なぜ今、小型スマホなのか? 5.3型「Mode1 Pocket」誕生の舞台裏 あえて本体を厚く、5G非対応にしたワケ

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2025年12月29日 10:10  ITmedia Mobile

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5.3型のTFT液晶を搭載したコンパクトなボディーが特徴。あえて厚みを持たせることで、手の大小に関わらず落としにくいホールド感を実現している。4G特化による電池持ちのよさや、ストラップホール、イヤフォンジャックの搭載など、実用性に徹した設計だ

 モーターバイク事業のMoto-UPや、全国に展開する携帯電話販売店テルルを運営するP-UP World(ピーアップワールド)が、11月11日に自社オリジナルブランドの新型スマートフォン「Mode1 Pocket」を発売した。価格は6GB/128GBモデルが3万5200円、8GB/256GBモデルが3万8280円となっている。


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 この端末は、全国のテルル店舗や家電量販店で販売されており、近年のスマートフォン市場における主流とは一線を画すコンセプトで注目を集めている。本稿では、商品開発を担当した梅澤俊之氏へのインタビューを通じて、この異彩を放つ端末が誕生した背景と、そこに込められた“執念に近いこだわり”を解明していく。


●開発コンセプトと市場背景 大型化するスマートフォンへの疑問


 現在のスマートフォン市場を見渡すと、画面の大型化と高機能化が止まる気配を見せない。しかし、その進化の代償として端末は大きく重くなり、片手での操作は困難を極めるようになった。梅澤氏は、こうした状況を「年々重たくなり、もはや道具としての軽快さが失われている」と危惧する。


 ユーザーが進化を実感できるのはGoogleレンズや翻訳機能といった一部のソフトウェア面に限定されており、ハードウェアとしての進化は停滞しているのではないかという強い危機感が、Mode1 Pocketの開発の原動力となった。


 グローバル市場における標準サイズは今や6型から6.5型であり、供給される部材もこのサイズに最適化されている。そのため、5型クラスの液晶や筐体部材を調達しようとすると、かえってコストが跳ね上がるという逆転現象が起きる。それでも同社があえてこのサイズに挑んだのは、大手メーカーが効率重視で切り捨ててきた「小さくて持ちやすい端末」を求める切実な声に応えるためだ。Mode1 Pocketは、単なる小型版ではなく、大型化に疲弊したユーザーに対する1つの回答として設計された。


●「小型化」と「操作性」へのこだわり 10.8mmの厚みが持つ意味


 Mode1 Pocketの筐体設計において、最も議論を呼ぶのは約10.8mmという厚みだろう。スマホの薄型化がトレンドとなりつつある中で、この数値は時代に逆行しているように見える。しかし、ここにはユーザー検証に基づく合理的な理由がある。開発段階で4歳から60代までの人に試作機を持たせたところ、薄すぎる筐体は指の引っ掛かりがなく、かえって落としやすくなることが分かった。


 試行錯誤の末に行き着いたのが、1cmを超えるこの厚みだ。手の小さな子供から大きな手を持つ成人男性まで、誰が持っても手のひらの中で「引っ掛かり」を感じ、安定して保持できる形状を目指した。梅澤氏は、多くのユーザーがiPhone等にケースを装着して使用している点に着目した。ケースを装着したiPhoneの幅と厚みを計測し、Mode1 Pocketの素の状態のサイズをそれに近づけることで、ケースなしでもラフに、かつ確実に操作できるグリップ感を実現した。これは「じわじわと手に馴染む」感覚を重視した結果であり、カタログスペック上の薄さよりも安心感を優先した。


 また、過去モデルのユーザーからのフィードバックに基づき、ディスプレイのアスペクト比を変更。「iPhone 13 mini」に近い比率になったという。梅澤氏によると、こうしたサイズが支持され、iPhone 13 miniや12 mini、iPhone SEから乗り換えているユーザーもいるという。


●スペックと機能のバランス あえて4Gと旧プロセッサを選んだ理由


 内部構造においても、数値上の最高性能を追求するのではなく、実用的な安定性を最優先している。プロセッサにはMediaTekの「Helio G99」を採用した。より新しいG100などの選択肢もあったが、タブレット等で豊富な採用実績があり、エンジニアがその特性や制御方法を完全に把握しているG99を選ぶことで、動作の安定性を担保した。日常的なSNS利用やブラウジング、動画視聴において、処理能力不足によるストレスを感じさせない最適解としての判断だ。


 通信方式を4Gに特化した点も大きな決断だった。5Gの試作機も制作したが、最大の課題となったのがバッテリーの持続時間だ。5.3型という限られたサイズでは、搭載できるバッテリー容量は2900mAhが限界に近い。この容量で消費電力の大きい5G通信を常用すれば、バッテリーの消費は早くなる。5Gエリアでも実効速度が上がらない「パケ詰まり」が起きている状況を鑑み、通信の安定性とバッテリー持ちをてんびんにかけた結果、あえて4Gに特化することでモバイル端末としての信頼性を高めた。


●着信ランプも搭載、マクロカメラは「ルーペ」としても使える


 Mode1 Pocketには、大手メーカーのスマートフォンからは姿を消しつつある機能が、ユーザーの熱烈な要望を受けて数多く搭載されている。その筆頭が、ストラップホール、イヤフォンジャック、そして充電を知らせるパイロットランプだ。梅澤氏はこれらを半分冗談めかして「ロストテクノロジー」と呼ぶが、その実用性は極めて高い。特に充電ランプは、画面を点灯させずとも充電完了を確認できる機能として、シニア層を中心に根強い支持がある。


 アウトカメラは6400万画素の標準レンズと、ルーペのように細部を拡大して近接撮影可能なマクロレンズの2眼構成だ。マクロレンズは「老眼鏡を出すまでもないが、細かい文字を確認したい」というルーペ代わりの需要を想定したもので、低画素のマクロレンズで撮影するよりも、高画素で捉えた画像を拡大する方が鮮明に文字を読み取れるという検証結果に基づいている。


●3万円台という価格と市場での受容 ニッチ市場の熱量


 3万5200円からという価格設定は、昨今のミドルレンジスマートフォンが5万円を超える中で、競争力が高いだろう。しかし、単に安さだけを売りにしているわけではない。Mode1 Pocketの購入層は、スマートフォンを1台で全て完結させる層だけでなく、2台目のサブ端末として運用する層も多いという。メイン端末には大型で高性能なモデルを使いつつ、移動中や仕事中のクイックな連絡用、あるいは音楽プレイヤーやテザリング用として、このコンパクトなサイズが重宝されている。


 全国のテルル店舗では、実際に端末を手に取ることができるため、スペック表だけでは伝わらない「持ち心地」を確認してから購入するユーザーがいるようだ。大手キャリアのラインアップが画一化する中で、こうした「とがった」製品が3万円台で手に入ることは、ユーザーにとって選択の自由を取り戻す体験となっている。販売状況は堅調であり、ニッチな需要を確実に捉えている手応えがあるという。


●Mode1シリーズの周期と今後の展望、ブランド10周年の原点回帰


 Mode1ブランドは2025年で立ち上げから10周年を迎えた。今作のカラーバリエーションであるKUROとSHIRO、そしてアクセントとして配されたシャンパンゴールドの色味は、初代モデルのデザインを意識したものだ。これは単なる懐古趣味ではなく、ブランドとしてのアイデンティティーを再確認する原点回帰の象徴だ。背面にはブランド伝統のカーボン柄を施し、角度によって表情を変える質感にもこだわり抜いている。


 今後の製品投入時期については、スマートフォンの進化速度が緩やかになる中で、やみくもに新機種を連発するのではなく、技術の成熟とユーザーの真のニーズが合致したタイミングを見極めていく構えだ。AndroidのGMS認証、いわゆるGoogleの認証基準は年々厳格化しており、小画面端末や物理キー搭載端末の維持は容易ではない。しかし、Mode1はこれからも「誰にとっても100点のスマホ」ではなく、「特定の誰かにとっての120点のスマホ」を目指し続ける。


●取材を終えて:Mode1 Pocketは単なる小型端末ではなく、スマホの使い勝手を再定義するもの


 Mode1 Pocketという端末は、スペックの数値だけで語るべき存在ではない。大型化し、高価になりすぎた現代のスマートフォンに対する、静かだが力強い異議申し立てである。扱いやすいプロセッサ、4G特化によるスタミナの確保、そして1cmの厚みがもたらす確かなグリップ感。これらは全て、使い勝手を優先した結果だ。


 Mode1 Pocketは単なる小型端末ではなく、スマートフォンの使い勝手を再定義しようとしていることが分かる。今後、ソフトウェアのアップデートを通じて、120Hzの高リフレッシュレート液晶を生かしたさらなる操作感の向上や、カメラのチューニングなど、継続的な熟成が期待される。ニッチであることを誇りとし、ユーザーの手になじむ道具を作り続けるMode1の姿勢は、画一化された市場に一石を投じ続けるだろう。



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  • 「大型化と高性能化」…ガンダムの『モビルスーツ』に通ずると思ってしまった!
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