「私らに“死ね”と言うのか」万博工事費“3千万円未払い”被害の下請け業者が悲痛の叫び…協力要請した吉村知事は“切り捨て”か

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2025年12月05日 06:10  web女性自身

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「夏の暑い日も、雨の日も、毎日がんばってくれた3万人の万博ボランティアのみなさん、おひとりおひとりに、ありがとう」



10月13日に行われた「大阪・関西万博」(以下、大阪万博)の閉会式で、目を潤ませながら、そう語ったのは吉村洋文大阪府知事(50)。その後も、警備員、医療従事者、子供を引率した学校の先生、スタッフなど万博に携わった人たちを挙げていき、「ありがとう」と繰り返した。だが、そのなかにパビリオンの建設に携わった工事関係者は含まれなかった。



「最大約280億円の黒字になった」と発表された大阪万博。その華やかな舞台裏で、深刻な痛手を負った人たちがいる。万博の陰の立役者とも言える“下請け業者”だ。



「工事費の未払いの被害は 11カ国のパビリオン・30社以上、推計10億円以上に及んでいます。孫請け・ひ孫請けにまで連なる中小企業の多くが代金を受け取れず、会社の存続さえ脅かされています」



そう話すのは、大阪万博について取材を続けているジャーナリストの西谷文和さんだ。



■国のためと思って引き受けたのに



アメリカ館の三次下請けとして、壁の内装仕上げ工事を担当した株式会社SEIKEN(千葉県市川市)の顧問、岸田宗士郎さんはこう明かす。



「日本が主体となる国際イベントですから、オファーが来た以上は“日本の名誉”のためにもやるしかない、そんな思いで引き受けたんです」



SEIKENは、「最終的な総受注費約1億円のうち、追加変更費用の約3000万円が未回収となっている」と訴えている。二次下請けだった有限会社ネオ・スペースが5月に破産申立をしたからだ。話は、昨年の秋頃に遡る。



「知り合いの業者から、『アメリカ館の内装を受けてくれないか』と打診があったんです。すでに、『開幕に間に合わない』と言われていましたが、現場に入って衝撃を受けました。事前説明では『施行は8割終わっている』と聞いていたのに、実際は1割しか終わっていなかった。電気設備工事も終わっていない。施工には順序がありますから、その状態では壁の内装に取りかかれる状態ではありませんでした」(岸田さん)



にもかかわらず、「人を出してくれ」と言われ、現場に職人を送ったものの、仕事が進められないまま人件費や旅費が“追加変更費用”として膨らんでいったという。



「本来なら、基本契約から追加変更契約まで書面で契約を交わしますが、『緊急だから』と言われ、口約束を信頼してやらざるをえない状況でした」(岸田さん)



「これ以上、人は出せない」と、いったん断ったものの、「ネオ・スペースや、一次下請けの会社からも、“必ず追加費用は支払うから”と言われ従うほかなかった」という。「そもそも元請け側の管理体制も、ずさんだった」と岸田さんは考えている。



「元請けのESグローバル・ジャパン株式会社や、一次下請けの会社、二次下請けのネオ・スペースとの間でも、正式な契約書が一つもなかったことが後から判明しました。建設業法では書面契約が義務づけられていますが、現場は“開催ありき”の緊急性で口約束が横行していたんです」(岸田さん)



報道によると、ESグローバル・ジャパンは「一次下請けには滞りなく工事代金の支払いを行っている」と述べているが、二次下請けのネオ・スペースが倒産したため、追加変更費の約3千万円が支払われず、会社の資金繰りは悪化――。



「社長の息子は大学を辞めざるをえない状況になりました。うちだけじゃありません。従業員に給料が払えない会社もあって、どんどん人が辞めていっている状況です。国のためと思って引き受けたのにこの仕打ち。私らに“死ね”と言うのでしょうか」(岸田さん)



倒産寸前の企業も多く、「すでに自殺者が出ていてもおかしくない」と、岸田さんは声を震わせる。



前出の西谷さんによると、“未払い”には2パターンあり、ひとつは、岸田さんのアメリカ館やアンゴラ館にみられる“破綻・中抜き型”だという。



「アンゴラ館では、三次下請けの株式会社一六八(いろは)建設から、四次以下に代金が一切支払われませんでした」(西谷さん)



一六八建設は、経理担当者が売上金を着服したと主張。業務上横領の疑いで経理担当者を刑事告訴している。また同社は、“無許可”で建設を請け負ったとして、代表ら3人が略式起訴された。



もう1パターンは、ドイツ館やルーマニア館などにみられる“支払拒否型”だという。



「元請けのフランス企業GLイベンツ・ジャパン株式会社が、下請けに支払いをせず、複数の下請け会社から訴えられています。『壁の色が気に入らない』など言いがかりをつけ、契約金の半分しか支払わないままフランスへ撤退したんです」



全国商工業界連合会によると、現在、東京都の都市整備局に対し、GLイベンツ・ジャパン社とESグローバル・ジャパン社の調査を求めているという。





■中小企業に協力を要請していた吉村知事



当初、こうしたパビリオンの建設は、大手ゼネコンが請け負う予定だったという。



「大手ゼネコンは、こうしたトラブルを見込んで断った。そこで吉村知事と万博協会は中小企業を回って『頼むから助けてくれ』と依頼して回った。にもかかわらず、吉村知事は“民民の問題”と言って突っぱねている。行政の長として責任を取るべきでしょう」(西谷さん)



2023年8月9日、海外パビリオンの建築の遅れを受け、吉村知事はこう語っている。



「改めて関西の中小の建設事業者のみなさんに要請をいたします。やはりパビリオン建設を進めていくうえで、大手事業者だけではなく、中小の建設事業者、設備事業者の確保も課題になっているという声もあがっていることを受けています」



実際に、さまざまな関係団体を通じて、中小企業への呼びかけが行われた。しかし、未払い問題が明らかになると、吉村知事は「未払いは解消されるべき」としたものの、「協会が(工事費を)立て替え払いするというのは法的には私も難しいんだろうなあという風には思っています」(2025年8月5日の会見)と語った。



岸田さんは、憤りを込めて、こう訴える。



「万博協会・大阪府・大阪市・日本政府の連帯責任だと思います。とくに万博協会が掲げている“人権方針”には、〈国際労働機関(ILO)の労働基準に従い、人権侵害が生じた場合は解決に取り組む〉という主旨が明記されています。それならば、下請け業者の声に耳を傾け、まずは建て替えて支払うべきではないでしょうか。弱者を切り捨てて終わりにしないでほしい」



吉村知事は、万博を“成功”に導いた建設業者の声に耳を傾けるべきだろう。

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