画像提供:マイナビニュース● 離れて暮らす実家の家族のことを考えると、健康や片付けが思い浮かぶ人も多いのではないか。ぜひ「防犯」についても一緒に考えてみてほしい。もちろん自宅についてもだ。そのヒントになりそうなLIXILの「実家防犯セミナー」に参加してきた。
年末年始は1年で一番犯罪が多い時期
警察庁の統計によると、住まいを狙う犯罪が増加傾向にある。中でも侵入窃盗は、戸建て住宅で最も多く発生しており、空き巣は全体の4分の1を占めている。
今回のセミナーに登壇した防犯対策専門家の京師美佳さんは「不景気なときは犯罪が増えます。一般的な住宅街や古い戸建て住宅は防犯対策が追いついていないこともあり、狙われやすい傾向にあります」と説明する。
犯罪が発生しやすい地域は、防犯カメラなどの対策が手薄なほか、古い住宅(建具)は窓ガラスやサッシを壊しやすいところが少なくない。さらに、こうした住宅には高齢者が住んでいる確率が高く、現金を置いていることが多い――これが狙われる理由だ。
年末年始はさらに条件が悪化する。旅行や帰省などで留守になったり、ボーナスなどでまとまった現金が動くタイミングだったりと、犯罪者から見ると「狙いやすい家」が一気に増える時期なのだ。
犯罪者は門扉など正面からやってくる
セミナーでは、一戸建て住宅のイラストを見ながら「あなたが泥棒だったらどこから侵入する?」という問いかけが。
筆者は、なんとなく物陰になっている窓から侵入したり、大通りを避けて塀を乗り越えたりして侵入するんだろうと想像したが……。
違った。
京師さんによると、「正面玄関から堂々と入ってくるケースが一番多い」という。塀を乗り越えたりするとかえって人目につきやすいため、インターホンを押して反応を調べたり、「点検です」「営業です」など声をかけたりと、在宅状況を確認しながら様子をうかがうのだという。その上で、庭にまわりこみ、掃き出し窓を破って侵入するケースが多いそうだ。
「限られた予算の中で、防犯対策にお金をかけるならまずは窓。ここを突破されると、命か金品かのどちらかを失います」(京師さん)
まずは侵入経路である窓、玄関などを対策。余裕があれば、門扉や照明などに予算を回し、犯罪者が近づきにくい家づくりをすることが大切とのこと。
侵入に5分以上手間取ると、侵入者の7割があきらめる
防犯対策のポイントとしては、「音」「光」「時間」「人の目」という4つが紹介されたが、中でも重要なのは「時間」だ。財団法人 都市防犯研究センターによると、侵入に5分以上かかると侵入者の7割があきらめるというデータが示されている。
つまり、侵入経路として狙われることが多い「窓」において、時間をどれだけ稼げるかが防犯の大きな鍵だ。今回、4種類のガラスを実際に割ってみせるデモが行われた。
普通のフロートガラスはあっという間に大きな穴があいてしまった。ワイヤー入りガラスは火事のときに破片を落ちにくくするもので、実は防犯用ではない。むしろ音が立ちにくく穴を開けやすい。そのため、このガラスばかりを狙う窃盗団がいるというのだから驚きだ。強化ガラスは破片が粉々になり、むしろ侵入しやすそうとさえ思った。
この中で防犯効果が高いものが「合わせガラス」だ。ガラスとガラスの間に特殊なフィルムを挟んだ構造をしている。防犯性能試験をクリアした「CPマーク」が付いたガラスなら、「侵入までに5分」をしっかり稼げる。● 内窓とシャッターで防犯対策
窓ガラスを変えるだけでなく、内窓やシャッターを取り付けて防犯性能を上げる方法もある。
既存のサッシの内側に取り付ける「内窓」は、鍵やガラスが二重になるため、侵入までの時間を稼げるようになる。防犯だけでなく、結露防止や防音・遮音、断熱などのメリットもあるため、日常生活の快適性にもつながるポイントだ。
シャッターを窓に取り付けておけば、さらに防犯効果が高まる。電動タイプなら室内からのボタン操作やスマホアプリで開閉ができるので楽だ。
また、玄関ドアの防犯性能も向上している。スマホやキーホルダーで解錠できる電気錠、顔認証付きの玄関ドアなどだ。複雑な操作がいらないため、鍵そのものを忘れたり、内鍵をかけ忘れたりしても、システムでフォローできる。
門扉周りでは、インターホン、ポスト、宅配ボックス一体型の門柱が紹介された。訪問者とのやりとりを門柱で完結させることで、知らない人が玄関前まで立ち入ってこない環境を作れる。玄関先や庭に照明を付けることも、侵入しにくい環境作りに有効だ。
行動パターンをずらす、インターホンで対応することも大事
京師さんによると、高齢者は毎日決まったパターンで行動することが多く、留守になる時間帯などが予測されやすいという。そのため、たまには普段と違う時間に外出するなど、行動パターンに揺らぎを持たせることも大切だ。
また、インターホンを鳴らされたときに居留守を使うと、逆に侵入されてしまい、危険にさらされる。インターホンでしっかり対応することも、防犯として重要なポイントだ。
入院や出張などで自宅が長く無人になる場合は、見守りサービスへの依頼、スマートホームシステムを使った照明やシャッターの遠隔操作、防犯カメラなどによる異常の検知、声での威嚇など、人がいるように見せることも心がけたい。
リフォームのタイミングで防犯対策を
防犯というと、どうしても物騒な話や怖い話になってしまうが、内窓や多機能な門柱など生活の質を上げつつ防犯につなげる方法が数多くある。特に内窓は、冷暖房の効率が向上するため、電気代の節約にもなるからうれしい。年末年始、実家で家族と話す人も多いだろう。リフォームの計画があってもなくても、家をどう守っていくかについて話し合ってみてはいかがだろうか。
伊森ちづる 家電・家電量販店ライター。家電量販店の取材や家電メーカーの取材、家電製品のレビューを中心に活動。売り手、メーカー、ユーザーという3つの視点で家電を多角的に見るのが得意。雑誌、ニュースサイト、ラジオ、シンクタンク、自治体での情報提供など、多方面で活躍中。最近は、テクノロジー×ヘルスケア、テクノロジー×教育などにも関心あり。趣味は音楽鑑賞(クラシック)とピクニック。 この著者の記事一覧はこちら(伊森ちづる)