
日本でも親しまれている料理、「カルボナーラ」のはずですが…いま、カルボナーラの作り方をめぐり、ニセモノなのかホンモノなのか大議論になっています。
【画像を見る】「カルボナーラ」だけではない?8月に騒動となったイタリア料理
「カルボナーラ論争」きっかけは農業相のSNS投稿ローマの人
「伝統的な材料で作っていないなら、カルボナーラと呼ぶべきじゃない」
「おいしいかもしれないが、本物ではない」
イタリアで起こった「カルボナーラ」をめぐる騒動。きっかけは11月、イタリアの農業相が投稿したSNSでした。
ロッロブリージダ農業相(SNSより)
「『イタリア風』を代表する最悪の商品だ。EU議会の売店に並んでいるなんて許し難い。直ちに調査するよう要請した」
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“最悪の商品”と怒りを露わにしたのは、ベルギー・ブリュッセルにあるEU議会の売店で売られていた「カルボナーラソース」。
これがイタリアの政界を巻き込む騒動となっているというのです。
記者
「問題となったカルボナーラソースは、ベルギーの大手スーパーが製造したものでした」
日本円で約800円で売られている「カルボナーラソース」。ブリュッセルで本格イタリアンの店を出しているイタリア人シェフに見てもらうと…
イタリア人シェフ カメルロ・クッパリさん
「クリーム入りですね。“パンチェッタ”ですか、“グアンチャーレ”ではなくて。これは違いますね」
イタリア人シェフが指摘したのは、使われている豚肉の部位。瓶詰めのソースにはパンチェッタ(=塩漬けした豚バラ肉)が入っていますが、イタリアの伝統的なレシピではグアンチャーレ(=塩漬けした豚ほほ肉)を使うことになっているといいます。
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ちなみに、多くの日本人にとってのカルボナーラは、生クリームソースにベーコンがトッピングされたものがおなじみですが、本格イタリアンのカルボナーラは…
イタリア人シェフ カメルロ・クッパリさん
「グアンチャーレにペコリーノチーズ、そして、黒コショウと卵、新鮮なものを使います。それだけです」
グアンチャーレをカリカリになるまで炒めて、他の材料と混ぜていました。
イタリア人シェフ カメルロ・クッパリさん
「悪いが、これがカルボナーラです。カルボナーラはグアンチャーレで決まります」
“最悪の商品”と言われたソースで作ったカルボナーラは…
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イタリア人シェフ カメルロ・クッパリさん
「見た目も違いますね。分かるとおり、ふたつの香りは全く違います」
パッケージにイタリアの国旗が使用されたこともあり、ベルギーの「カルボナーラソース」を農業相が問題視。
商品はすでにEU議会の売店からは撤去されていますが、製造・販売するベルギーのスーパーは「何も法律に違反していない。商品やパッケージを変更する理由はない」とイタリア側の物言いに反発しています。
ただ、イタリア料理をめぐる騒動は「カルボナーラ」だけではありません。
カルボナーラのほかにも騒動が?背景には政治的目的の可能性羊の乳でつくったチーズに黒こしょうを和えたパスタで伝統料理の「カチョ・エ・ぺぺ」。
2025年8月、イギリスで料理サイト「グッド・フード」がこの料理を掲載したところ、本来とは違うレシピが掲載されたなどと、イタリア国内で多くの反感を買ったとイギリスのBBCが報じました。
また、BBCによれば、イタリアの飲食業界団体がローマにあるイギリス大使館に申し立てを行ったということです。
こうした「イタリア料理」をめぐる騒動について市民は…
ローマ市民
「カルボナーラは人気で、認知度も高いってことだね(Q.でも伝統的なレシピを守るべき?)はい。そう思います」
「外国では限られた材料しか手に入らない場合もある。だから別に悪いことだと思わない」
その国や土地に馴染むアレンジがされながら、世界中で親しまれる「イタリア料理」。
イタリアの食文化に詳しい専門家は、今回の騒動には政治的な背景があると指摘します。
立命館大学 食マネジメント学部 石田雅芳 教授
「現在ユネスコの無形文化遺産にイタリア料理をいま申請したところなんですね。農相は急にメイドイン・イタリーな気持ちになってるんだと思うんですね」
「世界に発信する直前で、こういうアクションを起こしたというのは、ある程度、政治的な計算もあったのではないかなと思います」
都内にある店「チエロ・エ・マーレ」では、伝統のレシピでつくったカルボナーラとオリジナルのカルボナーラの両方を楽しむことができます。
今回の“カルボナーラ騒動”について、矢口総料理長は…
チエロ・エ・マーレ 矢口喜章 総料理長
「イタリア料理は変わらない美徳みたいなところがあるので、和食もそうじゃないですか。変わらない良さっていうのがあるので、王道は美味しいですよ」
「(本場を)リスペクトしながら再構築する、ブラッシュアップする。それでお客さんに喜んでいただく。敬意を表してやらないといけないのかなと僕の見解ではあります」
小川彩佳キャスター:
自分の国の食文化をこよなく愛して、こだわって、守っていこうとするところは、日本もイタリアも共通しているところだと思います。
トラウデン直美さん:
世界中でいろいろな文脈で、文化の盗用が問題になったりもしますし、国の文化に誇りを持つことはとても大事な価値観だとは思います。
しかし、元は「食を楽しみたい」「美味しいものをこの国でも食べたい」というポジティブなところから来ているはずなので、そこまで強い反発は想定していないと思うんです。
日本でも、カリフォルニアロールのようなものが海外で寿司として出されていますけれども、それはそれで日本の人たちは「寿司ではないけどね」と思いながらということがあります。
きっと「これがカルボナーラです」と言って出されているところに違和感がある。だとしたら、「いや本物はこっちにあるから、うちの本場の方を食べてください」というようなアピールの仕方をしていただけたら、より価値が高まるのかなと思ったりもします。
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〈プロフィール〉
トラウデン直美さん
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行

