限定公開( 19 )

明治のヨーグルトが豆腐売り場に並んでいる。「明治とうふ感覚ヨーグルト YOFU(ようふ)」(希望小売価格160円)は、2025年10月から四国エリア限定で販売している商品だ。しょうゆなどの調味料をかけて食べることを前提に開発し、豆腐のように副菜やおつまみとして楽しめる。
なぜ豆腐のように食べるヨーグルトが生まれたのか。その背景を聞いた。
YOFUは濃縮した乳原料と厳選した乳酸菌を使い、酸味を抑え、しょうゆや出汁などの塩味・旨味に合わせやすくした。たんぱく質は5.3グラムで、同量の絹ごし豆腐と同水準。カルシウムは2倍以上含まれている。
冷や奴のようにネギやショウガ、しょうゆをかける食べ方を推奨しており、カップのままポン酢やめんつゆ、塩とオリーブオイルをかけるだけで、洗い物を増やさず、副菜やおつまみとして一品追加できる。時短・タイパを重視する消費者ニーズにも応えている。
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●新たな食シーン開拓を目指し「豆腐」に着目
開発の狙いは、ヨーグルトの新たな食シーンを作り、市場を拡大することだ。ヨーグルトは朝食や間食で食べられることが多く、夕食・夜の食シーンには広がっていない。「食卓への登場頻度を向上させることができれば、市場はもっと拡大すると考えた」と明治の商品担当者は説明する。
そこで着目したのが豆腐だ。豆腐は冷奴や麻婆豆腐など、食事の一品として夕食の食卓に並びやすい。
ヨーグルト市場で新商品を投入しても既存商品と同じように受け止められ、夕食・夜での食事やおつまみとしての食シーンが思い浮かびにくい。一方で、豆腐のように食べられると提案すれば、食事の一品として捉えてもらいやすく、夕食・夜の食シーンを開拓できると考えた。
同社の事前調査でも、「豆腐感覚で食事に合うヨーグルト」という点が肯定的に捉えられ、「夕食の1品として」「おつまみとして」といったシーンが想起されたという。
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加えて、豆腐の市場規模は中長期的に減少傾向が続いており、新商品の投入やプロモーションも少ない。商品担当者は「停滞する市場に目新しい商品を投入し、プロモーションを実施することで市場の活性化を図りたい」と狙いを語る。
●塩味・旨味に合う設計を追求
現在の形になるまで、約2年半の開発期間を要した。「豆腐感覚」を実現するには、調味料の塩味や旨味との相性が重要だったという。「乳酸菌や原材料の選定、製造工程の工夫などに苦労した」と商品担当者は振り返る。
厳選した乳酸菌を使用し、寒天を加えることで、通常のヨーグルトとは異なる食感と味わいを実現した。酸味を極力抑えたことで、しょうゆやポン酢、出汁などの調味料と合わせやすくした。
豆腐との差別化ポイントとして、優位性も打ち出した。カルシウムなどの栄養を摂取できるほか、賞味期限が長く、カップのまま手軽に食べられる。パッケージデザインでは、健康・栄養の表記は控えめにし、「豆腐のイメージ」や「おいしそうなシズル感」を重視した。
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初期の販売エリアを四国に絞った理由について、商品担当者は「四国は豆腐の消費量が比較的多い。豆腐売り場での展開を想定していたため、立ち寄り率が高く、目にとめてもらいやすいと考えた」と説明する。
●2026年上期までの実績でエリア拡大も
実数は非公開だが、発売当初は計画比140%程度と好調な滑り出しを見せ、その後11月度時点では同約100%で推移している。試食販売では、100個以上販売する店舗もあり、1人の客がまとめて購入するシーンも見られた。
明治は「ヨーグルトに塩味や旨味と合わせる」という食べ方が消費者に受け入れられたと見ている。加えて、店頭施策やプロモーションを重点的に実施したことに加え、メディア露出で認知度を高められたことも、計画通りの売れ行きを維持できている要因と分析している。
購入者からは「ヨーグルトに出汁しょうゆなどをかけて食べるのが新鮮でおいしい」「栄養バランスが良く健康的」といった声が寄せられている。
全国展開や販売エリアの拡大については、2026年上期までの販売実績を踏まえて検討する。販売実績や消費者の声、新しく生まれた食べ方や利用シーンといったフィードバックを集め、判断する考えだ。
減少傾向が続く豆腐市場への参入という戦略が、ヨーグルト市場の新たな成長エンジンとなるか。
(カワブチカズキ)
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