言葉で表すなら、「自分は200%以上の力を発揮して頑張りたい」といったところではないだろうか。

自分の許容範囲(100%)すべてを出し切るだけではなくて、200%、つまりエネルギーも労働時間も2倍以上注いで、新しい仕事や念願の職に全力を捧げたいということである。

さまざまな意見があるのは十分承知の上だが、この不景気の日本において、首相のような公の職に就くリーダーが、そのようなコミットメントを示してくれた心意気はありがたいわけであり、その意図も理解できるものではないかと、筆者は考える。

しかし、ワークライフバランスを“放棄する”といった表現を使ったために、その言葉尻をとらえて非難する人が増えてしまった。

影響力のある首相という重役で、特に女性初の首相となれば、その影響は計り知れないわけだから、やはり言葉の選び方にはもう少し慎重であってほしかったとは思う。

しかし、私たちは新しい首相が門出に放った言葉に対して、もう少しその真意をくんで、寛容に受け止めてもいいのかもしれない。

自分は200%以上の力を発揮して頑張りたい、ワークライフバランスを放棄するなどの首相の発言の真意は、“やる気の裏返し”ではないだろうか。

そして、念願の職に就いた時、職場で初めてリーダーになった時、管理職になった時、そして社長になった時のような特別な状況であることも考慮しておきたいところだ。

特にリーダーになる人には特別な思いを持って頑張ってほしいし、周りもすぐ揚げ足を取ったり、真っ向から批判したりするのではなく、まずは相手の発言に込められた意味をくみ取ろうとするのが大切なのではないだろうか。

働きたい中高年

中高年世代の中には「念願かなったポジションでは200%の力で働きたい」と考える人も少なくないだろう。

例えば、子育てが終わり(もしくは子どもが大きくなって負担が減り)、住宅ローンの完済も見えてきた。自分の出世の限界も分かる。

長年続けてきた仕事だから効率的に仕事はできるし、自分より年上の社員も減ってくれば人間関係の悩みも少なくなる。かなしいかな、家庭をかえりみれば、配偶者から早く帰宅するよう懇願されることも少なくなってくる(若い時のほうが家族から求められることが多いのかもしれない)。

以前ほど飲み会にも誘われなくなり、お金を使う欲が減る人も多い。仕事の手の抜き方も分かってきているから、実は中高年世代は若手世代よりも余裕を持って仕事をしている人も多いはずなのだ。

就職氷河期などにより不遇の時代が長かった今の中高年世代が、もしも昇進して管理職に抜てきされるようなことがあれば、「このチャンスにすべてを懸けたい」という思いが表れることは自然だろう。首相の発言は何も、本当に体を壊すまで働くということではないはずだ。

リスクを避けたい若者

一方、若手世代は生産性を重視し、コスパ(コストパフォーマンス)、タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉に象徴されるように、労働時間ではなく効率を重んじる傾向がある。

中には、チャレンジ精神のある若手もいるが、「頑張っても報われない」という上の世代を見て、管理職やリーダーを回避したいと考える層も増えているのは事実だ。

ネットやSNSでは「損得勘定に基づく慎重な選択」が顕著だ。コスパ、タイパに通じるところでもあるが、難しいチャレンジをすることは損であるという考え方がよく見受けられる。

確かに、職場の上司も先輩もいつも余裕がなく忙しくしているし、若手を計画的に育成しようという機運が下がっている職場も多いのかもしれない。頑張っても頑張らなくても、給料がそれほど違わない(上がらない)と、上の世代を見ていてよく分かっているからだろう。

若手世代と中高年世代は職場でどう向き合う?

中高年はライフステージの変化や過去の苦労から「思い切り仕事に打ち込む」心境に至りやすく、若手は将来への不安や職場環境の変化から「自分の時間と心身を守りたい」との意識が強くなりやすい。

いつの時代も若手世代と中高年世代の間にギャップは存在する。ただし、現在は両者の感性やITリテラシーの高さにも隔たりがあり、仕事の進め方も違うし、職場外の交流機会も減少している。

一昔前のように、仕事終わりに一緒に飲みに行くことも、今やすっかり減ってしまっているに違いない。コミュニケーションの溝は深まっていると考えられる。

では、現代の職場で互いにどう向き合っていけばいいのだろうか。

両者に共通する価値観の土台があまりないため、無理にコミュニケーションを増やそうとするのは逆効果だろう。無理にプライベートを共有したり、昔のような「飲みニケーション」で距離を縮める必要もないのかもしれない。

むしろ、互いに、苦手なことや足りない部分を補い合う“パートナー”関係のほうが現実的ではないだろうか。そう割り切って異なる世代と接してみてはどうか。

例えば、IT分野では若手に権限を委譲し、中高年世代の経験・ノウハウは、若手が能動的に学び取る。無理にコミュニケーションを増やすより、仕事を通じて「補完し合う」ことが、世代を超えて成果を最大化するカギとなるのではないだろうか。

無理に打ち解け合う必要はない。各世代が意識的に得意を生かし、補い合う関係を目指すことで、互いの強みを最大限に引き出せるはずだ。
(文:小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド))

このニュースに関するつぶやき

  • 馬車馬と奴隷は違うのよ。そして日本の企業のは奴隷。何故なら互いに邪魔をしてマウンティンゴリラごっこで悦に浸る猿が人間になって仕事(笑)してるから。
    • イイネ!5
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(5件)

前日のランキングへ

ニュース設定