完全ワイヤレスイヤホン市場の最新トレンド、あなたにぴったりの1台が見つかる!

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2025年12月03日 16:30  BCN+R

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完全ワイヤレスイヤホン市場の最新トレンドを解説
【完全ワイヤレスイヤホン最前線・3】完全ワイヤレスイヤホンの売れ筋は、いまや「手ごろな価格でそこそこ良い音」「高性能でブランド力のあるモデル」のどちらかに分かれています。全国主要家電量販店やネットショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」によれば、ここ数年で市場が大きく変化してきたとのことです。では実際に今、人気の価格帯やカラーはどこにあるのでしょうか。BCN総研のアナリストに話を聞きました。

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●二極化は2020年ごろに始まっていた

 現在、完全ワイヤレスイヤホンの販売構成比をみると、1万円未満の低価格帯が約4割、1万〜2万円未満が2割、そして2万円以上が4割を占めているとのことです。ちょうど真ん中の価格帯が薄くなり、上下の価格レンジに人気が集中しているのが特徴です。

 この「価格の二極化」は、実は2020年ごろに始まっていました。当時、Ankerなどの新興メーカーが1万円を切る価格で高機能なモデルを相次いで発売。それまで「完全ワイヤレスは高い」と感じていた層が一気に購入へと踏み切り、市場に低価格モデルが急増しました。

 一方で、アップルやソニーなどの大手メーカーは、円安やモデルチェンジの影響もあり、価格を上げつつも販売台数を維持。ブランドへの信頼と製品の完成度が、高価格帯の構成比を押し上げる結果になりました。

 BCN総研のアナリストはこう分析します。「22年以降は、1万円未満が安定して4割前後を占めています。安価で機能も十分なモデルが増えた一方、ブランド力で支持を集める高価格帯も根強い。中間層が少ないのは、どちらかに価値を見出す消費者が増えたからだと思われます」。

●台頭するAnker、ブランドで踏みとどまるソニー

 目立つのは、Ankerです。同社は、モバイルバッテリーなどで培った知名度を背景に、安定した品質と価格を両立。「必要十分な機能を手に取りやすい価格で」という戦略が受け入れられています。

 一方で、ソニーは高価格帯で安定した販売を維持。BCN総研のアナリストは「ソニーはブランド力を背景に、2万円前後という価格でも高い支持を得ています。アップルと同じく、安心して買えるブランドとしての信頼感が大きい」と話します。

 市場を見ると、価格だけではなくブランド体験そのものが購入の決め手になっていることが分かります。製品の機能差が小さくなるほど、「このメーカーなら間違いない」という心理的価値が、ますます重要になってきました。

●消費者が求める“ちょうどいいバランス”

 24年に実施したBCNのアンケートによると、購入時に重視するポイントは、「価格」「ブランド」「音質」「ノイズキャンセリング」「デザイン」「再生時間」「装着感」の順でした。最も重視されるのは価格ですが、「安ければいいということではありません」とBCN総研のアナリストは強調します。続けて「同じ価格帯の中でも、機能とのバランスを見て選ぶ人が多いといえます。例えばノイズキャンセリングの有無や電池の持ちなど、自分にとって必要な機能を冷静に判断している印象があります」とのことです。

 こうした価格と機能の釣り合いを探る購買行動が、市場の成熟を示しているともいえます。完全ワイヤレスイヤホンが登場したばかりのころは、「ワイヤレスで聴ける」こと自体が新しさでした。しかし今は、性能も安定し、比較しやすくなったことで、現実的で“納得感のある選び方”が主流になっているということです。

●定番はホワイトとブラック。ファッション性も広がる

 デザイン面では、いまも「AirPods」の影響が色濃く残っています。最も売れているカラーはホワイト、次いでブラック。多くのメーカーがこの2色を必ずラインアップしており、結果として市場全体の構成比でもこの2色が大半を占めます。

 BCN総研のアナリストによれば「色のトレンドには大きな地域差はありませんが、女性ユーザーは男性よりもカラーやデザインを重視する傾向があります」とのこと。アンケートでも、本体の色やケースのデザインを「購入時に重視する」と答えた割合は、男性よりも女性で高くなっています。

 特別色や限定カラーの販売も一部で行われていますが、売上全体に占める比率は高くありません。ただし、限定モデルは「推し色」や「季節感」をきっかけに購入されることもあり、ファッションの一部としてイヤホンを楽しむ文化が少しずつ広がっています。

●購入のタイミングにも“波”がある

 販売が大きく伸びるタイミングは、「3月」「7月」「12月」の三つ。3月は新生活の準備に合わせてスマホを買い替える人が多く、それに合わせてイヤホンを購入するケースが増えています。7月と12月はボーナス商戦やセール時期が重なるため、まとめ買いやプレゼント需要が高まる傾向にあります。

 また、購入チャネルを見ると、完全ワイヤレスイヤホンはテレビやPCと比べてネット購入の比率が高く、全体の3〜4割を占めます。ECサイトで手軽に買える一方、実店舗では「音を試したい」「装着感を確かめたい」というニーズが多く、試聴体験が購買を後押ししているようです。

●成熟市場の“次の一手”

 今後の展望について、BCN総研のアナリストは「完全ワイヤレスイヤホンはすでに完成形に近づいており、今後、大きな技術革新よりも付加価値の競争になります」と分析します。例えば、デザイン性、カラー展開、ブランド体験、アプリ連携の使いやすさなど。機能そのものよりも、使う時間をどう快適にするかが注目されていくでしょう。

 また、ヘルスモニタリング機能やオープンイヤー型など、新しい方向性の製品も登場しています。ただし、これらはまだ限定的で、価格への影響が大きいことから普及には時間がかかりそうです。

 「完全ワイヤレスイヤホンは、すでに誰でも使うものになっています。だからこそ、次に求められるのは自分に合うものをどう選ぶか。ブランドやデザインの魅力が、これまで以上に重要になっていくと思います」というのがBCN総研のアナリストの見解。ユーザーそれぞれのこだわりと楽しみ方という点で、完全ワイヤレスイヤホンは今も静かに進化を続けています。(マイカ・秋葉けんた)

秋葉けんた

編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。

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