【西武】「ミスターレオ」栗山巧の継承「気持ちや伝えられるもの」前例ない「1年かけて恩返し」

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2025年11月25日 04:56  日刊スポーツ

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契約更改を終え会見に臨んだ西武栗山(撮影・たえ見朱実)

西武の栗山巧外野手(42)が24日、埼玉・所沢市内の球団事務所で会見を行い、プロ25年目となる来季限りでの現役引退を正式表明した。日本球界では異例の「来年引退します」宣言。今季は打率0割台と苦しんだが、現役続行への批判はごくわずか。ライブ中継を見守った2万人の西武ファンたちは涙した。ミスターレオの生きざまとは−。


   ◇   ◇   ◇


いつか必ずこの日が来ると、頭では分かっていたけれど−。人生、誰もが耐えがたい別離に直面する。西武ファンには「栗山引退」の4文字がその域に達すると再認識された祝日になった。


2万人近くが生配信の会見に見入った。


「えー、わたくし栗山巧は、2026年シーズン、僕自身の25年目を迎えるシーズンで締めくくりのシーズンとさせていただくことをご報告します」


決断時期を問われ「いやまぁ、あの…ついさっき」と笑いに持っていこうとする。その後に「この雰囲気に緊張してるだけ」ともらし、ファンと同じ目線の高さであろうとした。


LOVEやCHEERとはちょっと違う。極端に振り切って選べば「畏怖」や「敬虔(けいけん)」−。人々が栗山を見つめる目にはそんな文字さえ浮かぶ。若手選手たちのまなざしも同様だ。ただこの1、2年で「表情が明らかに違う」と変化に気付く関係者は、身近に何人も。打席で殺気さえかもし出す背番号1にも、年輪が深まる。


決断をすでに心に決めていた23日、サイン会で数百人と接した。限られた時間。女子学生の受験の話題にも親身に接した。あるファンのグループには「これ、掛けていただくことできますか?」と今季西武ファンの間で人気沸騰した俗称“クソデカネックレス”を差し出された。クールに見えて情報通だ。けっこう何でも知っている。「いいっすよ〜。うわ〜、僕、これ初めて着けますよ。うわ照れるな、なんか恥ずかしい〜」と目尻を下げ、一緒に記念写真に納まった。


ファンや仲間と共創した世界は、まだ終われない。球団と双方合意での現役続行決定でラスト1年。「心を整理する時間」と表現するファンもいるし、もしかしたら栗山自身にとっても。次代への継承、技術の追求、長年の恩返し。「ファンの皆さんにしっかり僕のプレーを見てもらいたい、僕の気持ちや伝えられるものを見てもらいたい」。目と目をがっちり合わせる男が、強く願う。心底の本音だから照れずに言える。


「本当に僕の支えになってくれていますし、全国にいるライオンズファンの方々、今までもこれからも応援してくれるファンの皆さんの誰か1人でも欠けてしまうと、僕らにとっての力が出ない。そういうふうな存在です」


打撃と一緒だ。前例のない「1年かけての恩返し」はスケールも大きく、キャンバスは真っ白。自分らしく描く。高校野球を引退した24年前、携帯電話と四六時中にらみあい、運転免許をいかに最短日程で取得できるか、そのスケジューリングに真夏の情熱を燃やした。そんな戦略家の一面もうずくか。最後の契約更改を終えて最後ずくめの1年へ、いざ。全てをやり切ったあとに、栗山巧にしか言えない終わりの言葉が生まれる。【金子真仁】

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