小型魚の胚に注入、人工合成=ノロウイルスで新技術―治療薬やワクチン開発に利用へ・大阪大など

0

2025年12月02日 19:02  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

ゼブラフィッシュ=資料(AFP時事)
 ヒトに感染すると嘔吐(おうと)や下痢などを引き起こすノロウイルスについて、小型魚「ゼブラフィッシュ」の胚(成長した受精卵)を利用して人工合成する技術を開発したと、大阪大や和歌山県立医科大、大阪健康安全基盤研究所の研究チームが2日発表した。

 遺伝子の改変や人為的な増殖が容易になり、大阪大微生物病研究所の小林剛教授は「抗ウイルス薬やワクチンの開発に役立つ」と話している。論文は米科学アカデミー紀要に掲載される。

 コイ科のゼブラフィッシュは飼育しやすく、遺伝学や発生生物学の実験によく使われる。ノロウイルスはヒトの腸の細胞からつくったミニ組織で培養できるが、近年、ゼブラフィッシュの胚の方が効率良く、コストも安く培養できることが判明していた。

 ノロウイルスの遺伝情報は不安定なリボ核酸(RNA)だが、遺伝子の配列をいったん安定したDNAに置き換えてゼブラフィッシュの胚に注入すると、RNAのウイルスが生み出されて増殖する。研究チームは発光たんぱく質の遺伝子を組み込み、ウイルスの量を可視化することにも成功した。

 こうした人工ノロウイルスは、抗ウイルス薬候補の化合物の効果を調べたり、病原性を弱めた生ワクチンを開発したりするのに使えるという。 
    ニュース設定