「割高」イメージを乗り越えて、モスバーガーが「大復活」できた理由

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2026年01月04日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 モスバーガーを運営するモスフードサービスの業績が好調だ。コロナ禍以前の売上高は600億円台を推移していたが、今期は970億円の売り上げを見込む。


【画像】話題になった高級路線の「モスの匠味」


 「100円マック」を提供するなどマクドナルドが極端な安売りをしていた時代、モスバーガーは割高感が目立ち、客足が離れてしまった。しかし、近年はマクドナルドも値上げしたことで割高感が薄れており、質を重視する姿勢も消費者に支持されている。デフレ時代に合わなかった高価格路線が、近年のインフレ下で評価されている。


●客数減も値上げで補えた


 モスフードサービスの売上高は、2020年3月期の690億円から2025年3月期には962億円と1.5倍近くに膨らんだ。この間に国内モスバーガー事業の売上高は551億円から766億円に拡大している。既存店が好調で、直営店の売り上げとFC加盟店への卸売が増加した。


 この間に店舗数はあまり増えていない。コロナ禍が直撃した2021年3月期は、既存店客数が前年比で5%減少したものの、客単価の増加で補い、既存店売上高が8.8%増えた。以降も、値上げによる客単価の増加が売り上げ増をもたらしている。


 今期は4〜11月の累計で、既存店客単価が前年比で3.4%増え、客数・売上高はそれぞれ7.3%、11.0%増となった。モスバーガーは近年、段階的に値上げをしたが客離れが起きず、業績は好調に推移している。


●2等地戦略が功を奏した


 決算資料によると、コロナ禍では都市部の店舗が影響を受けたが、郊外店は好調だったという。2019年度の時点でテークアウト・デリバリーの比率は59.8%を占め、イートインを上回っていた。


 翌年度からはテークアウト・デリバリーの比率が7割を超え、イートイン客の減少を補った。ファストフード業界は以前からテークアウト・デリバリーが主体であり、モスバーガーも他社と同様、中食需要との相性の良さが売り上げ増をもたらしたようだ。


 それだけでなく、質を重視する姿勢が消費者に支持されるようになったと筆者は考えている。モスバーガーはマクドナルドより1年遅れで1号店を出店し、マクドナルドが大衆向けの価格設定で1等地を抑えるなか「2等地戦略」で差別化を図った。賃料を抑えて食材にお金をかけ、より質の高いバーガーを提供するという戦略だ。


 価格が高いため、モスバーガーは割高と認識されるようになったが、近年ではその割高感が薄れつつある。定番の「モスバーガー」は単品470円で、セットは920円。バーガー類はセットで概ね1000円以下に抑えられ、外食の1000円超えが当たり前となった昨今、他業態と比較して特別に高いわけではない。マクドナルドは値上げでセットメニューを700〜800円台で提供するようになり、モスとの価格差は小さくなっている。


●デフレ下では苦戦も


 モスバーガーはデフレ時代に苦戦した。


 店舗数は2000年度にピークを迎えたが、その後は不採算店の閉鎖が続き、1500店台から一時は1200店台まで減少した。


 マクドナルドは2000年から5年間、ハンバーガーを100円未満で提供し、一時は62円で提供したこともある。2005年以降も「100円マック」でハンバーガー、コーヒー、スイーツなどを100円で販売し、割安感を訴求した。


 対するモスバーガーは、定番の「モスバーガー」を300円台にキープし、安売り競争から距離を置いた。高級バーガーシリーズ「モスの匠味」として、単品で1000円の商品を出したこともある。この頃にモスの割高感が目立つようになり、客が離れた。モス同様に、近年好調なバーガーキングも当時は苦戦した。安売り競争で「ハンバーガー=安いもの」という認識が広がるなか、割高感が出て一度は日本から撤退している。


 むろん、安売り競争をしかけたマクドナルドもその後、苦戦した。安売りで利益が圧迫し、学生のたまり場になるなど、質の低下が起きた。その後はサラ・カサノバ氏の主導の下で値上げを実施し、不採算店の閉鎖と店内改装を進めて雰囲気の良い店舗づくりを強化した。


●ブランド戦略と商品開発の一体化が奏功した


 モスバーガーの経緯をまとめると、デフレ時代でも2等地戦略で質の維持に努め、それが近年のインフレで評価されるようになり、業績が好調に推移した。「お金を出すなら、より良いものを食べたい」という消費者の心理がモス好調の根底にあると筆者は考えている。デフレ時代にマクドナルドがしかけた安売り競争に参加していれば、差別化できず、違う結果をもたらしていたかもしれない。


 話題性のある新商品を出せるようになったことも近年の特徴だ。モスフードサービスは2019年にブランド戦略や商品開発などの部門をマーケティング本部の傘下に異動させ、商品開発とマーケティングを一体化した。


 以前は開発主導で、マーケティングの結果が反映されにくい開発体制だったが、一体化によりこれを改善。発売から1年で1700万食を記録した「新とびきりシリーズ」のように、近年は新商品がヒットしており、組織再編の結果が現れている。同シリーズではバーガーを単品690円から提供。パティに国産牛を100%使用し、プチぜいたく需要を取り込んだ。


 定番セットの価格帯は1000円程度で、マクドナルドよりも高く、バーガーキングと同程度である。価格帯は同じだが、バーガーキングが肉質を訴求する一方、モスバーガーは野菜系に強く差別化ができている。女性客の人気が高いのも特徴だ。店舗数も再び1300店舗を突破しており、モスバーガーはしばらく好調が続くかもしれない。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • 高めの価格設定に見合った味だから。店内に入ると、マッ◯とちがって美味しい匂いがいているよ
    • イイネ!50
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