
楽天モバイルの契約数が2025年12月25日、1000万回線を突破した。2020年4月のサービスインから、約5年8カ月での達成となった。2025年12月25日のイベントでは、リアルタイムで契約数がカウントされる様子をモニターに表示。当初は999万9931回線だったが、その後の更新で1000万54回線と表示され、無事に1000万回線を突破した。
1000万回線には楽天モバイルのコンシューマー向けサービスに加え、BCP(Business Continuity Plan用途のプラン)、法人向け「Rakuten最強プラン ビジネス」、モバイルWi-Fiルーター「Rakuten Turbo」、MVNOやMVNEの回線数も含む。BCPを除くと991万回線、MNOのみでは914万回線となる。
同社はかねて、2025年内に1000万回線を達成することを目標に掲げていた。楽天モバイルの回線数は11月7日時点で950万回線に達していたが、そこから約1カ月半で50万回線を獲得した形だ。
12月25日のイベントでは、ゲストにお笑いタレントの藤森慎吾さんを迎え、楽天の守護神とされる愛宕神社の「だるま」の右目を描き入れる演出が行われた。三木谷氏によれば、このだるまは1000万回線突破を祈願して左目を入れ、長らくオフィスに飾っていたものだという。藤森さんが見守る中、三木谷氏は自ら筆を取り、目標達成の証として空白だった右目を描き入れた。
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●楽天モバイルの過去5年間の歩み:完全仮想化とプラチナバンドへの挑戦
楽天(現楽天グループ)が携帯キャリア事業への参入を表明したのは2017年12月のことだった。当時、日本の通信市場は既存3社による寡占状態にあり、高い通信料金が長年の社会課題となっていた。楽天は2014年10月に提供開始したMVNO(格安スマホ事業)での実績を土台に、2018年1月には楽天モバイルネットワーク(現楽天モバイル)を設立。自社回線を持つ第4のキャリア(MNO)として参入を決定し、市場の競争を促進する役割を担った。
楽天モバイルが採用した戦略は、世界でも類を見ないほど「野心的」なものだった。2018年4月に総務省より4G周波数(1.7GHz帯)の割当を受けると、同社は同年12月に基地局建設を開始。「世界初のエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワーク」を構築した。従来の通信ネットワークは、高価な専用ハードウェアを物理的に設置・維持する必要があり、これが多大な設備投資と運営コストの要因となっていた。しかし、楽天モバイルはこれをソフトウェア化し、クラウド上で動作させることで、ハードとソフトを完全に分離させた。
それにより、安価な汎用(はんよう)サーバでの運用が可能となり、設備投資を大幅に抑制することに成功した。また、ソフトウェアのアップデートだけで迅速な機能拡充や障害対応ができる柔軟性を確保し、5G時代を見据えた機動的なネットワーク基盤をこの時期に確立した。2019年2月には完全仮想化ネットワークの実証実験に成功し、同年4月には5G周波数の割当も受け、次世代通信への布石を確実に打っていった。
そして2019年10月、楽天モバイルはMNOとして歴史的な一歩を踏み出した。当初は5000人を対象とした「無料サポータープログラム」からのスタートだったが、2020年4月には本格サービス「Rakuten UN-LIMIT」を開始した。データ通信無制限、かつ専用アプリによる国内通話無料という、従来のキャリアでは考えられなかった破壊的な料金プランは市場に大きな衝撃を与え、同年6月には早くも申し込み数が100万回線を突破した。
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あわせて同社は自社端末の開発にも心血を注いだ。2020年1月には世界最小・最軽量の「Rakuten Mini」を発売。同年9月の5Gサービス開始時にはインカメラ内蔵ディスプレイを搭載した5Gスマホ「Rakuten BIG」、12月には「Rakuten Hand」など、独自の技術力を象徴する端末を次々と市場に送り出した。2020年11月には、各種手数料を無料化する「ZERO宣言」を発表。ユーザーを縛る手数料を撤廃することで、モバイル市場全体の流動化を加速させる契機となり、12月には申し込み数が200万回線を突破した。
基地局整備のスピードも異例のものだった。当初はパートナー回線の借用を前提としていたが、全国で基地局建設を急ピッチで進め、2022年2月には楽天回線エリア人口カバー率96%を当初の予定より4年前倒しで達成した。2021年4月には「Rakuten UN-LIMIT VI」とともにiPhoneの取り扱いを開始したことも重なり、料金プランに磨きがかかるのと同時に端末ラインアップの拡充を果たした。2022年3月には実店舗数が1000店舗を超え、ユーザー接点の拡充も進んだ。
2023年に入ると法人需要の開拓も本格化し、1月に「楽天モバイル法人プラン」の提供を開始。同年6月には、ローミングエリアでの制限を撤廃した「Rakuten最強プラン」へとサービスを刷新。これにより、自社回線か否かを意識することなく、全国どこでも無制限で高速通信が利用できる環境が整った。
そして、楽天モバイルの過去5年間の歴史において最大の転換点となったのが、悲願であった「プラチナバンド」の獲得だ。2023年10月に700MHz帯の特定基地局開設計画が認定されると、同社は自社の強みである完全仮想化技術の知見をフルに活用。極めて短期間で商用化の準備を整え、2024年6月に商用サービスを開始した。その際に同社は、長年の課題であった屋内や地下でのつながりにくさが大幅に改善されたことをアピールしていた。この時点で契約数は700万回線に達していた。
2024年2月から5月にかけては、「最強家族プログラム」「最強青春プログラム」「最強こどもプログラム」といった幅広い世代向けの割引施策を次々と展開。同年9月には「最強シニアプログラム」も開始し、全世代を網羅する体制を整えた。これらの施策が奏功し、2024年10月には800万回線、2025年2月には850万回線を突破した。
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2025年4月、楽天モバイルは本格サービス開始から5周年という大きな節目を迎えた。参入当初、完全仮想化ネットワークの実現を疑問視する声もあったが、同社はそれを現実のものとし、日本の通信料金の大幅な引き下げに寄与する存在となった。楽天グループの多種多様なサービスと連携した「楽天エコシステム」との相乗効果は、他社が簡単にはまねできない独自の強みとして確立された。
同年10月には、新料金プラン「Rakuten最強U-NEXT」の提供を開始。月額4378円(家族割引適用で4268円)で、無制限のデータ通信とU-NEXTの動画・電子書籍サービスをセットで利用可能にした。通信とエンタメを融合させた「エンタメバンドル」型プランであり、サブスクを多用する層にとって利便性とコストパフォーマンスを両立させた戦略的なサービスといえる。
●ラストスパートで勢い増した要因 「どぶ板」営業も影響か
これまでの歩みを振り返ると、2025年11月7日時点で950万回線だった契約数が、わずか1カ月半で50万回線を上積みしたことになる。この驚異的なラストスパートの背景には何があったのか。12月25日の会見後、三木谷氏は囲み取材に応じ、その要因について「大口の企業の契約などもあったので、ラッキーな部分もあったと思う」と語った。謙遜した表現ではあるが、法人契約の積み上げが数字を押し上げたことは間違いない。
しかし、要因はそれだけではないようだ。楽天モバイル広報によると、三木谷氏だけでなく、役員や従業員全員が法人顧客への商談や声がけを行うなど、全社一丸となった営業活動があったという。いわゆる「どぶ板営業」ともいえる地道な努力が、1000万回線という数字に響いているようだ。広報担当者は「三木谷が言及しているのはそうした『法人顧客からの契約獲得』の部分だが、それ以外にも2024年9月末に他社様が値上げを発表された際の反響も大きかったと考えている」と分析する。
競合他社が実質的な値上げやプラン改定に動く中、楽天モバイルはRakuten最強プランの価格を維持し続けている。この姿勢が、物価高に直面する消費者や企業の支持を集めた。「ずっと安く使えて安心なのは楽天だよね」という声や、経費削減を迫られる法人からの「料金が無制限で使えるのであれば、経費削減のために安い方がいい」という需要が急増したという。三木谷氏も取材に対し、「やはり円安になってきて、携帯電話だけでなく他の物価も上がっていく中、なかなか日本の経済も大変になっていってしまうのではないかと危惧している。いろいろな事情はあると思うが、私どもはできる範囲で頑張っていきたいと思っている」と、価格維持への強い意志をにじませた。
【訂正:12月25日22時55分】初出時、楽天モバイルがワンプランを維持していると記述していましたが、2025年10月以降はワンプランではなくなったため、当該記述を訂正しました。
また、「メディア報道やSNSでの拡散も追い風となった」と広報は話す。「U-NEXT」との連携プランなど、エンターテインメントサービスとの親和性の高さも、新規顧客の流入を促した要因の1つだ。「楽天モバイルなら安く見放題になる」という口コミや、家族間での紹介も活発に行われ、まさに「人とのつながり」による信頼関係が契約数増加を後押ししたといえる。
●1000万回線は「通過点」と捉える 2026年開始の衛星通信にも言及
悲願の1000万回線を達成した三木谷氏だが、その表情に慢心はない。「長いような、短いような……。でも、やはりまだ通過点だと思っているので、ここで慢心せず、逆にサービスがよりよくなるように頑張っていきたいと思う」と語る言葉からは、既に次なるステージを見据えていることがうかがえる。具体的な数値目標こそ明言しなかったものの、「一人一人のお客さまに対して満足度をさらに上げていくとか、ネットワークをさらによくしていくとか、やることはまだ山のようにある」と、品質向上への意欲を燃やす。
今後のサービス展開において、三木谷氏が「次の大きな目玉」と位置付けるのが、衛星通信プロジェクト「AST SpaceMobile」との連携だ。1000万回線突破イベント前日の12月24日には新型衛星の打ち上げが成功し、将来的には衛星から直接スマートフォンへのブロードバンド通信が可能になるという。「日本においては自然災害が非常に多いので、どんな状況になってもつながるということは、国にとっても重要なプロジェクトだ」と三木谷氏は強調する。プラチナバンドを活用したこの技術は、山間部や離島を含めたエリアカバー率を100%に近づけるための切り札となる。
一方で、足元のネットワーク品質における課題も認識している。三木谷氏は「KDDIのローミングサービス提供者をはじめ、多方面からの協力があったからこそ、ここまでたどり着くことができた」と振り返る一方で、楽天モバイルのユーザーはデータ使用量が非常に多く、平均で30GB近く、ヘビーユーザーでは100GBに達することもあるという。「正直言って、他社さんよりも圧倒的に多い」と三木谷氏が認める通り、トラフィックの増大はネットワークへの負荷となる。特に都心部の密集地における通信品質の維持は喫緊の課題だ。三木谷氏は「都内の地下鉄、それから山手線についてはだいぶ改善し、見えてきたかなと思っているので、それは当然やるということと、5Gの基地局の設置を急いでいく必要があると思っている」と述べ、インフラ強化への投資を継続する姿勢を示した。
完全仮想化技術による価格破壊から始まり、プラチナバンド獲得、それから1000万回線突破と、常識を覆し続けてきた楽天モバイル。その挑戦は、衛星通信による「空の産業革命」や、高密度な5Gネットワークの構築へと続いていく。1000万という数字は、単なる到達点ではなく、日本の通信インフラを支える主要キャリアとしての新たなスタートラインといえるのかもしれない。
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