ドラッグストアの大規模再編で、クリエイトSDが描く“勝ち筋”は?

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2026年01月05日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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ウエルシアとツルハが統合

 ウエルシアとツルハの経営統合により、売上高2兆円企業が誕生した。これにより、ドラッグストア業界では「ついに大手同士の最終決戦の時期に突入か」「次はどことどこが統合するのか」と話題となっている。


【画像】2023年度と2024年度の売り上げランキング(筆者作成)


 20年前までは、全国各地に複数のご当地ドラッグストアが存在していたが、今では上位8社の売り上げの合計が市場シェアの約7割に達しており、寡占化が著しい業界となっている。


 そんなご当地ドラッグストアの1つが、神奈川を地盤とする「クリエイトSD」である。本稿では、スキマ商圏を捉えて成長してきたクリエイトSDの戦略的な立ち位置と、今後の同盟を見据えた競争力の可能性を探ってみたい。


●再編統合を繰り返したドラッグストア業界


 以下の図表1は、2003年度の売り上げランキングと2024年度を並べ、かつての上位企業がどの企業に統合されたのかを示したものである。現在の大手が、再編統合の歴史の産物であることが分かるだろう。


 ウエルシアとツルハの両社も、数多くのM&Aを経て、売上高1兆円クラスとなった。20年前、ツルハは5位で売上高は1000億円クラス、ウエルシアの前身であるグリーンクロス・コアは、売上高360億円の地方チェーンであった。それが各地のドラッグチェーンを統合することで拡大していった様子は、図表2と図表3を見ていただければイメージできるだろう。


 流通大手であるイオングループのドラッグストアとして統合した両社に加え、現在の業界トップクラスのメンバーといえば、マツキヨとココカラファインが統合した「マツキヨココカラ&カンパニー」、中部の「スギホールディングス」、首都圏発でありながら西日本にも基盤を持つ「サンドラッグ」だ。これらが、20年前の上位企業の中から勝ち残っているグループである。


 そして、かつてのベスト10の圏外から上がってきたのが、九州の地方チェーンからM&Aなしで関東にも店舗網を広げ、1兆円企業となった「コスモス薬品」と、5000億円クラスに到達した北陸の「クスリのアオキ」の2社だ。この2社はフード&ドラッグと呼ばれる食品強化型ドラッグストアに分類される。


 フード&ドラッグとは、消費者の来店頻度を高めるために、食品を幅広く取りそろえ、低価格で販売する手法を採用しているドラッグストアだ。安価な食品や日用雑貨、化粧品や医薬品などが一カ所で買いそろえられる店であることが、地方のロードサイドで支持され、大きく成長した。


 過去のランキングの通り、かつて中堅以下や圏外だった企業で、統合されることなく成長している地方チェーンのほとんどがフード&ドラッグタイプである。昔からの大手チェーンをフード&ドラッグ各社が地方から猛追しているという構図だ。


●一般的なドラッグストアとは違う、クリエイトSD


 上位7社に次ぐのが、神奈川を地盤とするクリエイトSDで、同社もフード&ドラッグに分類される。ただ、大都市と郊外にまたがるチェーンであるため、一般的なドラッグストアとフード&ドラッグの中間的な存在である。


 関東甲信越に、調剤薬局を含めて831店舗(前期末)を展開しており、うち468店舗は神奈川県内で、同県内では売り上げも店舗数もトップシェアだという。また、東京126店舗、静岡98店舗、残りが関東や愛知にあるが、神奈川ドミナント型のドラッグストアといえるだろう。都市部である神奈川にはフード&ドラッグが少なかったため、県民には「食品を安く買うならクリエイト」という評価が定着しているようだ。


 同社は持続的な成長を維持しており、収益も順調に拡大し、業界大手の一角をキープしている。この20年ほどで、神奈川でもスーパーの競争が激化し、大型スーパーに負けた中小型スーパーが閉店することもあった。ただ、そこにクリエイトが出店し、地域の食品供給を維持しているケースも多かった。


 店の広さにもよるが、食品スーパーの損益分岐点売上は年商5〜10億円ほどは必要だ。図表4で神奈川県に店がある食品スーパーの平均店舗年商を計算したが、オーケーやロピア、ライフやサミットなどは30〜40億円。少し小ぶりなマルエツやいなげやなどでも12〜15億円ほどの水準だ。


 しかし、クリエイトの場合、店舗当たりの損益分岐点売上が4.7億円、うち食品2億円、非食品2.7億円であり、小さめの食品スーパーの商圏に数店舗出店できる計算だ。クリエイトSDが、神奈川で密集ドミナントを作れたのは、こうしたスキマ的な商圏に入り込む力があるからであろう。


●店舗の柔軟性も特徴


 店舗フォーマットの柔軟性も、クリエイトSDの特徴だ。一般的なドラッグストアは医薬品・化粧品・日用雑貨の品ぞろえが軸となる。フード&ドラッグは、そこに食品を加えることで来店頻度の向上を狙う業態だが、クリエイトSDはその両フォーマットを使い分けられる点に強みがある。広い売り場を確保できればフード&ドラッグ型で出店しつつ、食品スーパーが新規出店時する際には食品売場を持たずテナントとして入る選択肢も採用。これにより、出店機会を逃さず、立地に応じて最適解を変えているのである。


 そして、食品スーパーの集客力を利用して、ドラッグ商材の売り上げを伸ばすというしたたかな出店戦略を採用できている。


 こうしたスーパーの中に入るタイプの発展形として、クリエイトSDはスーパーをM&Aし、自社内へ取り込んでいる。また、生鮮専門のスーパーなどとのコラボ店舗なども拡大している。


 2020年には、売上高44億円、川崎市内で5店舗を展開する「ゆりストア」を買収し、スーパーとクリエイトのフード&ドラッグを融合させた。また、「おっ母さん食品館」という生鮮特化スーパーなどを持つ千葉県柏市の三和とコラボした8店舗を展開。クリエイトの食品売場が、おっ母さん食品館となったような形で、生鮮食品の安さと鮮度をウリに、高い集客力を実現している。


 当初は三和の展開エリアである柏方面が多かったが、最近では横浜市港北区の綱島にも出店して話題になった。各地の生鮮に強いスーパーなどとのコラボが定着すれば、今後のエリア拡大においても、競争力を発揮するはずだ。


●統合はほぼ終わった、ドラッグストア業界


 ドラッグストア業界では、大手が中小を吸収する再編の時代はほぼ終わり、大手同士が連携しながら競争する局面に移りつつある。これからは、企業間の組み方そのものがカギとなり、規模の拡大よりも、どの企業と手を組むかが重要になるだろう。


 例えば、業界7位のクスリのアオキの大株主は、香港のオアシス・マネジメントが11%、イオンが9%である。そのため、2兆円規模となったイオン系ドラッグストアとの関係性に注目が集まっている。仮に、クスリのアオキがイオンとの同盟に踏み込めば、2.5兆円規模となる。イオンは規模と有力フード&ドラッグを一気に実現することになり、業界のパワーバランスは大きく変わるだろう。そうなれば、マツキヨココカラやスギHD、サンドラッグにも動きが出るかもしれない。各社の同盟関係が動くことで、クリエイトSDの運命も大きく変わるのである。


●クリエイトSDの目標は、覇権の奪取ではなく……


 クリエイトSDは、前期決算発表時に新中期経営計画を公表。2030年までに売上高6800億円、経常利益率5%、ROE12%以上という目標を設定した。その実現のために出店エリアを拡大し、北関東や甲信越への進出を強化する。


 これ自体の達成可能性は高いが、それ以上に気になるのは、この目標が覇権争奪戦からは外れたことを、自他ともに認めている点だ。2030年となれば、大手は兆単位の激突となっている可能性が高い。そのため、クリエイトが生き残れるかは、大手との同盟関係が前提になるだろう。そして、有利な同盟関係を確保するためには、この目標以上に規模や企業価値を向上させておくことが必要となる。


 気になる点があるとすれば、神奈川を中心に店舗展開するクリエイトは、まだコスモス薬品やクスリのアオキ、ゲンキーなどの全国区のフード&ドラッグと直接対決をしていないことだ。


 九州や北陸という、有数の車社会の中で鍛え抜かれたフード&ドラッグの生産性は非常に高く、クリエイトSDをはるかに上回る(図表5)。店舗あたりの損益分岐点売上(ドラッグ商材)は、クリエイトSDが2.67億円。それに対し、コスモス薬品が1.98億円、クスリのアオキが1.89億円、ゲンキーに至っては0.95億円と、かなり強力だ。エリアが違うため単純比較はできないが、フード&ドラッグ各社はクリエイトSDのドミナントにも出店し始めており、これから各地で激突することになる。


 クリエイトは、今後急速に増えるであろう西日本のフード&ドラッグの攻勢から、首都圏南部ドミナントを守れるのか。クリエイトポイントを貯めている神奈川県民の私としては、クリエイトSDの健闘を密かに祈っている。


※下記の関連記事にある「【完全版】ドラッグストアの大規模再編で、クリエイトSDが描く“勝ち筋”は?」では、配信していない図表や写真とともに記事を閲覧できます。


筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)


みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。


主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。



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