家賃は「一軒家で2万5千円」離島に移住した30代女性が語る“自分らしい生き方”「東京は失敗できない空気があったが…」

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2026年01月04日 16:30  日刊SPA!

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えりやんさん
 順調だった東京での仕事と暮らしから一転、コロナ禍を機に“国境の島”(九州と韓国の間の対馬海峡に浮かぶ長崎県の島)と呼ばれる対馬へ移住した「庄司絵里加(愛称:えりやん)」さん(以下、えりやん)。現在はダンス教室を運営するほか、対馬のテレビ番組やFMパーソナリティ、バスガイド、狩猟など、さまざまなシーンでマルチな活躍を見せている。
 インタビュー前編に引き続き、後編では、現在の住まいや今後の展望、移住してから始めたというイノシシとシカの狩猟、対馬が取り組んでいる海業などについて聞いた。

◆気になる家賃は「一軒家で2万5千円」

――現在のお住まいは一軒家ですか?

えりやん:築60年の一軒家を借りています。移住当初に住んでいた部屋が玄関を開けると全景が見えるような感じのワンルームだったので、「リビングが別にある部屋がいいな」と周囲に言っていたら、知り合いが紹介してくれたんです。対馬には不動産がないので、大家さんと直接交渉して契約しました。

 それと、お手洗いがすごく古かったので、これではお客さんを呼べないと思って工事をしてもらい、もともとの家賃が3万3千円のところ、交渉して家賃を2万5千円にしてもらいました。それと、当時勤務していた対馬の島おこし協働隊からは、住環境を整えるための補助金が出ましたね。

――近所にスーパーやコンビニはありますか?

えりやん:ありますけど少ないです。タケスエというスーパーが車で約10分ほどの場所にあってよく買い物に行きますが、15分くらい滞在するだけで20人近くの人と挨拶したりしゃべったりする時もあります(笑)。それだけ地域の皆さんとの距離感が近いということだと思います。コンビニは対馬全体で片手で数えられるくらいです。

◆ずっと居続けるかはわからないが、今のところは…

――対馬に永住する予定ですか?

えりやん:永住の可能性があるかと聞かれれば無くはないのですが、私はもともと「やりたいことで動く人間」なので、今後海外に住む可能性もあるかもしれませんし、もともと国際協力への興味があるので、アフリカへ行きたいと思うかもしれません。ただ、対馬はすごく好きですし、今は出ていく気持ちはないです。

 以前勤務していた島おこし協働隊の任期は3年でしたが、最終年を迎える時にしばらく対馬に住むか、それとも島を離れるかを考えた時期がありました。悩みましたが、やりたいことがいろいろできる今の暮らしを続けたいなと思ったんです。

◆イノシシとシカを狩猟で捕らえることも

――ダンス教室を運営されたり、テレビ番組のリポーターをされたりといろいろな活動をされていますが、狩猟もされているんですね。

えりやん:イノシシとシカの狩猟なのですが、罠をかけていて毎日見回りに行っています(※)。本来、罠をかけていい期間は年に3〜4ヶ月(概ね11月〜2月)ですが、対馬はイノシシやシカがとても多く、有害鳥獣捕獲の対象です。そのため、対馬市で登録している捕獲事業者はほぼ1年中罠をかけていいことになっています(3月後半の約2週間は禁猟期間)。ただ、罠を多くかけると見回りが大変になってしまうので、私がかけている罠は3機だけなんです。なので、なかなかかかりません。

※夏頃から出張の機会が増えて罠の見回りが困難になったため、現在は罠をかけていない状態。

――かかったイノシシやシカは、その後どうするんですか?

えりやん:止め刺し(命を止める)した後、捕獲したことを証明し補助金をもらうために、動物の体にスプレーで日付を書いて写真を撮ります。お肉を活かすことも一考なのですが、埋めている方が多いと思います。私が一番お世話になっている猟師さんは、イノシシは食べるけどシカはあまり食べない方で、イノシシは背ロースだけを取って埋め、シカはそのまま埋めたりしています。

「獣害を獣財へ」というコンセプトを掲げている事業者など、ジビエを活用してくださる事業者が島内に4社ほどあるのですが、対馬も大きいのでなかなか回り切れないんです。私が住んでいる上対馬でもジビエの活用を進めていきたいという意見はありますし、島の課題の一つだと思います。

◆狩猟を始めた「二つの理由」

――そもそも狩猟を始めたきっかけは?

えりやん:理由は二つあります。島おこし協働隊のメンバーで仲良しの子が狩猟免許を取得したのですが、福岡の美容室に行った時に「仕事は何されているのですか?」と聞かれて「狩猟です」と答えているらしく、その話を聞いてめっちゃかっこいいなと思ったのがまず一つ(笑)。

 あと、イノシシやシカに農作物が食べられてしまったり、木材になるものをシカが角で傷つけてしまう問題、植物が枯れると根が細くなり、山から土がどんどん流れていってしまうことで海の生態系を変えてしまう問題などがあり。なんとか解決していきたいと思ったのが二つ目の理由です。

 イノシシやシカの適正頭数が出ていたりするのですが、それが誰にとって正しい数字なのか正直わからないと思うんです。ただ、数を減らせれば農作物や自然に与える悪影響を少しでも食い止められるのかなと思うと、狩猟をやってみようかなと。あと、ハンターさんの平均年齢は高いだろうなと思っていましたが、若い世代もけっこう興味を持ったりもしていますし、決してハードルは高くないんだということも含め、狩猟の仕事を伝えることもしていけたらと思っています。

――罠の免許はすぐに取得できるものなのですか?

えりやん:勉強は当然必要ですが、1ヶ月くらい集中して取り組めばそれほど取得は難しくないと思います。試験にエントリーした際に『狩猟読本』という本を頂いたのですが、その中にある「罠」の項目を熟読しました。

 狩猟以外にも消防団では幹部を務めさせていただいたり、市民劇団ではお芝居のお稽古に励んでいますし、地域での活動は忙しいのですが、「なぜ、こんなにも面白いんだろう」って最近思ったんです。移住してきた人間ならではの感覚なのかもしれませんが、挑戦することが多いと楽しいんです。

◆東京より「島にいるほうがラク」

――東京での暮らしも経験されていますが、対馬での暮らしのほうが気疲れは少ないですか?

えりやん:人にもよると思いますが、私は島にいるほうがラクですね。東京にいる時って、なんか正解がきっとどこかにあって、そこに当てはまらないといけない、頑張らないといけない、失敗しちゃいけないみたいな。今思い返すと常に張り詰めていたような気がします。もちろん、自分が頑張りたい事があるから東京で挑戦していたので当たり前ではあるのですが、島にいると気持ちがすごくゆったりしていますし、みんなの心にゆとりがあって温かさを感じますね。

――今後再び東京に行って何かに挑戦したり、故郷の福岡に戻るといった選択肢はありますか?

えりやん:お仕事の機会を頂けたりすれば、出張などで行くこともあると思いますが、今は対馬を拠点で頑張りたい気持ちが強いです。何年か先、海外に目が向く可能性もあるかもしれませんが、目の前のことも頑張りたいなと。ダンス教室は教える人が私だけなのですが、やはり教え子たちにはいろいろなダンサーと触れ合ってほしいので、釜山からダンサーを月1くらいで呼べたりしないかなと考えています。

 あと、上対馬町文化協会という団体にも所属しているのですが、そこに伝統和太鼓のグループがあるんです。太鼓とダンスでコラボした地域振興もあるといいかなとも考えていますし、対馬を盛り上げていきたいんです。

◆現状では対馬に選択肢が少ないから…

――対馬のアイコンのような存在として、今後も活躍の場を広げていきそうですね。

えりやん:自分が30歳になり、最近では若い世代に何かを残していきたいなという気持ちも芽生えています。周囲にいる若い子から、私が携わっている喋る仕事(ケーブルTVの番組リポーター、イベント司会など)に興味があると言ってもらえたり、ダンスの教え子が「お芝居やダンスでもっと頑張りたいから」と福岡のタレント養成事務所に行ってくれていたり。そういうことって、すごく夢があっていいなと。なので、若い子たちが自分を磨ける環境も作っていきたいんです。最近では、後輩の子にイベントの司会を任せる機会も増えてきました。

 島では若い人がどんどん少なくなっていますし、自分を磨く環境だったり、選択肢が少ないんです。仕事も限られているのでUターンしづらいとも思いますしね。選ばなければ職場はある程度ありますが、若い世代は自分のやりたいことだったり、得られる報酬が大事になってきますよね。そこをどうカバーしていけるのかが大きな課題だと感じています。対馬はさまざまなことに挑戦できる環境だと思うので、挑戦意欲のある若い世代の方にも来てもらって、一緒に楽しみながら暮らしてもらえたら嬉しいなと思います! 私もしてもらったように、そんな若者たちを応援していきたいです。

 それと、対馬の比田勝港が「海業」(海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用して、地域の賑わいや所得、雇用を創出する事業)のモデル港の一つに選ばれていて、水産物の販売や加工、漁港での食堂、漁業体験、遊漁、漁村を活かした宿泊施設の計画などが進められているんです。私もその検討会に参加しているのですが、そういった側面からも島を盛り上げていければと考えています。

<取材・文/浜田哲男>

【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton

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