
【写真】第6話ラストでは市松(北村匠海)にも驚きの展開が待ち受けていた
◆兆の正体は未来人で、四季の夫“ぶんちゃん”だった
文太たちに「世界を救うため」にと、“ちょっとだけエスパー”になれるEカプセルを渡した兆は、四季(宮崎あおい・「崎」は「たつさき」が正式表記)の混濁した記憶に現れる本当の夫“ぶんちゃん”だった。四季の記憶に、「小林ランドリー」とは異なる、別のクリーニング店で出会っていた、文人(ふみと)=ぶんちゃんとの出会いがよぎる。「HARMODIA」という会社もしくは研究所の社員証を持つ文人は、四季が「冷たくてつまらなそう」と感じた兆とは別人のような雰囲気をまとった男性だった。
文太が“ぶんちゃん”ではなく、文人だから“ぶんちゃん”。「兆さん?」と混乱する四季。これまであふれんばかりの(いや、あふれていました)かわいらしさで、文太だけでなく視聴者も魅了してきた四季の泣き叫ぶ姿に、胸が痛んだ。自分のボスが四季の呼びかける本当の“ぶんちゃん”だったと悟った文太の苦しさも、十二分すぎるほど伝わってくる。文太が「ノナマーレ」に乗り込んだのも当然だろう。そしてそこで、兆が未来人だと知ることに。文太の能力が、“触れる”ことによって発揮できるものだったことも効いていた。
思い起こせば、本作の空気は初回冒頭から、重く不穏なものだった。徐々に心の距離が近づいていく文太と四季の仮初夫婦の姿や、bit5のほんわかムードに、つい急に“コロコロコミックからアフタヌーン”の世界へと連れてこられたように思いがちであったが。
最初に見たのは、絶望の淵でビルの屋上に立つ文太だった。続くビルからの飛び降りを、VR映像と知らないこちらは、本当の光景のように思わされた。これまで話していたのが、実は立体映像の兆だったという事実も、「そうだったのか」と納得するしかない。だがVR映像に関しては、文太と目があった鳥に違和感があった。何か意味があるのだろうか。
|
|
|
|
第6話には、Young3の1人・九条(向里祐香)の高校時代の親友・八柳(小島藤子)とのエピソードもあった。昔から優秀だった八柳は、薬学Aチームの一員となり、見たこともない(おそらく未来の)レシピからEカプセルを作るアルバイトをしていたのだが、ほかにもミッション遂行のアルバイトが大勢いたこと、薬学チームはもうひとつのBチームが残されていることが分かった。身元確認をしたのが九条だったことから、八柳も文太らのように孤独な状況に置かれた人だったことも伝わった。だが八柳が最後に九条へシトラスの香のメッセージを残した際に見えた、目元の赤い筋だったのかは分からない。
「自分は兆しを作っているだけだ。兆しさえ作れば、人は簡単に迷い込む」は、何にでも通ずる言葉だが、果たしてどう動いていくのだろう。
◆こっちのけんとの主題歌から伝わる気持ち「間違いでも、守りたいだけ」
さて、本作の主題歌は、こっちのけんとの楽曲「わたくしごと」。伸びやかな歌声と、全体のキャッチーさが心地よく響く。この楽曲が、聴けば聴くほどあれこれ想像をめぐらせる歌詞になっている。そもそも“わたくし”とは誰なのか。「この世に僕がいないと誰か、困るのかなと、天井を見てた」の始まりに、文太の気持ちを歌っているようだが、捉え方によっては、1番は兆の気持ち、2番は文太の気持ちではないかとも感じさせる。
いずれにせよ共通して刺さってくるのが、「自分を変えても」「間違いでも」「守りたいだけ」というフレーズであり、第5話から続く、1万人と1000万人のトロッコ問題が浮かんでくる。10年後に亡くなる1万人の中に四季が含まれていて、その未来を変えるために兆は動いている。だが、その未来を変えると、結果的に1000万人が犠牲になると考えると、兆の行動が「間違いでも」「(四季を)守りたいだけ」につながるようにも思える。しかし、兆は本当に自分の大事な人のためだけに、舵を切る人間なのだろうか。どうもそう思うことができない。彼は、自分の愛を「ノナマーレ」にしても、本当に「世界を救うため」に動いているのではないだろうか。
|
|
|
|
第7話に向け、文太が2025年の文人を見つけ出したと思われる写真が公開されている。市松は命を取り留めたようだが、老化した半身がどうなっているのかは分からない。意図せずそうさせてしまった桜介(ディーン・フジオカ)も心配だ。予告編では四季が「この半年が消える」と話しており、さらに大きな転換を感じさせる。やはりカギを握っているのは、現段階で兆も市松も知らないという「白い男」(麿赤児)の存在か。そして文太が、兆の予測を超えた存在になってくれるのではないだろうか。(文・望月ふみ)
ドラマ『ちょっとだけエスパー』は、テレビ朝日系にて毎週火曜21時放送。

