限定公開( 1 )

半導体やレアアース(希土類)の扱いが、国際的な議論になっていることはよく知られている。国家の安全保障問題として扱われ、その確保や関与が国家の行く末を左右しかねないといっても大げさではない。
言うまでもないが、半導体は世界の先端ビジネスを支える重要な要素だ。特に2026年以降はAIの普及がさらに進み、早ければ2027年には人間の知能を超えるようなASI(人工超知能)のレベルにまで進展していくと見られている。ビジネスのみならず、日常生活にも深く入り込むことが予想されている。
そうなると、ますます半導体、さらに製造に必要となるレアアースの重要度も上がっていく。最先端の製品にもレアアースは不可欠だ。
そんな半導体を巡って、最近、世界で大きな動きが2つあった。
|
|
|
|
まずは12月12日、米国や日本、韓国、オーストラリアを中心とする新たな多国間協力の枠組み「パックス・シリカ(Pax Silica)」の発足が正式に発表された。そして、米国がこれまで厳しく規制してきた中国への先端半導体の輸出を一部緩和する決定をした。つまり、トランプ政権が方針を変更し、中国に半導体を売ってもいい、としたのだ。
半導体やレアアースを巡る環境が変化する中、その注目度は今後さらに高まる可能性がある。今や国家の影響力をも左右する半導体やレアアースについて、2026年の展望を考察したい。
●中国が作り上げた「レアアースの優位性」
パックス・シリカは、AI技術に不可欠な半導体や重要鉱物の確保に向けた取り組みだ。シンガポールやオランダ、英国、イスラエル、UAEなども関与する。パックス・シリカという名称は、ラテン語で平和を意味する「パックス」と、半導体製造で使われる「シリカ(二酸化ケイ素)」を合わせた造語だ。
サプライチェーンのセキュリティを強化し、中国を念頭にした依存関係などを解消するために協力していくことを確認した。米国のジェイコブ・ヘルバーグ国務次官はこう述べている。
|
|
|
|
「20世紀は石油と鉄鋼で動いていたが、21世紀はコンピュート(計算能力)とそれを支える鉱物資源によって駆動する。この歴史的なパックス・シリカ宣言は、エネルギーや重要鉱物から高度な製造、モデル開発に至るまで、明日のAIエコシステムを同志国が確実に構築していくための、新たな経済安全保障上の合意の到来を告げるものだ」
そもそもレアアースとは、31鉱種あるレアメタルの一種で、17種類の元素の総称だ。
中国はずいぶん前から、レアアースの重要性に気付いていたとされる。中国の最高指導者だった?小平は1992年、重希土類(重レアアース)の産地である江西省を視察して、「中東有石油、中国有稀土(中東には石油が、中国にはレアアースがある)」と発言。「一定把我国稀土的優勢発揮出来(中国のレアアースの優位性を必ず発揮させなければならない)」という趣旨の指示もしていたという。
30年以上たった今、?小平の言葉がまさに現実になっている。中国は現在、政府による補助金や環境汚染を度外視した開発の推進によって、レアアースの分離・精製を行える数少ない国の一つになっている。分離・精製分野のシェアは90%に及び、レアアース全体の供給でも世界で70%のシェアを占める。
中国はその優位性を外交カードとしても使っている。例えば、2010年に尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した際、中国が輸出枠の大幅な削減や禁輸措置に近い方針を打ち出したことで世界が動揺した。結果的に、日本や米国、EUが「中国による輸出規制は不当な貿易制限」として2012年に世界貿易機関(WTO)に提訴。2014年に日米欧側の勝訴が確定し、中国は輸出枠制度の撤廃に追い込まれた。
|
|
|
|
レアアースが手に入らなければ、半導体の製造もままならない。2026年も引き続き、レアアースの確保が日本をはじめとする先進国の大きな課題である。その動向から目を離すべきではないだろう。
●米国は対中国の「半導体戦略」を転換
レアアースと同様に、半導体の動向も注目されている。
これまで米国は、中国へのハイエンドな半導体の輸出を厳しく規制してきたが、それが一転した。トランプ政権のAI・暗号資産の責任者で「AI皇帝」と呼ばれるデービッド・サックス氏を中心に、中国との戦いにおける先端技術の扱いを変えようとしているのだ。
12月9日、トランプ大統領が自身のSNSである「トゥルース・ソーシャル」でこんな投稿をした。
「私は中国の習主席に対し、米国は強固な国家安全保障を維持できる条件下において、中国およびその他の国の承認された顧客へのNVIDIA製『H200』製品の出荷を許可する旨を伝えた。習主席は前向きに応じた! 25%が米国に支払われることになる」
この方針の意図は、最新鋭よりも少しだけ性能を落とした半導体を中国に提供することで、米国のデータ基盤に依存させることだ。それが米国にとって有利になるという。要は、米国が管理する半導体を使わせて中国の動きをコントロールする、ということだ。
その戦略がうまくいくかは未知数だ。まず、中国政府が直ちにこの発表に反応し、「拒否する」と見解を明らかにしたという。米国の思惑には乗らないぞ、ということだろう。というのも、中国も独自にファーウェイ製の半導体などを国内で普及させようとしており、より優れた半導体がどんどん入ってくると困る、という事情もある。
このトランプ大統領の方針転換には反発も起きている。ジョー・バイデン政権で大統領補佐官だったジェイク・サリバン氏は「中国を中毒にできるという議論は通用しない。彼らが今米国製チップを欲しがる理由は単純だ。米国のチップを手にして、AI競争での遅れを埋め、独自のチップ開発で米国に追いつきたいのだ」と指摘している。
●ビジネス影響拡大が懸念される2026年
こうした動きに、日本はどう対応すべきか。高市総理の「台湾有事が存立危機になる可能性」を述べた発言以降、日中関係は悪くなっている。ただ、中国は日本に対して、レアアースの輸出規制や禁輸措置を行っていない。
今後、関係がさらに悪化すると、レアアースなどが関係する措置をとる可能性がある。そうなると、日本のビジネスにも大きな影響を及ぼすだろう。
中国は2025年10月、「商務部公告2025年第61号」を発表。中国原産のレアアースを使った海外製品について、他の国に輸出する場合に中国の許可を必要とする輸出規制を実施すると明らかにした。また軍事用途については、原則不許可にするという。これが実施されたら、中国のレアアースを使った日本の製品を海外に販売する際、中国の許可が必要になる。そうなると日本企業にも混乱が生じるのは間違いない。
これに対してトランプ政権は、11月の米中通商交渉で、この規制の施行を1年間(2026年11月まで)、中国政府に停止させた。しかし、撤回ではなく停止に過ぎないため、日本を含む中国国外の企業は2026年、代替調達先を探すか、様子を見るべきかという難しい経営判断を迫られるだろう。
日本でもこうした重大なリスクを前に、対策を進めている。例えば、レアアースを開発するオーストラリア企業への出資を拡大し、カザフスタンやベトナムとは鉱山開発と技術協力で合意している。また「国産レアアース」の確立に向けた動きもあり、南鳥島周辺のレアアース泥で、2020年代後半から供給できるように体制構築を目指している。加えて、製錬・分離プロセスでも中国依存から脱却するために、国内のプラント建設に補助金を投入している。
ビジネスのみならず安全保障問題として、国家に影響を及ぼす半導体やレアアース。政府や企業にとっては、優先事項の一つとして対応が必要だ。2026年はそのプレッシャーが強まるだろう。
(山田敏弘)
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。

携帯060解禁 26年から変わるもの(写真:TBS NEWS DIG)90

携帯060解禁 26年から変わるもの(写真:TBS NEWS DIG)90